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【コミカライズ企画進行中】学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる  作者: まるせい
三章

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第76話 渡辺さんはお茶を飲みたい

「次はどうしようか?」


 店を出た後、俺は振り返ると彼女に確認をする。


 中華街にある店の料理はとにかく量が多い。


 価格は地元の街中華と変わらないのだが、その量たるや中高生男子を満足させてくれるくらいだ。


 彼女は食が細いので、これ以上はいらないだろう。


「散歩するなら近くに公園があるけど?」


 腹ごなしに運動したいかと思い、そう提案をしてみるのだが……。


「それなんですけど、近くに面白そうな店があるんで行ってみたいなと……」


 渡辺さんはおずおずと自分のスマホ画面を俺に見せてきた。


「どれどれ?」


 画面には店の紹介が出ている。中国茶を扱っている喫茶店のようでここからそんなに離れていない。


「へぇ、琵琶演奏か……面白そうだね」


 説明によると、一日に何度か定期演奏をしているようで興味を惹かれた。


「ど、どうでしょうか?」


「こういうのも面白そうだし、ここにしようよ」


 俺たちは店へと向かうのだった。







「いらっしゃいませ、二名さまですか?」


 店に到着すると、店員さんが声を掛けてきた。


 ここは一階が売店となっており、様々なお茶を取り扱っている。


 二階は喫茶店となっており様々な中国茶を飲むことができる。

 琵琶の演奏が行われるのは二階となる。


「メニューをお持ちいたします」


 店員さんに案内され、二階にあがると席へと案内される。


 変わった柄の布や家具が目につく中、4人がけのテーブルに案内された俺たちは向かい合って座る。

 渡辺さんともども、どこか落ち着かない様子で周囲に目をやると、数メートル離れた場所にステージがあった。


「あそこで演奏するみたいですね」


 渡辺さんが顔を寄せ話し掛けてくる。


「メニューになります」


 店員さんがメニューを手渡してきたので広げ2人で覗き込む。


「沢山の種類がありますね」


 お茶の名前はすべて漢字で書かれているので、普段中国茶を飲み慣れていない俺にはどのような味がするのかわからない。


「茉莉花ってジャスミン茶だっけ?」


「そうですね」


 他にも「凍頂烏龍茶」とかもある。ただの烏龍茶ではないのか味が気になる。


「名前だけだとどんな味か判断できないね」


 それはそれで楽しみなのだが、決めかねてしまう。


 それなら確実に飲んだことがない名前のお茶を頼んでみることにしよう。


「私は九宝茶にします」


 そんなことを考えていると、渡辺さんが早々に注文するお茶を決めた。


「どうしてそれにしたの?」


 判断基準について聞きたくて確認すると、彼女はメニューの説明を指差した。


「この店オリジナルブレンドらしくて、プーアル茶をベースに全部で九種類の材料が入っているらしいので」


 そう言われると確かに気になる。カフェで注文する時に「当店オリジナルブレンド」と書いてあるとつい注文してしまうから。


「相川君は何にするんですか?」


「俺は……この『東方美人』にしようかな?」


 店員さんを呼び注文すると、少ししてお菓子が入った小皿が運ばれてくる。

 三種類入っており、焼き菓子とビーンズぽいのと干し芋だった。


「お茶うけも面白いですね」


 少しして、店員さんが茶器を運んできてくれた。

 テーブルに敷き布を置き、その上に茶器を置く。


 茶葉を入れると、温度計で湯温を確認して注いだ。


「こちらの東方美人の湯温は85度にて提供させていただきます。一度目の茶の湯はこちらの器に捨てさせていただきます」


 中央にある大きな壺に注いだお湯を捨ててしまった。


「洗茶と言いまして、茶葉を開き不純物を取り除くために行なっております」


「へぇ、最初に抽出したお茶を飲まないなんて珍しいですね」


 一番最初に淹れたお茶が一番美味しいと思っていたので、衝撃的だ。


「この後はお湯を注いでから30秒〜40秒程待ってから茶杯に注いでください」


 店員さんはそういうと、渡辺さんの方に向き合う。


「こちら九宝茶を入れさせていただきます。湯温は90度にて提供させていただきます」


 店員さんがお湯を注ぐと、何とも言えぬ匂いが広がってくる。


 このお茶はガラス製のポットが使われており、具材の中には花があり広がるのを見て楽しむことができた。


「綺麗な花ですね」


「今開いたのが菊花で、他にはナツメ・クコの実・松の実・クルミ・氷砂糖なども入っています」


「氷砂糖を入れたんですか!?」


 茶を抽出する時に甘味を入れるという発想に驚いた。


「こちら30秒〜40秒で飲み頃になりますので、茶杯に注いでお飲みください」


 店員さんは最後に、


「差し湯は無料ですので、お湯が足りなくなりましたらお声を掛けてください。五煎程までは楽しむことができます」


「何度もお代わりまでできるなんて凄いですね」


「ちょっと高いかと思ったけど、これなら全然お得な気がする」


 カフェのコーヒーに比べると値がはるのだが、丁寧な説明に加えてお代わりまでできるとなるとついつい長居してしまいそうだ。


 実際、周いの客たちもお茶を楽しみにながら談笑している。


「そろそろ、飲めるかな?」


 茶杯に茶を注ぎ手に持つ。


「いい香りがします」


 リラックスした様子の渡辺さんは、フーフーと息をかけると九宝茶を飲んだ。


「美味しいです」


「本当だ。これ好きかも?」


 今まで味わったことがない風味なのだが、確かに美味しい。


「相川君のお茶も飲ませてください」


「そっちも飲ませてよ」


 店員さんが茶杯を二つずつ持ってきてくれたので、注ぎ渡す。


 どうやらお茶をシェアするのはOKらしい。


「なるほど、こっちの方がスッキリした味わいですね」


「沢山の材料が入ってるからどんな味かと思ったけど、飲みやすい」


 これは是非家でも飲んでみたいと思い、後で1階の売店で買えないかと考えていると……。


 ステージに人が現れた。


「もう、そんな時間か」



 ちょうど、琵琶の演奏が始まるらしく、俺たちは後方の席からそれを眺める。


 琵琶の音が響き始めると、先程まで談笑をしていた人たちも意識をそちらに向け演奏に耳を傾けた。


 いつの間にか、部屋の明かりが落ち、間接照明がステージのみを照らしている。


 茶の匂いと、ステージの演奏に一瞬、国外にいるのではないかと錯覚を起こしそうになった。


 渡辺さんは夢中で琵琶の演奏を聞いている。そんな彼女の横顔も美しく、俺は演奏に耳を傾けながらもじっと彼女を見続けるのだった。

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