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逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~  作者: 青雲あゆむ
第4章 益州攻略編

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幕間: 黄忠と魏延

【黄忠】


 儂の名は黄忠こうちゅう 漢升かんしょう

 今年55歳にもなる老骨よ。


 以前から劉表さまに仕えていたが、要領が悪いせいか、出世は遅かった。

 その辺の若造よりも、よほど腕には自信があるのだがのう。


 そんな思いを抱えていると、徐州牧の劉備さまが荊州へ攻めてきた。

 どうやら司空閣下の命令らしいな。

 彼が江夏郡を落とすと、長沙や零陵、桂陽までもが、同調してしまったわい。


 その後、しばらくおとなしくしていたかと思うと、とうとう襄陽にまで攻めてきた。

 しかも南陽へは司空閣下の軍が押し寄せ、劉表さまは窮地に陥った。

 結局、援軍も望めない状態で城は落ち、劉表さまは降伏してしまう。


 なんとまあ、鮮やかな手際よ。

 大して戦いもせずに、荊州の大半を手にしてしまうのだからな。

 そしてこんな老骨はいよいよお払い箱かと思っていたら、儂にも仕官のお誘いがあった。


「黄忠 漢升です。わざわざ私のような者にお声がけいただき、光栄の至り」

「おお、貴殿が黄忠どのか。実に強そうだな。その老練な指揮にも期待しているぞ」

「ははっ、ご期待に添えるよう、努力いたします」


 劉備さまは大きな耳と長い腕が目立つが、なんということのない人物に見えた。

 しかし人を見る目はあるらしく、いきなり大きな役職を与えてくれる。

 これは見た目以上の大器、なのかのう?

 いずれにしろ、大して長くもないこの命、このお方に捧げてみるか。



 その後、荊州の治安回復と練兵に励んでいると、とうとう益州侵攻の指示が下った。

 儂らは関羽どのを主将に、張遼、趙雲、魏延、徐盛たちと共に兵を率い、長江をさかのぼった。

 その数5万というのだから、劉備さまの勢力たるや、相当なものだ。


 そしてその戦力を一層、高めているのが、名だたる武将たちよ。

 特に関羽どのの武勇には、恐ろしいものがあるな。

 まあ、彼は儂より10歳以上も若いのだから、腕力で負けるのは仕方ない。


 しかしその戦術眼といい、部隊の指揮能力といい、まさに百戦錬磨の勇将よ。

 儂も指揮能力にはそこそこ自信があったが、関羽どのの前ではかすんでしまう。

 それでいて、儂のような無名のジジイにも敬意を払ってくれるのだから、なかなかにできたお人よ。

 これも彼が兄者といって慕う劉備さまの、人徳の賜物かのう。


 そんな頼もしい主将に率いられ、我らはまず巴郡の江州を攻めた。

 そこそこ激しい抵抗にあったが、敵はしょせん寡兵。

 短期間に城を攻略したのだが、捕虜になった武将の中に、騒々しいのがおった。


「こらっ、貴様ら! この先に進みたければ、俺を殺してからにしろ!」


 厳顔げんがんという男だが、捕虜になったうえでこれとは、なんと厚かましい。

 今にもブチ切れた魏延が殺しかねなかったので、儂が相手をすることにした。


「どうせ若いのに負けても、納得はできんだろうから、儂が相手になってやる。ただし負けたら、おとなしくするのだぞ」

「フンッ、貴様なんぞに負けるものか! そりゃあっ!」


 さっそく斬りかかってきたが、関羽どのや趙雲どのに比べれば軽い軽い。

 適当に斬り結んでから、決着をつけてやったら、絶望的な顔をしておった。

 これ、そんなに落ち込むでない。


 そんな騒動もありながら、儂らは西漢水をさかのぼり、墊江てんこう、徳陽を経て成都へ迫った。

 途中、成都の近くでは敵の大軍と野戦になる。

 しかしただでさえ味方の方が数が多く、さらにこれだけの勇将・猛将に率いられているのだ。


 大した被害もなく、敵を撃退してのけた。

 そのまま敵は成都に籠もったが、大した数ではない。

 関羽どのは1万ほどの兵を押さえに置くと、儂らを周辺都市の制圧に振り向けた。


 フハハ、自由に動けるというのは、いいものだのう。

 幸か不幸か、歯ごたえのある敵はおらず、儂らは破竹の勢いで勝ち進んだ。

 そして周辺に味方はいないと分かった劉璋は、とうとう降伏したそうだ。


 う~む、まさか益州が、こんなに簡単に落ちるとは。

 いくら軍を率いる将が有能だといっても、それだけでは説明がつかん。


 ひとつには、情報というものを重視し、それを集めるだけでなく、操作する術に長けておることがある。

 徐庶や龐統、諸葛亮といった軍師たちが、それを見事に実践しておるわ。


 他には兵士の練度と士気の高さもあるな。

 なにしろ劉備さまの領地は治安がよく、不正も少ないのだ。

 それに兵役や労役に対しても、普通に報酬を出してくれるのだから、民にとっては大助かりだ。


 それまでのむしり取られるだけの生活になど、誰も戻りたくないからな。

 今の生活を守るため、兵も積極的に戦うのだろう。


 まさに劉備さまこそ、仁君と呼ぶにふさわしいお方である。

 しかしそれでいて政治というものを、ひどく冷徹に見ておられるので、危なげがない。

 ククク、この先、どこまで行くのか、楽しみだのう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【魏延】


 俺の名は魏延ぎえん 文長ぶんちょう

 荊州生まれの無頼者よ。


 俺は今までケンカばかりしてきて、ほとんど負けたことがなかった。

 やがてその腕っぷしが認められて、兵士としての生活が始まる。

 幸いにも兵士は俺に向いていたらしく、盗賊や反乱軍の討伐で、功績を挙げ続けた。


 気がつけばそこそこの地位になっていたのだが、そんな時に荊州が侵攻を受けてしまう。

 徐州牧 劉備の軍勢だ。

 劉備は江夏郡を取っただけでは飽き足らず、とうとう襄陽まで攻め寄せた。


 さすがに襄陽城は簡単に落ちないだろう、と思っていたのも束の間。

 わずか半月で落城し、劉表さまは降伏してしまったのだ。

 これでまたしがない兵士暮らしかと思っていたら、なんと劉備さまから仕官の誘いが掛かった。


「魏延 文長です。がんばります」

「おう、期待してるから、頑張ってくれよ」


 俺の無愛想なあいさつにも、劉備さまは笑って対応してくれた。

 あまり立派な人物には見えないが、今では3州にまたがる支配者だ。

 せいぜい顔を売っておくとするか。


 そのために俺が考えたことは、武力を見せつけることだ。

 高位の武官にケンカを、ゲフンゲフン。

 手合わせを申し込んで、俺の力を認めてもらうことにした。


 それでさっそく、関羽どのにお願いしてみたんだ。


「関羽どの。ぜひ、俺に稽古をつけてください」

「……よかろう。実力は知っておきたいからな」


 意外にあっさり受けてくれて拍子抜けしたが、これは好機だ。

 俺たちは刃を潰した矛を構えて、向かい合った。


「それでは参る! それっ」

「フンッ、そんなものか? もっと本気を見せろ」

「……ならば遠慮なく。うおりゃあ~っ!」


 その後、めっちゃ本気で攻めたんだけど、全然通用しなかった。

 なんだよ、あの化け物。

 強すぎだろう?


 ま、まあ、劉備軍の総大将だからな、彼は。

 関羽さまは別格ってことで、他に行ってみよう。


「張飛どの。お手合わせを願います」

「ああ? まあ、いいだろう」


 またまた武器を構えて向き合ったんだが……


「ふんっ!」

「ぐはあっ!」


 ぐええっ、またもや相手にされなかった。

 聞けば、関羽さまと義兄弟だって話だから、強いのも当たり前か。

 よし、この2人には逆らわないようにしよう。


 その後、張遼どの、趙雲どの、太史慈どの、甘寧どのにも、それぞれ手合わせをお願いした。

 だけど誰一人にすら、勝てなかったんだ。


 とりあえずまともに戦えるのは、黄忠の爺さんや、徐盛ぐらいだな。

 やべえ、俺ってこんなに弱かったのか?

 自信なくすぜ。



 しかしそんな俺にも、活躍の場が巡ってきた。

 劉備さまが益州への侵攻を決断したんだ。

 俺は真っ先に志願して、益州で戦いまくった。


 ワハハハ、やっぱり俺って、つえーじゃん。

 手柄もそこそこに立てられたぜ。

 これで俺の存在価値も……


 え、あんまり調子に乗るなって?

 はい、スンマセン。

 上には上がいますからね。

 謙虚にやります。

今までに出てきた武将の武力を数字で表すと、こんな感じですかね。

あくまで筆者のイメージであり、転生補正や忠誠補正なども掛かってます。


武力100:関羽、張飛

99   :呂布

95以上 :張遼、趙雲、太史慈、甘寧

90以上 :黄忠、魏延、孫策

85以上 :高順、李厳

80以上 :徐盛、紀霊、厳顔、張任

75以上 :劉備、陸遜

70以上 :曹操、陳到、周瑜

65以上 :陳登、淳于瓊、袁紹、袁術

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