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逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~  作者: 青雲あゆむ
第3章 荊州攻略編

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幕間: 袁紹は河北を制す

 俺の名は袁紹えんしょう 本初ほんしょ

 汝南袁家に連なる、俊才だ。

 我が袁家は、四世三公の名門である。


 その中でも俺は、早くから取り立てられ、清廉との評判を得ていた。

 何進大将軍の属官から始まって、侍御史じぎょし虎賁中郎将こほんちゅうろうじょうを歴任し、とうとう司隷校尉まで昇りつめたんだ。

 やはりできる男は違うな。


 しかし何進さまと共に、宦官を誅滅ちゅうめつしようとしたら、将軍を殺されてしまった。

 激怒した俺は、ただちに兵を率い、宮中へなだれ込んだ。

 幸い他にも誰かが動いたのか、宮中には火の手が上がり、混乱している。


「宦官どもを一人残らず捕らえろ。逆らう者は殺してかまわん!」

「「「ははっ」」」


 そこからは怒涛の勢いで、宦官を見つけて殺しまくった。

 そこには手違いもあったかもしれんが、やむを得ん。

 これは義挙なのだから。


 それに天子の身柄さえ押さえれば、なんとでもなる。

 そう考えていたのだが、事態は思うようにいかなかった。


「天子さまのお姿が見えません」

「なんだとっ! よく探したのか?」

「はっ、くまなく。どうやら誰かの手引きで、宮殿を抜け出したようです」

「ならばただちに城外を捜索しろっ!」

「はっ!」


 慌てて天子を探し回っていると、とんでもない事が判明した。

 なんと、洛陽に呼び寄せていた董卓が、天子を連れて入城してきたのだ。

 そしてヤツは天子を身近から離さず、その権威を笠に着て、朝廷を牛耳りはじめる。


 董卓は周辺の軍勢を掌握したうえで、洛陽を恐怖で支配したのだ。

 そしてヤツは司空になっただけでは飽き足らず、とうとう相国しょうこくを名乗りやがった。

 関中から出てきたような、礼儀知らずの田舎者がだぞ!


 その後、身の危険を感じたので、俺は洛陽を脱出し、冀州きしゅうへたどり着いた。

 そしたら董卓の野郎、俺を渤海郡ぼっかいぐんの太守に任命してきた。

 はっ、それだけ俺のことを、恐れてるんだろうな。



 やがて中原の各地で反董卓の火の手が上がると、俺はその盟主に担ぎ上げられた。

 俺ほどの名声があると、どうしても頼られてしまうからな。

 ところが、反董卓の旗を上げたはいいが、まともに戦おうとする者は少ない。


 それこそまともに戦ったのは曹操と、孫堅とかいう無頼者ぐらいらしい。

 まったく、だらしない奴らだ。

 結局、董卓を長安へ追い払っただけで、連合は瓦解してしまう。


 そこで俺は今後も生き残るために、勢力を広げることにしたのだ。

 今までは勝手に争えば、官軍に潰されるだけだったが、これからは違う。

 董卓にも漢王朝にも、そんな力はないことが、分かってしまったからな。


 この先は力ある者だけが生き残る、乱世になるんだ。

 そして俺は最強の勢力を築いて、この中華を手に入れてやろうじゃないか。

 そのためにはまず、冀州を手に入れることだな。


 俺は部下の進言を受けて、公孫瓚こうそんさんが冀州を襲うよう、誘いを掛けた。

 すると公孫瓚はまんまと攻め入ってきて、冀州牧の韓馥かんふくを打ち負かす。

 これで弱気になった韓馥を説得(脅迫)したら、快く地位を譲ってくれたわけだ。

 フハハ、これも日頃の行いの良さのおかげだな。



 こうして大きな基盤を得た俺は、さらに勢力の拡大を図ったのだが、そこに立ちはだかったのが公孫瓚だ。

 ヤツは周辺の黄巾賊を討伐し、河北に大きな勢力を築きつつあった。

 そして初平3年(192年)になると、公孫瓚は本格的に冀州へ侵攻してきやがったのだ。


 俺も負けてはならじと、界橋でヤツを迎え撃つ。

 敵は”白馬義従”とかいう騎兵を中心に、突撃を掛けてきた。

 幸いにも遊牧民の戦法に詳しい麹義きくぎのおかげで、これをあっさりと殲滅できた。


 ワハハハハッ、これも俺の人徳だろうな。

 その後、危ない場面もあったが結局、公孫瓚の軍は敗走し、幽州へ逃げていったのだ。


 ちなみにこの頃、長安で董卓が殺されたそうだ。

 配下の呂布に、裏切られたらしいな。

 ざまあみろ、田舎者め。


 なんにしろ、これで俺が天下を取る可能性が、また高まった。

 じっくりと勢力を広げよう。


 その後、公孫瓚や黒山賊とやり合っているうちに、天子が長安を脱出し、洛陽へ向かっているとの知らせが入った。

 その対応について配下に相談すると、まず沮授そじゅが進言してきた。


「天子さまをこのぎょうへお迎えしてはいかがでしょうか? 天子さまを擁して天下に号令すれば、これに協力しない者を討つことも、決して難しくはありませぬ」

「ほほう、たしかにそれは良さそうだな」


 ところが郭図かくと淳于瓊じゅんうけいが、それに反対するのだ。


「いえ、漢王朝は衰退して長く、これを再興させるのは困難でしょう。もし天子さまをお迎えしても、いちいちお伺いを立てねばなりません。それは袁紹さまのお力を弱めるばかりか、背けば逆賊となってしまいますので、決して良策ではありません」

「それがしも反対です」

「ううむ、それも一理あるな」


 言われてみれば、いいことばかりではないな。

 下手に天子を担いだりすれば、それはそれで自分を縛ることになる。

 その後も沮授にはしつこく進言されたが、今の天子は憎き董卓に擁立された劉協りゅうきょうなのだ。

 結局、俺は天子にお伺いを立てることもせず、様子見をした。


 するとその隙を突いて、曹操が天子を豫州に迎えたという。

 ならばお手並み拝見と、高みの見物をきめこんでいたのだが……


”袁紹は広大な領地と多くの兵を持っているが、勝手に官職を任命し、ただ欲しいままに戦闘を行っている。とても勤王の士とは呼べない有様だ”


 朝廷から詔書しょうしょが送られてきたと思ったら、こんな感じで俺を責める内容だった。

 そこで弁明の書状を送ったのだが、そうしたら朝廷が俺を太尉に任命してきた。

 しかしそれは、大将軍である曹操の下に、俺が付くということだ。


「俺は今まで何度も曹操を助けてやった。それなのに今になって、天子を間にはさんで俺に命令するなど、我慢できんわっ!」

「しかし袁紹さま、これは勅命でありますれば」

「かまわん! 周辺の賊との戦いで忙しいので、そのようなお役目はお受けできんとでも言って、断っておけ」


 頭に来たので断ってやったら、曹操もまずいと思ったのだろう。

 自ら大将軍の座を辞して、俺に譲ると言ってきた。

 ふんっ、まあいい、それなら受けてやろうではないか。



 その後もいろいろとあったが、建安4年(199年)にとうとう俺は公孫瓚を討ち倒した。

 易京えききょうで敗れたヤツは、自害したそうだな。

 これで俺は幽州ゆうしゅう并州へいしゅう冀州きしゅう青州せいしゅうの河北4州を支配することとなる。


 その先はいよいよ、曹操と雌雄を決する時だな。

 俺は配下を集めて、今後の方針を相談した。


「河北の4州はここに治まった。このうえは曹操と雌雄を決するべきと思うが、どうか?」

「私は反対です。今は民心を慰撫しながら、農業に励むべきではないでしょうか」

「私もそう思います」


 すかさず沮授そじゅ田豊でんほうが反対すると、審配しんぱい郭図かくとが進み出た。


「私は賛成です。今こそ曹操を討伐する時でしょう」

「そうですな。いたずらに時を費やせば、敵がさらに強大になってしまいます」

「う~む、俺もそう思うのだが……」


 意見が真っ二つに割れたことに迷っていると、沮授がさらに進言する。


「天子さまを擁する曹操を攻撃するのは、道義的に問題があります。それに今の曹操は兗州と豫州を支配しており、その兵は精強。さらには徐州や揚州も恭順していると聞きますので、あまりに危険かと」

「だからといって、手をこまねいていては、曹操はさらに強大になってしまいますぞ。その先に待っているのは、我らの滅亡でしょう」

「それはたしかに一理あるが……それでは袁紹さま。まずは黄河に沿って、守りを固めましょう。そのうえで支配地の統治を固めつつ、打って出るのです。くれぐれも軽挙妄動がなきよう、指示をしてくだされませ」

「うむ、それもそうだな」


 結局、沮授も郭図の言い分を認め、消極的な攻勢に出ることになった。

 たしかに曹操の陣営は強大に見えるから、あまりうかつなことはできない。

 そこで俺は、まず黄河沿いの拠点を固めることにしたのだ。



 その後、十分に準備を整えてから、河南に打って出た。

 しかし曹操は想像以上に兵を集めており、さらに江東から援軍まで呼んだという。

 おかげで攻めきることは叶わず、逆に淳于瓊を討ち取られる始末だ。


 結局、我が軍は河北に後退し、守りを固めざるを得なかった。

 しかしこちらも完全に負けたわけではない。

 いずれ反撃して、目にもの見せてくれるわ。

曹操が史実よりも強大になってるので、袁紹も慎重になっているというお話。

ちなみに公孫瓚の討伐に貢献した沮授ですが、史実では郭図たちの謀略で失脚させられます。

しかし本作では、内輪もめしてる余裕がないので免れたという設定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 内輪揉めしてる余裕がない!でもやっちゃう!のが人類クオリティだと思うw
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