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吸血鬼ですが、何か? 第4部 人間編  作者: とみなが けい
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俺と真鈴は『人間』の所業を見せつけられる…

注意!この回は非常に非常に非常に不愉快な描写が描かれています。

作者は非常に悩んだ末に見たものをありのままに書く事にしました。

この『人間』の犯した所業を見る自信が無い方はどうぞこの回を飛ばしてください。

この回を飛ばしても何とかお話の進行が判るように書くつもりです。

また、もしもこのお話のような事を真似て行おうとした人がいたら、私のコネを総動員して地獄の果てまででも追い詰めて言葉に表せないほどの苦痛を与えたうえで滅ぼします。








俺がパソコンを開きファイルを開くと10の映像データが画面に現れた。


「ちょっと日付をメモして置こうかな。」


真鈴がキッチンに行ってペンとメモ帳を持っていた。


「1番目のが…去年の10月…5日か…次が…10月27日と…」


画面に現れたファイルの日付けを真鈴が書き取って行く。

日付は去年の10月5日から始まって10月27日、11月8日、11月23日、それから日付が飛んで今年の3月2日、3月22日、4月4日、4月12日、4月25日、そして5月9日となっていた。


「最後の5月9日って四郎が復活した前の日だね。

 少なくとも…10回…四郎が明石の部屋で見た内容がそのままの事が全部映ってたとしたら…」

「うむ、少なくとも10人は犠牲になっていると言う事だな。」


四郎は食べかけのナッツバーを袋に戻して胸のポケットに入れた。


「…大量殺人じゃないか…」

「それを確かめるには全部見るしか無いわね…」

「真鈴、彩斗、覚悟しておいた方が良いぞ。」


四郎の言葉に俺と真鈴は黙って頷いた。


「じゃ、最初の奴から見るよ。」


ファイルを開けると、どこかのログハウス風の小屋の内部が映った。

子供向け番組で流れるような何やら楽し気な音楽が流れていて、小屋の中央に椅子があり、5~6歳の女の子が可愛いぬいぐるみを抱いて笑顔で座っていた。

大人用の椅子は高く、女の子は地につかない足をぶらぶらと揺らして笑顔をカメラに向けていた。


『さぁ、それじゃ脱出ゲームを始めるよ~!』

『はぁ~い!』

『良いお返事だね!』

『本当にここから逃げれば、うさぎさんもっとくれるの?』


女の子は無邪気な笑顔を浮かべて尋ねた。


『もちろんだよ!

 ここから上手に逃げてママやパパの所に行ければたくさんたくさんうさぎさんをあげるからね~!うれしいかい?』

『うん!うれしい!頑張る!』

「お~!元気があるね~!それじゃあ悪いお兄さんが入って来るから、そしたらゲーム始まりだよ!準備は良いかな~?』

『うん!』


女の子はおかしくてたまらないと言う笑顔をカメラに向けた。


『それじゃ!ゲームスタート!』


スタートの合図の後、急にドアがバタン!と開く音がした。

女の子が音のする方を見ると笑顔がそのまま凍り付いた。


『ほら!早く逃げて逃げて~!』


馬鹿にするような間延びした声が聞こえた。

女の子は開いたドアの方を見つめてうさぎのぬいぐるみを抱きしめ、目を見開いてこわばった顔をしていた。


『ほら!早く逃げろよ!』


もう一つ狂暴な男の声が聞こえ、女の子の方向に何かが飛んできて女の子の膝の上に乗った。

初めは茶色く汚れた雑巾かと思ったが、カメラがズームアップすると、それは喉を切り裂かれた猫の死骸だった。

激しく悲鳴を上げた女の子はうさぎのぬいぐるみを投げ捨て、膝から猫の死骸を振り落として椅子から降りようとした。

その途端画面の外からごつい作業用ブーツを履いた足が飛び出て女の子の腹を直撃した。

女の子は椅子ごと後ろに倒れた。

ブーツに汚らしい作業ズボン上半身裸の男が出て来て、倒れた女の子の胸ぐらを掴んで持ち上げた。恐らく殺した猫の血を塗りたくったのであろうか、男の上半身と顔は血でまだら模様になっていた。


『さっさと逃げろよ!この野郎!』


男は女の子を床に立たせて一旦手を離した。

悲鳴を上げて逃げようとする女の子の髪の毛を掴んで床に引き倒した男は女の子に馬乗りになって、ポケットからバンダナを引き出して暴れる女の子の口に詰め込むと、更にカメラから転がって来たガムテープをとって女の子の口に張り付けた。


『手ごたえねえな!全く手ごたえねえよ!』

『頑張って逃げないとゲームオーバーだよぉ~!』


男の怒号と小ばかにしたカメラの声が重なる。

男は女の子の顔を思い切り往復びんたを食らわせる。

女の子の鼻から大量の鼻血が流れ出た。

う~!う~!と、バンダナとガムテープで口を塞がれた女の子のうめき声に引き寄せられるようにカメラが近づいて女の子の顔をアップで写した。

女の子の顔が赤く腫れあがり見開いた眼から涙が溢れ続けている。


俺は思わず再生を停めた。


「…ちょっと…勘弁してくれ…」


余りに残酷な映像に俺は荒く息をつきながら頭を抱えて俯いた。

真鈴が俺の肩に手を置いた。


「駄目よ彩斗…これはしっかり見なきゃ…」


俺は真鈴の顔を見た。

真鈴は無表情の顔をパソコンの画面に向けていた。

その目からは涙が流れている。

真鈴が唇をかみしめ、押し殺すような声で言った。


「私達は…これを見なきゃ…いけないんだよ…奴らのやったことを知らなきゃ…」

「…真鈴…」

「残りの奴を捕まえるためにも…見なきゃ…」


真鈴は最後まで言えずに嗚咽を漏らした。

しかし、顔は静止した画面を見つめたままでいた。

四郎もはなちゃんもじっと画面を見つめていた。

俺は大きく深呼吸をして再生を再開した。


カメラが後ろにあとずさり、馬乗りになった男と女の子の全体が映った。

男は女の子の両手を掴んで持ち上げて女の子の腹にパンチを叩き込んだ。

苦痛に身を捩らせた女の子は失禁をしたようだ。


『ああ!漏らしやがった!汚ねえな!汚いぞこの野郎!』


男は更に腹にパンチを叩き込んで女の子を壁に叩きつけた。


『またまた汚いとか言って~!

 嬉しいんだろおまえ~!』


カメラの声に男は血まみれの顔を向けて笑顔になった。


『うひゃひゃひゃ!』


男は下卑た笑い声をあげて倒れている女の子に近づくと両手にガムテープをぐるぐると巻き付け、更に太い柱に引きずって行き、女の子をうつ伏せに押さえつけてロープで両手を柱に括り付けた。


『汚ねえお洋服は脱がさないとな~!』


男は女の子のスカートを掴んで一気に引き破った。

女の子のかすれたくぐもった悲鳴が聞こえて来た。


『汚いの出すところは栓をしないとね~!」


男はうつ伏せになった女の子の足を広げると腰のポケットからナイフを取り出して女の子の腰にナイフを突き立てて肉ごと切り裂きながら下着をはぎ取った。

女の子の体が激痛で跳ね上がったのを男はゲラゲラ笑いながら自分が履いていた作業用ズボンのベルトを外してズボンをずり下げた。


『待ってました~!やれ~!やれ~!』


カメラの声が聞こえて音楽が激しいロックに変わり、男は女の子の足首を掴んで人形の足を引き裂くように容赦なく大きく広げて足の間にしゃがみこんだ。



「あああああ~!止めて!止めて!止めてよ~!」


真鈴が叫び、俺は即座に再生を停めた。

正直に言うと俺も見ているのが限界に達していた。

真鈴は両手で顔を覆い下を向いて肩を震わせている。

俺も下を向いて何とか心を落ち着けようと短く深呼吸をしたが、動悸と息苦しさが収まらなかった。


「真鈴、彩斗…あとはわれが見て情報を集めるから…君らは見なくとも…」


真鈴が四郎の言葉を遮って押し殺した声で答えた。


「いや、見るわ、最後まで全部見る。

 証拠やヒントを集めなきゃ…少しで良いの。

 犠牲になった子供たちの為に…見なきゃ…少しだけ、少しだけ時間を頂戴。」

「四郎…真鈴の…言う通りだよ。

 何分、何十秒でもよいから少し時間をもらうよ。

 俺も真鈴も全部見なきゃ…こいつを何とか…」


はなちゃんは沈黙を守っていた。

そして静かに真鈴の体をさすってやっていた。


俺達は質の悪い悪鬼を倒す為に装備を整え訓練を初めて準備を進め始めた。

だが、最初に四郎は言った。

質の悪い悪鬼と…質の悪い人間を倒すと。

そして、質の悪い人間の所業は悪鬼に劣らない、それどころか悪鬼以上の所業を犯すと言う事を…今、俺と真鈴はそれを、見せつけられている。


俺達は無言でコーヒーのお代りを淹れ、沈黙したままで飲んで、たばこを吸い、心を落ち着けてから動画の再生を再開して情報収集を続けた。





続く


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