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将来なりたいものなんてない

家での自習の為、部屋を片付けている最中に見つけた懐かしい絵本。この国の子供たちは殆ど読んだ事があるほど有名なのだが、今見てみると何が面白かったのかよくわからなかった。ジルが家に来たので、さっそく勉強を始めるが、案の定、集中できず早々に諦める

朝、目を覚ますとジルはもうすでに起きていて歯磨きの準備をしていた。


「お、起きたか?水貰うぞ?」


「おはよ。俺も行くわ」


俺は、のそのそと起き上がるとジルについて手洗い場へと向かった。


「なぁ、今日どうする?」


「あー練習場所やろ?」


「あぁ」


魔法の基礎訓練をするには少し場所を考えなければならなかった。

適当に街中で練習して、もしもの事があったら退学は避けられない。家から少し行った所に練習場はあるが、そこは少し前からガラの悪い奴等が昼夜問わず集まり無法地帯と化していて学生は近づかなくなっている。

以前の俺はそんな事とは露しらず、ちょっと練習しようかと立ち寄ったところ、二十歳前後のバカ面の男二人とブサイク女の三人組に絡まれ、殴られた上に小遣いまで全て取られた。あの三人がいまだにそこを陣取ってるかは知らないが、その事がいまだに俺の脳裏に焼き付いていて、そこには行きたくはなかった。


「あそこは行かねぇ。今思い出してもムカつく」


「あぁ、噂は聞いてる。オレも行きたくねぇや」


2人でかしゃかしゃと歯を磨きながら今日の練習場所について考えていると、「そう言えば」とジルが何か思い出したらしい。


「一週間前くらいに、ちょっと用事があって、あっちの、砂漠の方のさ?国境近くに行ったんや。その時良い空き地があったわ。あそこなら誰にも邪魔されないだろうし、そこ行くか?」


他に思いつく所は無く、俺は二つ返事ですぐ乗っかった。国境近くなら家からは少し遠いがこの際我慢だ。実技以外に成績を上げれそうな希望のある教科は俺たちにはないので、時間が許す限り練習がしたい。準備ができるとすぐに家を出た。外は太陽が顔をのぞかせてはいたが朝はまだ少し肌寒かった。


「まだ少し寒いな・・・」


「まぁ、昼には暖かくなるやろ」


目的地まで歩いて行くとそれなりの距離がある。家から歩いて数分で着く所には巡回馬(カルゼル)と、呼ばれる乗り物があり、馬一頭から馬車まで何種類かある。空き地まではそれを利用すれば早い。


「馬乗って行くだろ?お前いくらか持ってるか?」


「流石にそれくらいは持ってるよ」


ジルはにかっと笑って返事をしてくれた。前に聞いた時ジルはあまり小遣いが多い方ではないようだったので、もしも足りないならその分は奢ってやろうかと思っていたが、いらぬ心配だったようだ。

巡回馬(カルゼル)は街のあちこちに配置されていて、定期的に決まった道を行き来しており、乗り継いでいけば国の端から端までぐるっと回れるようになっている。我が国の主な交通機関、庶民の足ってやつだ。

ジルの言う場所はそれに乗って行けば30分程度で空き地には到着できるらしい。巡回馬の足は早い。魔石の入った防具によって強化された足は疲れ知らずだから。


「そこの停留所の前に、安い弁当屋があるんだよ。そこで昼飯買っていかないか?」


「お!いいな。そうしようや」


少し前にできた店らしく、クラスの奴が話してたのを小耳に挟んでからずっと気になっていた。量はちょっと少なめらしいが代わりに学生の少ない小遣いでも余裕で買える値段らしく人気なんだとか。

意気揚々と出発した俺たちだがメイン通りに出るなりハッとなった。

どこの店も国王死去による喪中の為休みになっており、通りは今日も葬儀に向かう人で混雑していた。


「そうだった・・・。首都は今日まで店は休みなんだった・・・」


昨日献花したら全て終わった気になっていた。ジルと泊りで馬鹿な賭けやおしゃべりして夜は盛り上がってしまい葬式だとか、休みだとかの事とかとっくに忘れてた。そうでなくても、店は普通に空いてるだろうと、どこか軽く考えていた。ジルも同じだったようで肩を落としている。


「あーーー、もしかしたら何軒かは空いてるかもしれねぇし・・・、とりあえず向かうか・・・」


「頼む〜ー弁当屋開いてろよー」


葬儀の為、休みのお触れが出ていても、庶民の生活に直結する仕事は除外されていたはずだ。弁当は食品なので、生活必需品にあたる、はず・・・。俺たちは多少の希望と共に目的地に向かう事にした。

今日も町はまだ喪服の人だらけで、ジルが制服だったのでなにも考えずジルに合わせて俺も制服を着て出た事は正解だった。


(良かった。ジルが制服しか持ってきてなくて)


しばらく歩くと遠くからでも弁当屋の旗が立っているのが見えた。風に乗ってニンニクや生姜が焼けるような良い匂いが漂ってくる。店の前にも何人か人がおり、どうやら営業中のようだ。


「よっしゃ。良かったぁ」


「昼飯無しは回避したな!」


俺たちは店に着くとメニューはすぐ決まり俺は生姜焼き弁当とジルは唐揚げ弁当にした。弁当が出来上がるとすぐに停留所に行き管理人に説明をうけ、俺たちは迷わず馬車タイプにした。料金は馬2匹を使うより、馬一匹の二人乗り馬車タイプの方が僅かに安い。どちらも指示を出さなくても馬が勝手に目的地に向かってくれるので道が分からなくても安心だ。

管理人が俺たちが座席に着いたのを確認すると、馬をつないでいたロープがほどいた。馬はゆっくりと目的地に向かって走り出した。


「ふぅ・・・」


正直、無事に出発出来てほっとした。"馬車の方が料金が安い"という口実で馬車にしたが、実は一人で馬に跨るのはまだちょっと怖かったのだ。

どうやらそれは俺だけじゃなかったらしい。横で「オレさぁ」とジルが呟いた。


「まだ一人で馬に乗るのが怖いとか思っててさ。カッコ悪いよな。オレ、夢は赤兵・・・いや、赤竜隊に選ばれる事なのにな」


「ははっ」と照れ笑いしながら言った。

ジルにはなりたいものがあったのか。と少し驚いた。それも俺も子供の頃に憧れた、"赤竜"。その事に親近感が湧いた。


“竜”と言うのは強さの象徴によく用いられる空想上の生き物の事で、翼の生えた大きな魔獣が元となっている。その攻撃は一夜で街を壊滅させ、鋼の様な身体は槍一つ通さない。主人には忠実である特徴から、軍では赤が戦闘特化、青が防御特化、黄が補給回復となっている。

兵士は赤、青、黄、緑の四種のどれかに付くことになる。緑は予備軍だ。どこかの部隊に所属して成績が良ければ"竜"の称号がもらえる。竜の称号は頂いた瞬間に王様直属部隊のメンバーとなるのだ。ただ、定員は五、六名だから、誰か抜けないと入れない。


つまり、ジルの言う赤竜隊ってのは王様直属の攻撃部隊って事だ。誰かを蹴落としてそこに入るのが夢なんて・・・そんなとこ今の実力じゃ、夢のまた夢だ。


(無理だろ・・・)


喉まで出かかった言葉を飲み込み、純粋に理由が気になった。


「何で赤を選んだんだ?」


「そりゃ、かっこいいし?・・・なんてな。赤部隊が一番給料と待遇が良かったんよ。うちはおふくろが早くに逝っちまって、それ以来オレの為にずっと頑張ってくれてる親父に少しは楽させてやりたくてさ」


父さんのため、か。


「お前は?何で魔法学校入ろうと思ったんや?」


「俺は・・・」


そう言われて、今の学校入学前の事を思い出した。俺が赤竜になりたかったのは15歳までだった。基礎学校を卒業するころになって、働くか、進学かってなった時に漸く将来を考えたんだ。そのとき改めて考えて自分の実力不足から赤竜になるのは俺には無理だと諦めた。それ以外に特になりたいものや、やりたいことが無かった俺は、先生や、両親から「進学した方が就職に有利だ」とか、「今回は進学する人が多い」「魔力操作の素質があるんじゃないか」とか(おだ)てられて、とりあえずどっかの部隊に入れればいいかな?ま、それか魔道具を作る技術者か・・・?なんて適当に専門学校へ進学した。


つまり『やりたい事なんか無かったし、煽てられて適当に進学した』のだ。


自分で言うのもなんだが全く持って大した理由じゃなくて、ジルの入学理由聞いた後だと、なんか恥ずかしいような、情けないような、気持ちになった。


「・・・手に職があった方が良いかなって」


何も考えてない。なんとなく進学したーーーなんて、素直に言えなかった。だからと言って“手に職を”ってのも何も考えてないと言っているようなものだったが"何も考えてない"よりましな気がしたんだ。

ジルは俺の答えにあまり興味がなかったのか、「ふーん」と相槌を呟くと反対側の景色を見始めた。


「やっぱ無理やろか・・・赤竜になるの・・・」


外を見ながら小さな声でぽつりと呟かれた言葉に、ジルも自身が掲げた夢がちょっと無謀だと思ってはいるんだと気づかされた。夢をとっくに諦めた俺は、なんて声をかけていいか分からず、しばらく悩んだせいで返答までに間が開いてしまい、答えるタイミングを逃してしまった。もう、いっそのこと聞こえなかった事にして俺もジルとは反対の窓から外を眺めた。馬車はガタガタと、音を立てて進んでいく。


(・・・来年には本格的に就職の事を考えなきゃいけないんだよな・・・俺は、どうしたいんだろ?何がしたいんだろうか。自分の今の能力でできる仕事って・・・?)


ジルを馬鹿に出来る権利は俺にはなかった。俺は未だに何もやりたいものが見えてこなくて、将来は真っ白のままだった。自分はあれからちっとも成長してなかったんだと気付き少し後悔した。そうは言っても、やりたい仕事がいまいちピンとこないのだ。楽して稼げたら良いなとは思うけれど、そんなものあるわけなく、楽しく仕事したいと考えてもそれって言ったいどんな仕事か見当もつかない。適当についたとして、それで良いんだろうか?このまま卒業を迎えたら、俺はいったい・・・何をしているだろうか?

悶々と考えても答えは見つからず、ただ景色だけが流れていった。


しばらく進んで行くと、だんだんと家々の感覚が少しずつ空いて畑が多くなってきた。奥の方には国境を境にした森の壁が見える。国境と言っても森を抜けた先にあるのは砂漠地帯で基本は誰も行かない。昔は国があったらしいが、草木が育たない土地の為、誰も住もうともしないし、資源になるような物も無い。おかげで他国と取り合いになったりする事もないのだが。

昔、父さんに聞いた事があるだけで、行った事は無い。実際にはどうなってるのかは知らない。


(しかし砂漠なんて何も無いし、国としてやっていけなくなるのは目に見えてる。そこに国を作った最初のやつは何でそこに住もうと思ったんだろな・・・?)


疑問は浮かべど答えが分かるわけでもない。ジルに話題を振ってもどうせ「知らん」の一言で会話が終わりそうなのが目に見えていたし昨日の教科書に載っていたかも覚えていない。


隣からはジルの鼻歌が聞こえてくる。


通り道にいた小鳥がこの馬車に追い払われ時折何羽か慌てて飛んでいくのを目で追った。今日の空は良く晴れていて空気はとても澄んでいる。太陽が上がって気温が少し高くなり、予想通り温かくなってきた。サワサワと髪を撫でる風と馬車の振動も心地よく眠ってしまいそうだった。


しばらくすると民家が遠のき周りの景色が短い草に覆われた土地になった所で停留所が見えてきた。管理人のおっさんが出てきて馬が止まる。


「「ありがとうございました」」


管理のおっさんは学生二人がこのタイミングにこんな国境近くで何の用があるのだ?とでも言いたげな目を向けてきたが、二人でお礼を言うと「あぁ」とだけ言い、馬を休憩させる為、裏の小屋に引いて行った。

それを見届け、周りを見渡すとジルが指をさした。


「あの道や」


ジルの指さす先はもう森だが、いちを国境までは道があるようだ。道案内はジルに任せて、普段こんな国境近くに来ることがない俺は物珍しさから周りをキョロキョロ見渡し、虫を見つけては捕まえジルに向かってぶん投げて、ぶん殴られた。

諸々のネーミングセンスが無いため、所属部隊等の呼び方は一旦保留で・・・w

決まったら書き直す


平和な日常が続いている。少し動き出すのは十話頃・・・

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