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【コミカライズ企画進行中】学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる  作者: まるせい
二章

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第62話 沢口さんは釣りに行きたい

 調子に乗って大量の注文をしてしまい、満腹になるまで腹に詰め込んだ俺たちは、店を出ると腹ごなしに散歩をすることにした。


 沢口さんがいろんな料理に興味を惹かれ、俺に「これも美味しそうだよね」と同意を求めてくるので、俺の方もついつい気になってしまい、頼んだ料理をシェアしあったのだ。


 しばらく歩いていると、ふと彼女が話し掛けてくる。


「そういえば、普通のスポーツだとオフシーズンがあるけど、釣りっていつまでできるの?」


「うーん、基本的には年中できるけど……」


「けど?」


 彼女は首を傾げると目を開き俺をじっとみて続きを聞く。


「冬場は釣果が落ちるし寒いから、余程気合の入った釣り人じゃないと釣りには行かないな」


「ふーん、そうなんだ。ちなみに相川っちは?」


「俺は年中通ってるよ」


 人が少ない分、釣り場も空いているので場所を選びやすいし、保存用の氷を減らせるので一回り小さいクーラーボックスで済む。


「でもさ、釣れないと楽しくなくない?」


 そんな俺の返答に、彼女は首を傾げると聞いてきた。


「確かに、釣りをが目的で釣りに行く以上は魚を持って帰りたいけど、それだけじゃないから」


「というと?」


「俺にとって釣りは海にく口実でもあるからさ」


「相川っちは海男なんだ?」


 からかいの笑みを浮かべた沢口さんは口元に手を当てるとそう言った。


「何というか、しばらく海を見ないでいると落ち着かなくなってくる」


 夢にみたり、ふとした拍子にマップで海のビューを見たりしてしまうことになる。


 それこそが、釣り人の性というやつなのだろう。

 そんなことを考えていると、沢口さんがさらに質問をぶつけてきた。


「釣れる時期っていつからいつまでなの?」


 ふと釣れる魚の種類と旬について考えてみる。


「……そうだな、場所にもよるけど大体3月から11月くらいじゃないか?」


 同じ海でも時期によって釣れる魚は様々なのだが、釣れなくなる時期は大体同じなので皆海からいなくなる。


今年はあと何度、釣りにいけるのだろうか?


「ふーん、なるほどね……」


 沢口さんは納得したように頷くと立ち止まり俺を見る。


「ねねっ! 相川っち。私を釣りに連れて行ってよ!」


 そして、唐突に両手を広げると釣りに連れて行けとアピールをし出した。


「沢口さんと……釣り……?」


 真剣な視線を送る沢口さんと目が合う。パッチリした瞳をこれでもかと言うくらい開いており、期待感を漂わせている。


 確かに、夏休みの際にした釣りは楽しかった。

 彼女も小魚を釣り上げていたし、あれだけ楽しい体験をしたのならハマってしまってもおかしくない。


 だけど、彼女は割とルーズなところもあるのでちゃんと早朝に起きられるのだろうか?


 連れて行くこと自体に忌避感がまったくない自分の心境に驚きながらも、彼女と釣りをするのは楽しそうだと考えてしまう。


「それもいいかもね」


 気が付けば俺は彼女の提案を肯定していた。


「ホント!?」


「相沢も釣りに興味持ち始めてたし、この五人でなら俺も楽しめそうだ」


 いつか一緒に釣りをした友人の時のようにはならない。そう信じられるだけのものがある。


 一瞬、沢口さんが固まった気がする。


「沢口さん?」


 俺が声を掛けると彼女が反応してみせた。


「だ、だよね! それじゃあ、あとは日程の調整だね! 釣りは今がハイシーズンだし急いで調整しないと!」


 提案が採用されたのが嬉しかったのか、沢口さんはこれまで以上のテンションで捲し立ててきた。

 だけど、ここは心を鬼にして言わねばならないだろう。


「その前に、テストの調整もしないとね。あれ、赤点だと休日に補習あるらしい」


 もう時期実力テストも実施される。成績が悪ければ補習授業がまっているのだ。


「……やなこと言わないでよ」


「もしそうなったら、沢口さんが補習を受けている間、皆で釣りをすることになるけど?」


「うっ……頑張るもん」


 状況を想像したのか、彼女は真剣な顔で頷いた。


「それじゃあ、私が皆のスケジュールを聞くから、相川っちは魚が釣れる場所の選定をよろしくー!」


 明るい表情を浮かべた彼女はそういうと、心はすでに釣り場にいるつもりなのか上機嫌で前を歩くのだった。


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― 新着の感想 ―
沢口さんマジで良い子だから、これ以上傷が深くなる前にどうか…
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