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【コミカライズ企画進行中】学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる  作者: まるせい
二章

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第54話 沢口さんと昼食を摂る

 特別授業の当日。

 俺たち生徒は、それぞれ指示された講堂へと来ていた。


 周囲はほとんどが女子で、男が二人いるにはいるのだが女子たちと楽しそうに話をしている。

 座る席はクラスごとにわかれており、ちょっと離れた場所に沢口さんが座っていて、しきりに俺に手を振ってくる。


 そんな彼女と、手を振られている俺のことを何人かが見てくるのだが、恥ずかしさもあってか俺はできるだけ他の生徒と目を合わせないようにしていた。


 始業のチャイムが鳴り響き、講師が入ってきた。

 家政大学で教鞭をとっている女性と、調理製菓専門学校の講師の女性だ。


 二人の教師は自己紹介をすると、まず座学でそれぞれの学校で何を学べるか、どのような職業に就くことができるのか説明をする。


 これまで考えたことのないような仕事ばかりで、授業にも興味があったので集中して聞いていたのだが……。


「ぎゃはははは、マジかよ」


「なー、ありえねえべ!」


「ちょっとぉ、声大きすぎだからぁ」


 一部の生徒の大声により、講義がストップしてしまう。

 騒いでいるのは、俺の他に二人だけいる男子生徒と、クラスメイトの女子。


 この三人は、講師が話す内容にまったく興味がないのか、雑談をしているようだ。


『そこの三人、真面目に講義を受けるように』


 後ろで見張っていた学園の教師が注意をする。


「さーせん。退屈だったもんでぇ~」


「俺ら、別に宇宙飛行士目指してねえし、火星とかいかないしなー」


「馬鹿ね、家政よ! あんた本当に頭悪いんだから。すいませーん」


 講師の女性は黙り込んでしまい、講堂に微妙な空気が流れる。


 それからその三人はおとなしくなったのだが、顔を寄せヒソヒソと会話をしており、ときおり講師を見ては笑っている。


 結局、三人の態度がかわることはなく、その後の講義はいまいち集中することができなくなっていた。





「ふー、疲れたぁ」


 休憩時間になると沢口さんが近付いてくる。

 他の生徒たちは次の教室に移動しているので、講堂には俺と沢口さんと少数の人間しかいなかった。


「お疲れ様、昼飯食べたら午後も頑張ろう」


 俺と沢口さんは連れ立って講堂を出る。今日ばかりは一年生はてんでバラバラの授業を受けているので変則的で、相沢とも時間が合わない。

 そんなわけで、同じ授業同士ということもあって二人で昼食を摂ることにしていた。


 俺と沢口さんは中庭のベンチに座ると互いに昼飯を食べ始めた。

 沢口さんはサラダと野菜ジュース。


 俺はカツサンドとお茶だ。

 彼女が食べるのを見ていると目が合う。


「ん、どうしたの? 相川っち」


「いや、別に……」


 何度か一緒に食事をしたことがあったのだが、もっと食べていたのではないか?

 そんなことを考えていたのだが、ダイエットの可能性がある。


 それならば、余計なことを言わない方がいいだろう。そんな風に思い、ぼかしてみsたのだが……。


「もしかして『よくそれで足りるな。ダイエットか?』とか考えてた?」


「どうしてわかったの?」


 思わぬ彼女のエスパーっぷりに驚く。


「そりゃ、そう言う顔してたし、そろそろ相川っちとの付き合いも長いもんね。少しくらいは読めるようになるし」


 俺の内心を言い当てたのが嬉しかったのか、沢口さんは嬉しそうに笑いながら野菜ジュースを飲んだ。


「でも、別にダイエットしてるとかじゃないよ」


「そうなの?」


「だって、私、ちゃんとジョギングもしてるからね。見よ、この引き締まった足を!」


 そう言われて視線をやると、綺麗な足が目に映る。確かに自慢するだけのことはあってか、しみ一つない白い足だ。


「だったら、どうしてそんなに量が少ないんだよ?」


「それはね……この後の授業で調理実習があるからなのだよ」


 午後は、調理製菓学校の講師による栄養学と、その後調理実習があるのだ。

 どうやら沢口さんは、そこで食事を摂るため今はあまり食べないことにしたらしい。


「ねね、相川っちの作るの食べさせてよ。私の手料理と交換でどう?」


 こちらが本題なのか、沢口さんは横から顔を覗き込ませるとキラキラとした瞳を向けてきた。


「いや……別に、そこまでして俺の作る料理に拘らなくてもいいんじゃない?」


 調理実習で作った料理を交換などしていたら、余計な噂が立ちかねない。


「えー、私、相川っちの料理好きなんだけどなぁ」


 足をプラプラさせて残念そうな声を出す沢口さん。彼女は裏表がないので本心で言ってくれていることがわかるので、褒められて悪い気がしない。


「その内……また作るから」


「ほんと!? 約束だからねっ!」


 俺が返事をすると、彼女は振り返り嬉しそうにしながら「確約もらったかんね」と言った。

 それから、一呼吸置き話が止まると俺は先程の講義を思い出した。


「そういえば、さっきの講義で騒いでた人たち……」


「あー、いたねぇ」


 沢口さんはストローを咥えパックに空気を送りベコベコさせる。


「ああいうのって生徒側で注意できないかな?」


 せっかく講師に来てもらっているのに失礼すぎる。俺はそんな相談を沢口さんにするのだが……。


「うーん、ちょっと……難しい……かも?」


 沢口さんはこの学年でも人気がある女子生徒だ。彼女が言えば止まるのではないかとも思ったのだが、彼女は難しい顔をした。


「何かあるの?」


 俺は沢口さんに突っ込んだ質問をする。


「実は……男子の二人とも……私にコクってきたことがあってさ……今は、話し掛けたくないんだよね」


「おおぅ……」


 流石は沢口さん。モテるという話は聞いていたが、そのようなことになっているとは……。


「だから……ね。正直あまり関わりたくないんだよ」


 流石に振った相手に自分から話し掛けていく勇気はないらしい。

 普段の沢口さんらしからぬ大人しい態度に俺は別な話題を考える。


「そういえばさ……」


「えっ? うん、何々?」


「沢口さんってモテるけど彼氏いないんだよね?」


 俺はできるだけ明るく、茶化すように話すのだが、


「はっ?」


 物凄く怖い目で睨まれてしまうのだった。


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