第二十一話:王の号令
黒影が討たれた報せは、王都を駆け巡った。
玉座の間。
静まり返った広間に、王の怒声が響く。
「馬鹿な……!」
王は玉座から立ち上がり、拳で肘掛けを叩きつけた。
バキィッ!!
黄金の玉座にひびが入る。
「ワシの黒影が……負けたというのか!」
家臣たちは誰一人として顔を上げられない。
「申し訳ございません……。」
「処刑騎士団も黒影も、すべて撃破されました。」
王は歯を食いしばる。
「あり得ぬ……あり得ぬ……!」
しばらく沈黙が流れた。
やがて王は深く息を吐き、ゆっくりと口を開く。
「……ならば。」
「力で押し潰せ。」
■王の勅命
王は玉座の前に立つ将軍たちを見渡した。
「全領地へ伝令を飛ばせ。」
「徴兵可能な者をすべて集めよ。」
将軍たちが驚く。
「陛下……まさか……。」
王は叫んだ。
「二十万だ!!」
「二十万の軍勢を編成せよ!」
玉座の間がどよめく。
二十万。
王国史上、誰も動かしたことのない兵力だった。
「食料も武器も足りません!」
「街の守備が手薄になります!」
重臣たちが次々と進言する。
しかし王は耳を貸さない。
「構わぬ!」
「王都以外は捨ててもよい!」
「奴らをここで止めねば、王国そのものが終わる!」
その一言で、誰も反論できなくなった。
■各地
王の勅命は一日で全国へ届いた。
北方では農民が畑を離れ、
西方では職人が槍を持たされ、
南方では若者が鎧を着せられる。
老人も。
少年も。
戦える者はすべて徴兵された。
泣き叫ぶ家族を残し、
二十万の軍勢が王都へ向かう。
■反乱軍本営
「……二十万。」
報告を受けたアレンは地図から目を離した。
側近が頷く。
「間違いありません。」
「王は全国から兵を集めています。」
レヴァルは鼻で笑う。
「黒影が負けた途端、それか。」
「結局、頼るのは数だけってわけだ。」
セラは険しい表情を浮かべる。
「二十万ともなれば話は別よ。」
「どれだけ弱くても、押し寄せられれば被害は計り知れない。」
アレンは静かに頷いた。
「王自身は黒影ほどの力はない。」
「だが。」
「二十万の軍を率いる王は、別の意味で脅威だ。」
■王都平原
数日後。
王都の前に広がる平原。
黒い旗が風にはためく。
その数。
二十万。
槍の穂先が陽光を反射し、
まるで黒い海のように大地を埋め尽くしていた。
王は高台から軍勢を見下ろす。
「これだけいれば十分だ。」
「黒影が敗れても、人の波は止められまい。」
将軍が頭を下げる。
「全軍、配置完了しました。」
王は剣を掲げた。
「進め!」
「反乱軍を踏み潰せ!」
二十万の兵士が一斉に雄叫びを上げる。
「おおおおおおおっ!!」
地面が震え、
鳥たちが一斉に飛び立った。
■迎え撃つ三人
その光景を丘の上から見つめるアレンたち。
レヴァルは肩を回しながら笑う。
「ずいぶん集めたじゃねぇか。」
セラは剣を握る。
「あれを正面から受ければ終わる。」
アレンは静かに地図を閉じた。
「だから正面からは戦わない。」
二人が振り向く。
「数で勝てないなら。」
「戦い方で勝つ。」
アレンの目には、すでに次の一手が映っていた。
二十万の大軍と、三人の数万の反乱軍。
王国最大の決戦が、いま始まろうとしていた。




