沈黙の愛
世界は音に包まれている
だからこそ僕は沈黙する
声なき声を抱いて
世界を見まわして
そうして耳を清ます
遍く時と地で声がする
それはみな同じ色彩
人を駆る黄色い声
木霊が木霊を呼んで
世界を包んでいく
僕は微かにつぶやく
痕跡を残さないように
木霊を呼ばないように
ただ神に届けようと
沈黙の息を吐く
世界は、僕は、貴方は
沈黙するなにかだ
それは、神だ
それは、もともと
名前などもたない
i ――わたし……
grief ――哀しみ……
そして貴方がいて生まれる
love――愛
沈黙の問いに
神もまた沈黙したまま
でも僕は世界に
見えない光を感じた
僕は口を閉じたまま
思いのままに詩を歌った
それは音楽になった