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逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~  作者: 青雲あゆむ
第2章 揚州攻略編

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幕間: 追い詰められた袁術

 儂の名は袁術えんじゅつ 公路こうろ

 四世三公で名高い、汝南袁家の嫡男よ。


 若い頃は任侠にんきょうを気取って、ヤンチャをしていた時期もあったのう。

 しかし従兄弟の袁紹がでかい顔をするようになってきたので、儂もちょっと本気を出すことにしたんじゃ。

 そしたら郎中ろうちゅうから始まって、すぐに虎賁中郎将こほんちゅうろうじょうにまで出世したわい。

 儂が本気を出せば、こんなものよ。


 そうこうするうちに、霊帝が崩御なされ、劉弁陛下が天子に即位した。

 ところがここで大将軍 何進かしんと宦官の権力争いが激化し、一気にきな臭くなる。

 とはいえ、何進将軍が勝つのだろうと思っていたら、逆に殺されてしまったんじゃ。


 これに焦った我らは、宮殿の一部に火を掛け、宦官をいぶり出すことにした。

 そしたら袁紹めが宮中に踏みいり、宦官の虐殺を始めてしまう。

 そんなことして大丈夫かと思ったが、儂も指をくわえているわけにはいかん。


 儂も一緒に宦官を殺して回ったら、まあひどいことになってしもうた。

 別に天子さえ押さえれば、どうとでもなると思っていたのだが、なんと天子を見失ってしまったんじゃ。


 そこで必死に探していたら、天子は董卓に保護されていることが判明する。

 その時の儂らの驚きや怒りときたら、言葉にもできんわい。

 儂らが宮中を改革するために働いたのに、関中の田舎者がぎょくをさらっていったんじゃからな。


 董卓めはがっちりと天子を握って洛陽に入城し、我がもの顔に振る舞いだした。

 一応、殊勝なふりはしておるが、その武力にものを言わせて、朝廷を牛耳りおったんじゃ。

 さらにヤツは図々しくも、司空の地位に就きおったんじゃぞ。


 しかしさすがにヤツも、我ら名士の協力がなければ、何もできぬ。

 我らが推薦する名士の多くが、太守や刺史の地位に就くことができた。

 この儂にも、後将軍こうしょうぐんの地位を寄越したぐらいじゃ。


 まあ、儂は天下の袁家の正嫡だからのう。

 これぐらいの配慮は、当然であろう。


 そう思っていたんじゃが突然、董卓が劉弁陛下の廃位を言いだした。

 理由はあれこれ言っているが、結局は何皇后の影響力を排除したいんじゃろう。

 その場は適当に口を濁したが、儂の周囲も次第にきな臭くなってくる。


 このままでは命も危ういと思い、儂は思い切って洛陽を脱出したのじゃ。

 そして南陽郡で様子をうかがっていると、やがて董卓の横暴に対し、反抗の火の手が上がった。

 陳留郡の酸棗さんそうで、張邈ちょうばく張超ちょうちょう劉岱りゅうたい橋瑁きょうぼうらが決起したという。


 さらに董卓を非難し、義兵の決起を望む3公の文書まで回ってきた。

 これはいい。

 これを根拠に、儂も兵を挙げようではないか。


 しかし儂だけでは心許こころもとないので、南陽郡の兵を糾合することにした。

 そしたら都合のいいことに、長沙大守の孫堅が、南陽太守の張咨ちょうしを始末してくれたんじゃ。

 おかげで南陽の支配が円滑に進んだわい。


 孫堅は反董卓連合に加わりたがっていたので、儂の配下として参加を認めてやった。

 こいつがなかなかに使える男で、一時は董卓を追い詰めるところまでいく。

 しかし反董卓連合として決起したはずの各勢力は、ダラダラと時間をムダにするばかりで、攻撃に加わろうとしない。


 それどころか董卓が長安へ逃げると、連合は瓦解してしまったんじゃ。

 まったく、袁紹のヤツもだらしない。


 こうなったら儂が本気を出して、この中原を制覇してやろうかのう。

 なにしろ董卓には、我が一族を殺されておる。

 (注:自業自得である)

 ここは儂が中原の覇者になって、復讐してやろうではないか。


 そう思って意気込んだはいいが、いきなり孫堅が死んでしまった。

 劉表との戦いで一騎駆けをして、やられたそうじゃ。

 なんとふがいない。


 しかもその後は不幸続きで、あまりいいことがなかった。

 戦況を盛り返そうと曹操に挑めば、大敗して揚州まで逃げ出す始末。

 まあ、それでも寿春を手に入れて、軍勢を立て直したのだから、儂もまだまだ捨てたものではないがのう。


 さらに九江郡や廬江郡を攻略する中で、今度は息子の孫策が仕官してきおったわい。

 ワハハッ、これも人徳かのう。


 そうこうするうちに、徐州の噂が耳に入ってくる。

 徐州では先代の陶謙が死に、劉備という男が州牧に就任したという。

 しかしこの男、曹操の撤退で棚ボタ的に勝利を手にしただけで、大したことはないようじゃ。


 そのくせ上手いこと豪族を味方につけ、甘い汁を吸っているらしい。

 袁紹や曹操がそれを黙認しているということは、裏で手を握っているようじゃな。

 つまり儂の敵じゃ。


 ならば徐州に侵攻して、その果実を奪い取ってやるわい。

 幸いにも江東は孫策が有利に戦を進めておる。

 この好機に徐州へ侵攻じゃ!


 そう思って2万もの軍勢を率い、徐州へ攻めこんだ。

 しかし盱台くいの城で、頑強な抵抗を受けてしまう。

 これは予想外じゃ。


 さらにモタモタしているうちに、劉備が援軍に駆けつけてきた。

 しかしその数は我が軍の半分以下なので、大したことはないじゃろう。


 そう楽観しておったら劉備のヤツめ、強気で攻めてきおった。

 しかも先頭に立つ武将がやけに強く、こちらが苦戦しているようじゃ。

 おのれ、出自も定かでない、下民の分際で。


 しかしこちらも負けてはおらんぞ。


紀霊きれい。ちょっと行って、あの武将を倒してこい」

「ははっ、お任せを。この紀霊の力、奴らに見せつけてやりましょう」


 そこで儂は配下で最強の紀霊を、送り出してやった。

 劉備ごときの軍勢なら、ヤツに敵う者などおらんであろう。

 一騎打ちで敵の士気をそいでおいて、一気にたたみ掛けてやるわ。


 む、やけに粘りおるな。

 紀霊を相手に、よくやるではないか。

 ややや、なんと紀霊が負けてしまった。


 まずいではないか。

 おのれ、劉備め。

 ずるいぞ、そんな武将を隠し持っておって。


 しかも奴ら、ここぞとばかりに攻めてきおった。

 なんとしても防ぐのじゃ。


 ぐぐぐ、いかん、兵が完全に怖気づいてしまった。

 仕方ない、一時撤退じゃ。

 寿春まで戻るのじゃ。


 くそう、劉備め。

 絶対にこの借りは返してやる。




 その後、寿春に戻って守りを固めていると、劉備は攻めてこなかった。

 そのまま攻めてくれば、迎え撃ってやったというのに。


 その一方で、江東では孫策が支配地を広げているそうじゃ。

 いずれは戦力を整えて、劉備に復讐してやるわい。




 何? 制圧したはずの丹陽郡を、劉繇りゅうように取り返されただと?

 あやつ、まだ生きておったのか。

 くそっ、上手くいかんのう。


 なんじゃと?

 今度は劉備の軍勢がこの寿春に迫っておる?

 大至急、周辺の豪族に兵を出させよ。


 何、兵が集まらん?

 なんでじゃ?

 劉備と劉繇が連合しているので、豪族どもが様子見をしているじゃと。


 おのれ田舎者どもめ。

 この汝南袁家の直系である袁術さまが、劉備ごときに劣るとでも言うのか!


 ええい、仕方ない。

 今ある軍勢で、城に立てこもるのじゃ。

 我らが健在であることを示せば、いずれ豪族どももすり寄ってくる。



 そう思っておったが、甘かった。

 兵の脱走が止まらんのじゃ。

 こうも簡単に敵の扇動に乗せられるとは、なんと愚かな兵士どもか。

 しかしこのままでは、いずれ攻め滅ぼされるぞ。


 くそっ、仕方ない。

 城の明け渡しを条件に、無事に退去できるよう、交渉するしかないか。


 おのれ、劉備め。

 いつか吠え面かかせてやるわ!

 覚えておれよ~!

はたして袁術に復活の日はくるのか?(棒読み)

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