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星降る夜の夜想曲  作者: 諸星影
ROUTE2(学園編)
10/13

2-02  邂逅

公開予定の五作品の内の第一作目となります。

コンセプトとしては『近未来』×『SP』のローファンタジーです。

 佐久間朱里との会話の後。

 とりあえずは無事に校内での行動許可を取れたこともあって

 まずは施設内の確認を目的として学院内を散策することにしたにだが――――。


「やっぱりクソ広いなこの学院」


 何度も言うが職業以外、基本一般人の俺からすればやはり

 ここで目にするものは何もかもが規格外すぎて一向に現実感というものが

 湧きそうにない。


 特に校舎や一部施設は周辺地域にある建物より構造がしっかりとしており

 例え爆発物を使おうが建物全体を瓦解させることは出来ないに違いない。


 それに加え所々にある街灯や装飾までもが何というかオシャレであり、

 これぞ金持ち学校という感想がしっくりとくる。


 そしてその中で一際目立つ建物とはいえばやはり、

 敷地内の西側にそびえたつ大きな教会であろう。


「教会か――――」


 大きな十字架のオブジェクトとステンドグラスに彩られた内装を

 覗き見る。


 電子化が進んだ世の中でこういったレトロな建物は今となっては珍しい

 こともあってか、その光景を前に何とも言えない不思議な気分にさせられる。


 するとその時、ふと背後に人の気配を感じる。

 振り返るとそこにはシスターのような服装を纏った女性が立っていた。


「あらお客さんかい?」

「あ、いや――――」


 一瞬本物のシスターさんかと驚いたがどうやらそうではないらしい。


「その紋章、同業者か」


 シスターの首から吊り下げられた紋章。

 それはこの業界で知らぬ者はいない程有名なものであった。


「そういうあんたは、そうだな見たところ特警局の人間だろう」


 一瞬にしてこちらの所属を言い当てたシスターは

 その鋭い視線をギロリと動かしこちらを流し見る。


 その仕草は警戒というよりは純粋にこちらの情報を視覚的に得ようとする

 ような行動に思えた。


「あーそういえば自己紹介がまだだったな。

 私は我妻クレア、所属は見ての通り『聖天教会』で現在はこの学園の警備隊長を

 任されている」

「諏訪透次一等警護官。久世ミサという生徒の警護を担当している」

「ほう久世のご令嬢か。これはまた難儀な相手だな」


 我妻クレアと名乗った彼女はミサの名を聞き、クスクスと不敵な笑みを浮かべる。


「噂では久世のご令嬢は相当な警護嫌いだと聞いていたが――――どうやって

 落としたんだ?」

「どうも――――ただ、殺されかけたところを返り討ちにしただけさ」

「殺され…………ふふっこれはまた傑作だ」

「笑い事じゃないぞ」

「あはは、悪い悪い」

「…………」


 聖職者のような恰好をしている人物としては些か荒い言葉使いをする女性だが、

 彼女は何も本物のシスターというワケではない。


 聖天教会――――この業界では知らぬ者はいない日本最大の民間警備会社である。

 基本的に教会は特警局の介入しない案件を中心に活動しており、ここセントリアス

 学院ともまた警備契約を結んでいるようだ。


 ちなみに協会は特警局とは違い、全国各地に拠点がある上、多くの構成員が

 所属していることもあってか情報戦に強いという特徴がある。


 そしてこの女性。一見ヘラヘラとした軽薄な態度を取っているように見えるが

 その実、セントリアス学院の警備隊長という役職柄かなりの地位があると見える。


「(本当はこういう女性は苦手なんだが――――仕方ない。

 折角顔見知りになったんだ。この先何かしらの協力が得られるかもしれないし、

 仲良くしておいた方が何かと都合がいいかもしれない)」


「――――ところでずっと気になっていたんだが、どうして協会の連中はそんな

 恰好をしているんだ?」

「ん? あぁこれのことか。特に深い理由はないさ」

「そうなのか?」

「確か協会創設者が好きだったとかなんとか」

「それ本当の話か…………?」

「どうだろうな。少なくとも私はそう聞いた。まぁ見た目はともかく防弾性能は

 高いし私は案外気に入っているから理由なんてどうでもいい」


 そういってその場でクルクルと回転する彼女の姿を見て、

 確かに見た目による弊害や不自由さは感じられない。


「それに学院の中じゃこっちの方が生徒たちの受けがいいし、

 何よりカモフラージュ効果も期待できる」

「なるほど。確かにそれならある意味有用かもしれないな」

「良かったら着てみるか?」

「いやそれは流石に遠慮させてもらうよ」

「そうか…………結構似合うと思ったんだがな」


 冗談なのか本気なのか、彼女は心底残念そうな表情を浮かべる。

 とはいえ若干のわざとらしさも相まって、俺の読心術をもってしても

 彼女の真意は掴めなかった。


「ま、いいや。とりあえず同業の吉見だ。情報が必要ならいつでも

 訪ねてくるといい。もちろんそれなりの対価は要求するがな」


 と彼女は自身の胸の前で掌を上に向け、

 親指と人差し指で輪っかを作るジェスチャーをする。


 要するに金銭次第で必要な情報を売ってやろうと言っているのである。


「そういうことなら機会があれば頼らせてもらう」

「ああ、そうするといい」

「それじゃあ俺はこれで」

「あーちょっと待ちなよ」


 挨拶も終わり踵を返そうとする俺を我妻が引き留める。


「まだ何か?」

「いやなに折角だし校内を案内してあげようと思ってね」

「…………」

「そう警戒しないでいい。今の時間私は暇でね、ちょっとした時間つぶしさ」

「…………そういうことならお願いしようかな」

「いいね。そうこなくっちゃ」


 そうして俺は同業者でもある我妻クレアの申し出を受けることにした。

ご閲読ありがとうございました。

これからも不定期ではありますがローファンタジーを中心に小説を投稿して

いきますので、応援よろしくお願いいたします。

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