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星降る夜の夜想曲  作者: 諸星影
ROUTE2(学園編)
13/13

2-05  ミサと愉快な仲間たち

公開予定の五作品の内の第一作目となります。

コンセプトとしては『近未来』×『SP』のローファンタジーです。

「なに――してるんです?」

「いえちょっとお兄いさんの装備に興味がありまして」


 そういうと彼女は心底興味深そうにして俺の服装や装備を観察する。


「すいません諏訪さん。この子、好奇心が強くて。

 少しの間付き合っていただけますか」

「それは別に構いませんが…………」


 そう言いつつ、横目で風見今日子と名乗った彼女の方を見やる。


 艶のある緑色の長い髪にすらっとした手足に落ち着いた態度。

 そして何よりお淑やかな雰囲気の中にありながら凛とした力強い瞳。

 もしかして――――。


「お名前、風見今日子さんでしたよね?」

「…………」


 そう尋ねると彼女は一瞬だけ閉口した後、

 ふぅと息を吐いてから言葉を続ける。


「ええ。お察しの通り、私はあの風見組の人間です」

「やはりそうでしたか」


 任侠組織――――風見組。

 数年前に起きた反社会組織の大解体にも耐え、今尚一部地域では強い権力を持つ

 日本最大の任侠団体である。


 とはいえ正直な話、一昔前ならいざ知らず。

 現代で任侠組織といえば近代技術に乗り遅れた人間の巣窟という印象が強く、

 昔気質の手堅い事業で生計を立てている団体とされている。


 もちろん今でも多少のあくどい商売もしてはいるのだろうが、

 それでも最低限の必要悪の範疇で収まっているに過ぎないはずだ。


「怖がらないのですか?」

「怖がった方がいいのか?」

「いえそういうワケではないのですが。皆私が風見組の人間と知ると恐れるので」

「悪いが任侠組織相手に怯んでいては警護官は務まらないよ」

「――――それもそうですよね。要らぬ心配でした」


 彼女はペコリと軽く頭を下げる。


「あーいや別に気にしてないよ」


「(ともあれまぁいくら弱体化したとはいえ反社会勢力…………学生間では

 そりゃ怖がる奴らも一定数はいるのは当然だな)」


 となると自ずともう一人の生徒の出自も気になるところだ。

 名門校なだけに有名な政治家の娘や大病院の家系でも驚きはない。


 しかし佐々木部という苗字には生憎心当たりはない。

 俺自身知見が広い方とはいえないが、ある程度の家柄ならピンと来ても

 いいはずなのだが――――最悪、どこかの名家に連なる家系という可能性も十分に

 あり得る。


「もしかして私のこと考えてます?」


 俺の思考が透けていたのか佐々木部花音と名乗った少女が

 首を傾げこちらの顔を覗き見る。


「警護官ですものね。私の出自、気になります?」

「まぁそうだな…………」

「ちなみにお兄さん、階級は?」

「一等だ」

「じゃあ分かるかもですね。薬袋研究所って知ってます?」

「ああ。病院とか製薬会社の薬袋グループがやってる研究施設だよな」


「(特警局のスポンサーの一つで、うちの組織とも深い関係のある研究所だ)」


「私の両親、そこの主任研究員なんです」

「重役じゃないか」

「ええ。だから場違いながら仕方なくこの学院に通っているんです」

「ふむ…………」


 確かに佐々木部は他の生徒たちと比べると制服の着こなしからしゃべり方まで

 少し砕けた印象を受ける。所謂ギャルというやつだな。


 成績の程は知らないが名門校の生徒会に入れるくらいには出来がいいのだろうが、

 赤みがかった髪色と合わせて周りから浮いているのは想像に難くない。


 しかし個人的に言わせてもらえば、彼女の格好は決して変ではないと思うし

 むしろ若々しくてかわいいとさえ思う。


「別に場違いでもいいんじゃないか。俺はその格好もいいと思う」

「え~本当ですか。ありがとうございます~」


 佐々木部はえへへと可愛らしい笑顔を浮かべる。

 その笑顔を見ているとこちらとしても若さというエネルギーに当てられて

 元気になってくるようだ。


「(俺まだ二十代なんだが…………そう考えてる時点で結構おっさん

 だよな…………)」


 と元気になると同時に心の中にダメージを負う中、

 ある程度のやり取りを終えたことにより二人とも生徒会の仕事をする為に

 自信の席へと戻っていく。


 ミサもこちらの会話に聞き耳は立てているだろうが、

 分かり易く気にするようなことはせず黙々とテーブルに置かれた書類に

 向かっていた。


「(本当に生徒会の仕事をしてるんだな)」


 自宅で何もかもを藤咲に任せているやつと同一人物とは思えないほどの集中力で

 仕事をこなすミサに関心を示しながら、その横でお茶の準備をする藤咲に

 小声で尋ねる。


「なぁこれ俺はどうすればいいんだ?」

「生徒会の仕事を待っていればいいと思いますが」

「いや何というか、手持無沙汰なんだよ」

「そういうことでしたら後ほど私と一緒に備品を運ぶのを手伝ってもらいますか?」

「まぁそのくらいなら喜んで引き受けるよ」

ご閲読ありがとうございました。

これからも不定期ではありますがローファンタジーを中心に小説を投稿して

いきますので、応援よろしくお願いいたします。

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