第3章 政府からの連絡
そして1週間は何事もなく過ぎた。だが1週間後、早めに帰り家族で夕食を食べている時、速達が届いた。この世界を統治している「ファーザートム連合(FU)」からだった。FUは、トム自身を招聘すると言う内容の手紙だった。
「政府から直々にお呼びがかかった。理由は、向こうについてから教えるって」
「分かったわ」
「なんでか知らないが、娘も連れて来いってさ」
「私も?」
ちょうどハンバーグを食べていた少女は、フォークを取り落とした。
「あ、落ちちゃった」
娘が拾おうとした時、電話がかかった。
「はいはいクロンパスです。あ、はい、います。少々お待ち下さい」
妻が電話に出てトムに交代した。
「はい、トム・クロンパスです。ああ、はい、先ほど手紙が届きました。え?…………分かりました。では、明朝、うかがいます…こちらに来る。はいはい、では、明日、午前8時に、玄関で待っています」
そして、電話を切った。
「FUからだった。ファーザートムが呼んだのは、娘と自分自身で、他の人はいらないのと、妻は、政府の方で手厚く保護すると言っていた」
「さすがに、ファーザートムからの詔ね」
この世界を支配しているファーザートムは、全ての権利を一人で保有しており、いわば独裁者と同等であった。しかし、一般的な独裁者と異なり、行政権は行政長官、司法権は司法長官、立法権は立法長官。それぞれに権限を委託すると言う形で、引き渡していた。しかし、それでも、重要な法律や裁判の結果、それに行政関連のことの最終決定権は、依然としてファーザートムが有していた。
「でも、なんで自分が呼ばれたんだろう。何ももってないのに」
彼は今までの人生を思い返してみた。しかしながら、ファーザートム、FU、その他の政府機関からの呼び出しされる理由が分からなかった。
翌日の午前7時半。彼らは玄関で待っていた。それから、25分後、一台の特別車がトムの家の前に止まった。自動的にドアが開き、そのままトムと彼の娘であるジアス・クロンパスは車に乗り込んだ。妻は玄関先で彼の姿が見えなくなるまで見送った。