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逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~  作者: 青雲あゆむ
第3章 荊州攻略編

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幕間: 孫策と周瑜

 俺の名は孫策そんさく 伯符はくふ

 さきの長沙大守であり、破慮将軍にもなった孫堅の長男だ。

 親父は腕一本で成り上がった、凄い男だったんだぜ。


 あいにくと劉表との戦で、おっんじまったけどな。

 だけど男として生を受けたからには、あんなふうに成り上がりたいもんだ。

 幸か不幸か、董卓のおかげで漢王朝は混乱している。


 これなら俺にも好機が巡ってくるんじゃないかと思い、戦いに身を投じることにした。

 とはいえ、親父亡き今の俺には、大したコネも軍勢もありはしない。

 そこで親父が世話になってた、袁術を頼ることにした。


 幸いにも袁術は俺を気に入ってくれて、その配下として働きはじめたんだ。

 俺は九江や廬江なんかでバリバリと戦って、戦功を積み上げた。

 あいにくと袁術は、それらしいことを言いながらも、重職を任せてはくれないんだけどな。


 それならってんで、今度は呉景ごけいおじさんや孫賁そんほん兄さんと一緒に、江東を攻めることにした。

 ついでに親友の周瑜しゅうゆまで駆けつけてくれたんで、俺は勇気百倍だ。

 いろいろと策をめぐらして、揚州牧の劉繇りゅうようを追いこんでいった。


 やがて丹陽の北部から敵を追い出して、呉郡を攻めようとした。

 そしたら劉繇のヤツ、あっさりと逃げ出しやがったんだぜ。

 まったく、拍子抜けするな。


「ハハハ、皇族の末裔とか言いながら、さっさと逃げ出すなんて、笑っちゃうな」

「たしかにそうだけど、気をつけた方がいい。噂によると、徐州に逃げたらしいからね」

「揚州のどこかならまだしも、隣の州に逃げたんだぜ。余計に恐れる必要はねえと思うけどな」

「いや、徐州に逃げたってことは、劉備が後ろ盾になった可能性が高いんだ。むしろ厄介になってると思うよ」

「劉備? そんなヤツ、棚ボタで徐州牧になっただけで、大したことないって噂だぜ」

「いいや、彼が州牧になってから、徐州は安定しつつあるんだ。大したことないはずがない」

「ほ~ん、そんなもんかねえ」


 俺が劉繇を嘲笑っていたら、周瑜に注意された。

 それも劉繇の味方に、劉備が付いたからだってんだ。

 たしかに隣の州牧が後ろ盾となれば、油断はできないかな。


 しかしこっちは破竹の勢いで勝ち進んでるんだ。

 このまま一気に、呉郡も制圧してやろうじゃないか。



 その後、順調に呉郡を制圧していたら、丹陽との連絡が途絶えた。


「大変ですぞ、孫策さま。丹陽郡の北部が劉繇に奪われました」

「なんだと?! どこからそんな兵力が出てきたんだよ」

「おそらく、徐州かと」

「マジか? 劉備はそこまでするのかよ……」

「そればかりではありませんぞ。劉備が寿春に向けて、進軍を開始したとの噂も入っております」


 それを聞いて俺は、愕然とした。

 劉備の企みが見えたのだ。


「くそ、そういうことか。劉繇に丹陽を取らせておいて、自分は九江郡を制圧するつもりなんだ」

「はい、どうされますか? ただちに全軍を、九江郡へ向けましょうか」

「……いや、それは悪手だ。下手をすると周辺の豪族が、一気に敵に回りかねない。俺たちは呉郡の制圧を優先しつつ、丹陽の様子を探ろう。偵察を出してくれ」

「かしこまりました」


 こうして俺たちは、呉郡の攻略を進めながら、丹陽郡の様子を探った。

 すると案の定、劉繇は守りを固め、俺たちを待ち構えているという。

 しかも軍の指揮を執っているのは、偵察中にやり合ったことのある太史慈だってんだ。


「なんで太史慈が指揮を執ってるんだ?」

「分かりません。しかしこの者、かなりの強者らしく、丹陽の攻略にも大きく貢献している模様です」

「チッ、これじゃあ、袁術さまの援軍は期待できねえし、呉郡の制圧にも集中できないな」

「はい、当面は守りを固めつつ、丹陽の隙をうかがうしかないかと」

「くそっ、こんな形で邪魔をされるとはな……」


 その後、袁術から援軍要請がきたが、とてもそんな余裕はなかった。

 そのまま丹陽を攻めあぐねていると、とうとう寿春が落ちたという話が伝わってくる。

 馬鹿な、袁術が負けたってのか?


 さらにさほど間をおかず、思わぬ来訪者があった。


「周瑜、袁術さまは本当に負けちまったのか?」

「ああ、寿春は劉備さまの軍に落とされ、袁術さまは冀州きしゅうへ落ち延びたそうだ」

「そうか……ということは、俺にも降伏しろって話か?」


 すると周瑜はニコリと笑いながら、予想外のことを告げる。


「フフフ、そうじゃないんだ。劉備さまは、君と劉繇の和解を取り持ちたいと言うんだ。私はそのための使者さ」

「お、俺と劉繇の和解だと? そんなこと、できるのかよ?」

「ああ、それだけじゃない。劉備さまは君が条件を飲めば、将軍に上奏してくれると言うんだ。しかも呉郡の統治まで、任せてくれるそうだ」

「俺が将軍!……なあ、俺はからかわれてるのか?」


 あまりに都合の良い話に、俺は周瑜を問いただす。

 しかし周瑜は真面目な顔で、それを否定した。


「たしかに信じられないかもしれないけど、これは本当のことなんだ。どうやら君の武勇を、けっこう買ってくれてるみたいだね」

「そ、そうなのか? そう言われると、悪い気はしねえな」


 結局、俺は劉備の提案に乗る形で、話を進めた。

 そしたら本当に劉繇との和解が成立し、俺は明漢将軍に任命される。

 さらに配下の朱治が呉郡太守になることで、呉の支配権も手に入れた。

 ちょっと信じられないような厚遇である。


「これで俺も、親父と似たような地位になったわけだ。そして俺はまだまだ若いから、これ以上もあるよな」

「ああ、だけどそのためには、いろいろと勉強したり、力も蓄えなければね」

「そうだな。今後もよろしく頼むぜ、相棒」

「フフフ、もちろんさ」


 その後は呉郡の支配者として、全力で仕事に取り組んだ。

 しかしそれは思った以上に、大変なことでもあった。


 戸籍の管理に税の徴収。

 兵力の増強に治安の維持と、やることはてんこ盛りだ。

 それなのに人手がまるで足りなくて、俺たちは休む暇もない。


「だ~~っ! なんでこんなに人手が足りねえんだよ?!」

「それは君にも、分かってるだろ。今は地道に実績を挙げて、名士の信頼を得るしかないのさ」

「それは分かってるけどよう……」


 くそう、失敗したなぁ。

 今の俺は、廬江で陸康りくこうを死なせたせいで、名家にそっぽを向かれちまってるんだ。

 まさか過去の行いが、こんな形で降り掛かってくるとは。

 まったく、悪いことはできねえもんだ。


 しかしここはこらえて、地道にやるしかないな。

 そしていずれは……



 そう考えてまじめに仕事をしていたら、思わぬ話が耳に入ってきた。


「劉備が江夏郡を制圧しただと?!」

「それだけじゃないよ。事実上、長沙や零陵、桂陽も傘下に入ってるらしいんだ」

「マジかよ! 大躍進じゃねえか」


 徐州牧の劉備が、荊州に攻め入ったとは聞いていた。

 その際、援軍を申し出てはみたんだが、丁重に断られた。

 しかし江夏郡には黄祖って武将がいて、そう簡単には落とせないはずだったんだ。


 だからいずれ援軍要請がくると思ってたのに、わりと短期間で制圧しちまったという。

 しかも長沙や零陵、桂陽まで手に入れただと?

 くそっ、うらやましいじゃねえか。


「おい、周瑜。俺はどうすればいい?」

「基本的には今までと変わらないさ。だけど兵力の増強に注力して、曹操に接触を持とうか」

「そんなんで、どうにかなるのかよ?」

「たぶん中原では、いずれ大きな戦いが起きる。そこに加勢して、見返りを得るのさ。たとえば江東での利権とか、軍事的な指揮権とかね」

「なるほど。そいつは可能性がありそうだな。よし、さっそく取り掛かろうぜ」

「フフフ、やる気になってくれて、よかったよ」


 ああ、そうだ。

 俺にだってやれるってことを、見せてやろうじゃねえか。

 腕が鳴るぜ。

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[良い点] ハイペースで領土増やしてて面白い [気になる点] 劉備の領土細長すぎない?
[良い点] 何となく開いてみたら思いのほか面白かったです。 一見、ご都合主義に見えますが光栄の三国志のゲームプレイにシナリオを当てたようで違和感なく読めます。 主人公劉備の性格が横山光輝じゃなくて杜康…
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