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献花

国王の葬儀に参列する為にメイン通りにある広場までやってきたウィルとジル。

そこで白い花ー百合ーをもらい、同じく葬儀のためにやってきたウィルの想い人サシャと出会う。

コミュ力の化け物のジルのおかげで一緒に参列することになったが・・・

俺たちはみんなで列に並んだ。 "並んだ" というより "一つの塊になっていた" に近かったかもしれない。広場に来るまでの混雑した道を流れに乗って行くのと変わらない感じだ。

俺たちの後ろをサシャ達が来ていた。

列はゆっくりだが止まらずに進んでいく。おかげで気が付けばもう広場を抜け、橋の門前まで来ていた。

中央には誘導する警備兵が点在していて、右側から入り、左側からは献花を終えた人が出ていくように、参列を整えている。

いつも居る橋の門番は、参列者の誘導をその警備兵に任せ、今日は街の人が入っていくのを静かに見守っているようだ。


「オレ、この先行くの初めてや・・・」


ジルがボソボソと話しかけてきた。少し緊張しているのが伝わってくる。


「ほとんどの奴は初めてなんじゃね?俺も初めてだし、一般人は城に用が無いだろ?」


俺もわずかに緊張を感じながら門番の横を通る。橋のサイズは変えられないので広がり気味だった列が揉まれながら整列されていく。


「そこ、もう少し端に避けて」


警備兵の声に横から人の波が寄せてきた。さらに俺の前の奴が立ち止まったせいで、ジルだけ流されて先に行くような形になってしまった。ジルの後ろに居たサシャ、ガリング、ポチ美と俺の横を過ぎてしまったので、置いてかれると思った俺は慌ててモチ美の後ろに入り込んだ。そうしてそのまま俺たちは縦に一列になり、俺の隣には知らないおっさんと子供の三列並びになっていた。

混雑具合から前のやつを追い抜いて移動することは物理的にできそうになかった。置いてかれずに済んだけれど、ジルともサシャとも少し離れてしまった。


(ついてないな・・・)


それでも、初めての場所に少し緊張する。橋を渡りきり、行き着いた先の門をくぐるとこれまた初めての『庭園』とやらに目を奪われた。

整然と切り揃えられた草や木。今が開花時期であろう花が美しく咲き誇り庭園を鮮やかに彩っていた。中央にはデカい噴水もある。

ふとジルの後ろに居るサシャが目に入った。サシャは庭園に夢中になっているのか辺りをきょろきょろと見まわしている。ワクワクしているのが後ろからでも確認出来て、その様子がとても可愛く、今が葬儀の参列中だという事を忘れてしまいそうだった。できればジルと場所を変わってほしい。もしくはガリング。


そんな俺の願いは届くはずもなく列は進んでいき階段を上りついに会場である城のホールへの入り口まで来た。入り口とはいえ見上げる程高くて、前に並ぶみんなも、呆然と見ているようだった。

この広々としたホールは式典などでもよく使われる言わばイベント用のホールなんだろうと見て取れた。

飾りがついた柱や大きなゴシック調の窓。天井にも何やら絵が描いていた。想像していたものよりも遥かに細かく、細部まで手の込んだ作りでただただ呆然とした。普段見る事がないものなので、何もかもが新鮮だった。


(もう少し明るければよく見えるのに・・・)


ホールは葬儀の為か、窓にはカーテンがかけられ太陽光ではなくシャンデリアやロウソクなどで中が照らされていた。そのため外から入ってきた人たちにとっては最初は薄暗く感じる。

目が暗さになれると今回のゴール地点である祭壇が正面に厳かに鎮座しているのが一気に目に飛び込んできた。

1番奥の高い所に透明な棺が置かれ、中に人が安置されているのが見える。棺の周りも花で埋め尽くされ、まるで百合の花畑に寝ているようだった。


(あれが、死んだ王様?)


人が棺に居るのは分かったが顔は見えそうになかった。

手前の段には、外で見た祭服の教祖達が並んで歌を捧げている。ホールはそいつらの静かな祈りの歌が反響していた。聞きなれない歌だが、心が落ち着くように感じた。

その脇の机には国旗やフルーツなども一緒に置かれているのが見えた。その為ホールの中は甘い匂いや花の匂い、体臭などいろいろな匂いが混ざり合い何とも言えない匂いが漂っている。


「くちゃいぃ・・・うぅ」


足元から小さな悲鳴が聞こえ下を見ると、隣の子供が匂いに耐えられないのか、顔をしかめておっさんの足にしがみついていた。


(子供にはキツイよな・・・俺でも早く出たいのに)


もう少し我慢すれば出られるぞ。と自分にも言い聞かせるように心の中で応援した。


一番前に並べられた机に、溢れる程の百合が乗せられているのが見えた。黒い祭壇に真っ白な百合のコントラストが幻想的で、不謹慎だが、綺麗だった。

一歩、また一歩と進む。祈り終わったら左にはけて出るようだ。混雑しているが流れは出来ている。前の人を見てやり方を確認する。


(礼をして前の机に花を置いて、もう一度一礼か)


横に10人は並べそうだ。空いた所に次の人が入り、そうやって次々交代し花を置いている。溜まった花は定期的に祭服の人が束ねて、祭壇のまだ空いている所に持って行っている様だ。

そう言えばと、さっき交換してもらった百合を思い出して、手元を見た。「育て方と、土地の魔力量で、変わる・・・」そしてこの百合は、わずかに


(光ってる・・・?)


外に居たときは気づかなかった。けど室内に入り、少し薄暗くなったおかげで見えるようになったのか、ぼんやりと光を放っているように感じるのだ。ジルに聞きたくてもあいつは列の前に居る。


「・・・後で聞くか」


離れない様に前のポチ美になるべくくっ付いて進む。

女子と至近距離になる事なんて殆どないのに、よりにもよってポチ美か。横にデカいし顔も微妙、口を開けば人の悪口ばかりで萎えるんだよな。それにこの女の甘だるい香水の匂いが俺はあまり好きじゃなかった。憂鬱だ。近距離目の前の全てが。


そうして漸く献花台の前まで来た。ポチ美に続いて空いた所に入る。さっき見た事をもう一度思い出し、ちょっと頭を下げて山積みになった花の上に、持ってきた百合を適当に積むとさっさと下がった。深くお辞儀をする義理はないし、真面目にやると『王様を讃えている人』みたい見られるのが嫌だったし、なんか気恥ずかしいので、足早にその場を去った。帰りの流れに乗ったころになって、最後に一礼をするのを忘れていた事を思いだした。


(まぁいいか。今更だし。早く帰ってジルと遊び・・・そうだ、勉強する話だったな)


あの時は流れで一緒にやるとは言ったものの、すでに勉強は面倒くさくなっていた。

しかし、このままジルの成績が悪いままだと、一緒に学校に行くのは叶わなくなる。ここで俺の悪い癖が出てしまった。


(勉強は今日じゃなくても良いんじゃないか?)


「友情を取るか、遊びを取るか」


二つを天秤にかけて、どうするかと悩みながら皆の後ろ姿を追いかけ、来た道を戻る。広場まで戻ってきたが、相変わらず混雑していた。


「広場も出ないか?人が多すぎてきつい」


みんな俺の意見に賛成してくれたので、そのまま広場も抜け、来るときに出て来た裏道前の店のとこまで戻ると俺たちは漸く人混みから漸く解放され、やっと一息つくことができた。


「あー終わった終わったぁ」


「なんか疲れたな・・・」


参列中は縦一列になったこともあり、少しも話すことができなかったので、ここにきて漸く「緊張した」「初めて見た」などの会場での感想を言い合い盛り上がった。女子トークも盛り上がっているようだ。


「そう言えばジルさん、お辞儀が綺麗でしたね」


「ただ緊張してただけに見えましたわ」


サシャがジルを褒めてガリングが落として、ジルは少し照れたり怒ったりしていた。

耐えられなくなったのか、自分への集中攻撃を逸らそうとこちらを指さして言った。


「ウィルなんか花を投げ捨てるように置いて唾吐きかけるみたいなお辞儀してたんやぞ!!」


「してねぇーーー!!!」


「最後の一礼もしてなかった!!」


「っ違う、やらなかったんじゃない忘れてたんだ!」


一連のやり取りを女子3人は笑って、周りの人からまたうるさい奴が居るという目で見られてしまった。

もう話題を切り替えようと、俺はこの後の事を切り出した。


「これからどうするんだ?」


時間はそろそろ昼過ぎになる頃だ、時間はある。人数が増えたし、もしかするとみんなの返答次第ではこの後のジルとの勉強会は無くなる。ここまで来たが俺はまだ悩んでいた。けれどサシャが居るなら多少、遊びになればいいなとの気持ちが強い。


「私たちはこの後私の家で女子会をするので、男どもとはここでお別れね」


ガリングがデカい声で牽制してきた。


「そうね!行きましょ!」


ポチ美がそれに乗っかってきた。サシャはそんな2人に手を引かれ


「では、お二人ともまた学校で」


と一言言うとそのまま3人は反対の道へと去っていった。今日はジルとの勉強が確定した。


「はぁ〜〜〜〜」


盛大にため息を付いてしまった。チラッと確認すると、俺を見ながらニヤニヤしてるジルの顔が目に入った。


「はぁあ〜〜〜〜〜〜〜」


今日一のデカいため息が出てしまった。そんな俺の肩をポンポンと叩いて今日一満面の笑みのジルが言う


「良かったな!サシャと話せて」


「話した?!あれで?」


一番話してたのお前だろ!と、思ったが、いちをこいつなりにチャンスを作ろうとしてくれたのかもしれない。何だかんだ俺の事気にかけてくれてたのかと、さっきまで勉強か友情かを天秤にかけてしまった事は・・・悪かったなと反省した。


が、次に奴が放った言葉は


「まぁ、俺は人混みに乗じてサシャの胸触って来たけど」


そう言うと走り出した。ーーー逃げた。ジルのやつニヤニヤしてたのはサシャの胸触って来たからだ。俺は脳内でこの変態野郎をボコボコにした。こっからはリアルだ。


「待て!てめぇ!」


慌てて追いかける。先に走り出したジルに追いつくのは流石にしんどかった。お互いの息が切れ限界を迎える頃、漸くジルの肩を捕まえた。


「はぁ、はぁ・・・っ俺がサシャの事好きなの知ってて、はぁ、そう言う事やるか?」


「ははっ、はぁ、はぁ、いや、ほら、不可抗力だよ。人混み凄かっただろ?って、マジになんなや」


両手を振ってわざとじゃない事をアピールしてくる。やいのやいのと周りお構いなしに口論していて気付いたら俺の家の前まで来ていた。


「この話は一旦保留だ!」


「保留にするか!もう終わりや!」


時間を確認すると昼を過ぎていた。お互い一度家に帰り昼飯を食べて、ジルは勉強の準備が終わり次第また来るとのことで一旦解散とした。

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