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第4章 幻想世界

彼らが連れてこられたのはこの世界の中心に位置している「FU統合所」だった。ここは、全ての権限を有する3長官の会議の場所でもあり、ファーザートムがいると言われている場所でもあった。

「ここだ、降りろ」

トムとジアスはその建物の前で降ろされた。長さ50mぐらいの壁が、彼らの行く手を阻んでいた。高さは、見上げても上が見えなかった。車の真正面に、ようやく人一人が通れるような細い隙間が開いており、そこを通り彼らは中に入った。


入る際、何かが体を通りぬける感覚があった。しかし、それはすぐに消えた。


ずっと、地面がうっすらと見える程度の光しかなく、天井は真っ暗でどこまで高いか分からなかった。ジアスはトムの腕をずっと掴んでおり、同じ速度で歩こうと一生懸命足を動かしていた。


「ここで、ちょっと待て」

そう言って、トムとジアスだけを残してある扉の前で待たせた。ジアスは震えていた。

「どうした?」

トムは心配になり、立て膝をついてジアスと目線を合わせようとした。

「ここ、怖い…おうちに帰りたい…」

泣きそうだったが、トムは、優しく抱きしめた。

「大丈夫だよ。お父さんがいるからね」

ジアスは、そんなトムを抱き返した。

「まだ、10歳だからね。怖いのも分かるよ。でもね、大人になるって言うのは、そんな怖い事を経験して、知らない事に立ち向かって、ようやくなれるものなんだ。だから、大丈夫。心配する事はないよ」

その時、扉が開かれ、中に招き入れられた。


「ようこそ。ファーザートム連合の中枢部へ」

迎えたのは、現在の各権の長官だった。

「実は君達をここに迎えるのは、私達ではなくて、ファーザートムのご意向なんだ」

そう言うと3人の頭上に、何らかのスクリーンが現れ、そこに人影が映った。頭の後ろに強力なライトを置いている影響で顔はまったく見えず、直視する事もままならなかった。

「あなたが、ファーザートムなんですか?」

「そうだ。全ての世界を統治している、ファーザートムと言う存在だ」

「全ての世界?」

「ああ、文字通り全ての世界だ。トム・クロンパスと、その娘、ジアス・クロンパスよ。そなた達は、我によって選ばれたのだ。この世界の代表たる存在に…」

「ちょっと待ってください。どう言うことですか?ここと、同じような世界が、いくつもあると言う事ですか?」

「いかにもその通りだ。この空間は、我らの言い方では第2空間と呼ばれている。そもそもの発端は人種差別による敵視政策だった。後進国が同盟を作り、先進国の出身者を排除し始めた。それこそがこの空間が成立した原因。彼らは社会主義を取り、万人を平等に扱うことを明言した。しかし、それに外れたのが先進諸国。彼らは完全自由主義と資本主義と言う、二つの体制に分裂し、互いに争い始めた。さらに、そこに8つの人種のそれぞれの区画があちこちに成立し、人々は一時的平和を味わった。しかしそれぞれの区画における資源の獲得競争から、再び世界は戦乱の時代へ戻った。その後社会主義対完全自由主義対資本主義の三つ巴の戦いへ集約された。これが、この世界を創るきっかけになった戦乱「最終戦乱」と呼ばれる戦いだ。この戦いの結果、8つの人種はそれぞれ数を激減させた。そうして共同政府を設立し、彼らのそれぞれの神の元に暮らしていた…」

「ちょっといいですか?あなたが、神ではないのですか?」

トムは、ファーザートムに聞いた。

「我自身は神ではない。いわば、神の代理人として、ここに存在している…さて、社会主義、完全自由主義、資本主義、この3つの関係は、基本的に今も変わってはおらん。その結果、8つの人種、それぞれが独立した世界を創り、それを統合して統治する存在が必要になった。この世界は、共同政府において戦争を防ぐための究極的な人種隔離政策として、生み出された世界…何も生み出さぬ代わりに、何も捨て去られる事がない世界…何事も空想上でしかなく、現実的な行為は一切伴わない世界…」

「つまり、この世界は幻…」

「その通りだ。そのことが起きたのは、今より1万年前。我がこの世界を統治し始めたのも、1万年前…それ以前の世界、第1空間へそなたらは派遣される。この世界の代表者として、そして、試練を受けるものとして…」

「ちょっと待て!試練って何だ?」

「行けば分かる…往けば変わる…いけば知る…」

その時、トムとジアスの体が光に包まれて、一瞬で消えた。

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