64:<郭嘉編/落陽再び2>
曹洪と合流後、郭嘉は曹仁と共に張楊の元へ
曹洪が陣を敷いていたのは洛陽からほんの一日ほどの距離の場所だった。陣営近くの城市を落としたが、その先の城市に董承が拠っていてなかなか進めなかった、というのが郭嘉が許を出発する前の話だ。
郭嘉たちが曹洪の陣に到着したころには、その董承がいたという城市を落としていてもいいはずだったが、曹洪はまだ動いていなかった。
それどころか……
「なんか……駄目だな、これ」
陣の外から見てもわかる兵の弛緩ぶりに郭嘉は眉をひそめた。見張りもきちんと仕事をしていないように見える。
「先ぶれ出してからきたのにこれはちょっと……」
滞陣が長引いて気が緩むのはわかるが、緩みすぎだろう。普通なら援軍が来るとわかっていれば少しは緊張して迎えるものだが、その迎える様子にも覇気がない。
「補給の問題とかですかね?」
「いえ、違います」
隣にいた曹仁に言うと、彼は小さく首を振ってから、いきなり大声を張り上げた。
「貴様ら!! なんだその体たらくは! 曹操軍の兵としてあるまじき締まりのなさ! 総員整列! 何をぼさっとしている! ここにいない者もすべて呼んで来い! 一刻以内だ! いいな!?」
いきなり曹仁が怒鳴ったので、郭嘉は思わず首をすくめていた。耳を覆いたくなるような大声だ。
しかし、その怒鳴り声への反応は薄い。曹洪の兵は曹仁が誰かわかっていないのか、どうする、とばかり互いに顔を見合わせている。
「何をしている! この曹子孝の言うことが聞けぬとでもいうのか!? 早くしろ!一刻に間に合わぬ隊は懲罰を課す!!」
そこまで聞くと、さすがに兵士たちは慌てた様子で走り始めた。
――すご……。
何人かの武将と一緒にいたが、こんなふうに兵士に対する武将はあまりいなかった。
迫力に気圧されて呆然と見ていると、曹仁は周囲を見回してあからさまに顔をしかめた。
「曹揚武中郎将(曹洪)はどうした」
叩きつけるような声音だ。言われた兵は位の高そうな兵だったが、すっかり恐縮して言った。
「そ、その……中郎将は、お、お休み、かと」
兵が答えた瞬間、曹仁の頬が思い切りひきつる。
「こんな昼日中まで寝ているとはどういう了見だ!? 今すぐお連れしろ!」
がなる曹仁に、兵は困ったように両手を地面につき、深く頭を垂れた。
「そ、それが、その、中郎将は決して幕舎に入ってはならぬと皆に申し付けておりまして……許されていますのはほんの数人しかいません。その方々もおおむね一緒に幕舎に侍られておりますので、その、我らには、どうすることも……」
「なんだと!?」
曹仁はまたがなると、今度は大仰にため息をついた。
「えーと、どういうこと? 揚武中郎将って曹洪殿のことだよな? なんで幕舎に籠ってるんだ? 体調でも悪いとか?」
郭嘉が問うと、兵は何と答えたものか迷うように郭嘉を見、曹仁を見、そしてまた平伏した。
どういうことだ。
曹仁を見上げると、彼はあからさまに舌打ちして馬から降りた。
「洪兄を連れてまいります」
「え、それなら俺も行きますよ」
曹仁が一瞬眉をひそめ、考える様子を見せる。郭嘉が首をかしげると、彼はまあいいだろうとばかりうなずいた。
「そうですね、郭軍師にもご覧いただいた方がいいかもしれません」
案内を、と言うと、兵士は慌てて立ち上がった。
兵について陣営の奥へと向かう。曹洪がいるという幕舎の前には、そこだけ妙に真面目そうな兵がいた。
「止まれ! 中郎将はお休み中だ! 誰も近づけるなと――あっ」
見張りの兵は曹仁を知っていたようだ。曹仁を見るなり顔色を変え、大きな体を縮こまらせた。
「入るぞ、いいな」
曹仁の言葉に、兵はいいとも悪いとも言わず、縮こまったまま、すたすたと幕舎へ進む曹仁を見送っている。その兵を横目で見て、郭嘉もまた曹仁の背を追った。
曹仁が幕舎の入り口の幕を乱暴にめくる。途端に聞こえてきた男女の笑い声と漂ってきた酒臭で、中で何が行われていたのかはすぐに郭嘉にもわかった。
「洪兄」
地の底まで響きそうな曹仁の低い声に、座は一瞬にして静まり返った。
幕舎の中には曹洪をはじめとして、何人かの男たちと、どこから連れてきたのか数人の女がいた。乱痴気騒ぎとまでいかなくとも、周囲には酒器が散乱し、着飾った女たちが傍に侍っているあたり、何をしていたのかは大体想像がつく。
「……子孝」
曹洪が呆然と半笑いでつぶやく。曹仁はそれには応えず、すたすたと幕舎の中へ進むと、そばに転がっていた酒器を思い切り蹴り飛ばした。
「貴様ら! 一体どういう了見だ! 洪兄がふざけたことをするならそれをお止めするのが臣下の務めだろうが!! それを一緒になって馬鹿をやっていてどうする!! そもそも――」
曹仁が延々がなるのを聞いていると、どうやら曹洪と一緒に酒宴に興じていたのは曹洪の子飼いの将のようだ。彼らは真っ青になってすぐさまその場で平伏した。
幕舎の中で唯一平伏しなかったのは曹洪だが、彼は半笑いで怒鳴り続ける曹仁から目をそらしている。逃げ場でも探しているのか視線をさまよわせていたが、郭嘉と目が合うなりぱっと表情を変えた。
「奉孝~! お前もいたんだな、いや、心強い! なんせ都の周りは帝の寵を争う狸ばっかりでさぁ」
はあ、と郭嘉が胡乱な返事をすると、曹洪は郭嘉ににじり寄ってきて、頼む、とばかり耳元でささやいた。
「見逃してくれよ。俺ここまでこんなに城市落としてきたんだぜ? 少しくらいハメ外しててもいいだろ?」
「いや、それとこれとは別……つーか、なんで目の前の城市落としてないんですか。獲れたでしょ」
「いやほら、下手に城市落とすと色々面倒だろ? 文官手配しなきゃだし、現地の連中を雇うにしても裏切らないか見張ったりしなきゃだし~。そんならお前らが来たらきっと文官もいるだろうから、そいつらにやってもらった方が楽かなってさ」
「楽って……」
郭嘉と曹洪が話している間も、曹仁の説教は続いている。しかし彼は曹洪の部下に怒鳴るばかりで、当の曹洪本人には目もくれない。
――目上の親族だから強く出られないとかか?
郭嘉が眉をひそめて曹仁を見ていることに気づいたのだろう。曹洪はにやりと笑って言った。
「子孝が俺じゃなくて俺の食客を怒鳴りつけるのはいつものことさ。あれはあいつ流の嫌味なんだよ。ま、その内――」
「洪兄」
どすの利いた声が幕舎に響き、へらへら笑っていた曹洪が瞬時に口をつぐんだ。
「洪兄、このような役立たずどもはさっさと始末してしまってはいかがか? 先陣で酒宴にふけり、主を諫める能もないような者ども、斬って捨てたほうがよろしい。外で洪兄の所業を苦々しく思っている兵たちの前で首を刎ねれば、いい士気の高揚になりましょうぞ」
「まてまてまて、悪かった、悪かったって!」
曹洪は剣を抜いた曹仁に慌てて駆け寄ると、曹仁の持った剣を抑えた。
「俺が悪かった! すこ~し気が緩んだだけだって。だってほら、ここまで来たんだぞ? 洛陽目前のところまで! 大変だったんだからな!?」
「大げさな。そんな台詞は洛陽に着いてから言っていただきたい」
「子孝は厳しいな~」
「ともかく、一度外で閲兵を行いますぞ。だらけるにもほどがある!」
曹仁はそう言うなり曹洪の腕を掴み、つかつかと幕舎を出て行く。郭嘉は幕舎の中で平伏したままの食客たちを一瞥して、その後を追った。
その後、兵を整列させて曹仁が檄を飛ばした。そこには曹洪も同席して、一応兵は規律を取り戻したように見えた。
「ここから俺たちは張楊のところに行きたいんですけど、このまま子廉殿に陣を任せていいのかどうか……」
また酒宴でも始める可能性がないとは言えない。
じっと曹洪を見つめると、まさか~と曹洪が笑って肩をすくめた。
「そんな目で見るなよ~。俺はちゃぁんとここまで城市落としてきたんだぞ? 遊んでばっかなわけないだろ?」
「……まあ、そうなんでしょうけど。子孝殿、どう思います?」
曹仁は表情の読めない視線で曹洪を見遣った後、郭嘉に向き直った。
「ここは洪兄の陣。洪兄に預けるのがよいでしょう。今度ふざけたことをすればあの能無しどもの首を刎ねればよいこと」
「子孝~」
勘弁してくれよ、と曹洪が声を挙げる。
「わかりました。じゃ、子廉殿、よろしくお願いします。俺は子孝殿と一緒に野王にいる張楊のところ、行ってきますんで。帰ってきた時また同じことになってたら、殿に言って指揮官交代ですね」
「さすがにそこまでするわけないだろ、わかったわかった」
軽く必要なことをやりとりして幕舎を出ると、曹仁がぺこりと郭嘉に頭を下げた。
「郭軍師、ありがとうございます」
「えっと、何が?」
「引き続き洪兄に陣を任せてくださったので。洪兄はいささかいい加減なところはありますが、やるときはやる男ですので大丈夫だとは思います。しかし郭軍師は洪兄をよくご存じないはず。それでも任せていただけたので」
「俺に指揮官とっかえる権限なんてないですよ。でも、子孝殿が子廉殿に任せろって言うんだ。大丈夫でしょう。任せてやばそうなら、子孝殿はそんなこと言わないでしょうからね」
曹仁が身内に甘いなどということはないだろうと思える。郭嘉の言葉に、曹仁は礼を言いながらまた頭を下げていた。
張楊がいるという野王へは、一旦洛陽への街道を進み、途中で北へ進路を変えることになる。以前洛陽へ行ってからもう数年経っている。どうなっているかの興味もあって、郭嘉はついでにと洛陽へ足を延ばしてみたが、そこは相変わらずすすけた廃墟でしかなかった。違うところと言えば、雑草が生い茂り、より人の気配がしなくなったくらいのものだろう。
「帝が洛陽に帰りたがってるって本気かよって感じですね」
「現状がわかっていない可能性もありますな。洛陽が燃やされる前の記憶しか、帝にはないのかもしれません。焼けたと言っても大したことはないとでも思っている可能性も」
「ですね」
仮に戻ってきたところで、この廃墟を元に戻すには相当な時間と労力が必要になるだろう。その金や物資を誰が出すのか。朝廷にまともな徴税の能力があるとも思えない。
曹操が帝を許へ連れて行こうというのなら、洛陽は荒れたままがいいだろう。よそへ遷都する理由にもなる。仮に洛陽を復興ということになっても、それが曹操の手によるものになれば、帝は曹操を重用せざるを得なくなる。ならば、現時点で洛陽には手を付けないのが得策だ。
郭嘉たちはすぐに洛陽を後にし、野王へと向かった。
野王に到着すると、案外好意的に迎えられた。先ぶれが出してあったせいもあるだろうが、城門をくぐるところから張楊に会うところまで、全く問題なく進んだ。
「これは、よく来てくださった。お待ちしておりましたぞ」
府の広間で迎えた張楊は、人のよさそうな印象の男だった。
「いや、先だっては使者の通過をお断りしてしまい、申し訳ありませんでしたな。あの頃は曹将軍のことをよく存じ上げず。曹将軍の御高名を聞き及び、それで考えを改めたのです」
白々しい、と普通なら思うところだが、張楊の声音に嘘は感じられなかった。もしかしたら本気でそう思っている可能性もあるかもしれない。
郭嘉は拱手し、持ってきた供物を従者に捧げさせた。
「こちらこそ、丁寧な書簡を頂き光栄に存じます。かねてより我が主曹孟徳は陛下の窮状を憂いており、張将軍からのご連絡は大変ありがたいものでした。主は、喜んで陛下の窮状をお救いすべく協力申し上げると申しております。こちらに返礼の品がございますので、どうぞお納めください」
来る前、荀彧にしつこいくらい叩き込まれた口上と所作で頭を下げる。張楊は満足そうに笑顔でうなずいていた。
「これはこれはご丁寧に痛み入る。ついては、さっそく一つお願いしたいのだが、よろしいかな? 実は私はつい先日安邑からこちらへ戻ってきたばかりなのだ。彼の地では、陛下が洛陽に戻りたがっておられるというのに、臣下たちは権力闘争に明け暮れるあまりその陛下のご意志を無視しておる。しかし、情けないことに、私にはそういった連中を抑え込めるだけの力がなくてな……」
張楊が嘆息して、ひげをさすった。
「私はこれから、糧食を持って安邑へ向かおうと思っておる。ただ、悲しいかな、私がただ陛下へと糧食を献上すれば、それは陛下の周りにいる佞臣どもの懐に入っておしまいだ。だが、陛下が食べるにさえ困るような状況がいつまでも続くなどあってはならぬこと。なんとか陛下に食料を届け、陛下を洛陽までお連れしたいのだ。それに、力を貸してはもらえないだろうか?」
「それは由々しきことですね。もちろん、助力はさせていただきますが……。失礼ながら、張将軍は、洛陽の現状はご覧になりましたか? 先日我らも見てまいりましたが、今やすっかり廃墟です。洛陽に戻る意味があるのかどうか……」
「それももちろん、承知の上だ。しかし、幸いいくつか延焼を免れた邸があってな。とりあえずはそちらに仮住まいをしていただき、そのうちに宮殿を立て直すつもりだ。無論、往時のような立派なものはすぐに立てられぬ故、そちらもとりあえずは仮の宮殿と言うことになろうが……。いずれにせよ、やはり洛陽に戻るのが一番よいと思っておるのだ。どこかの城市に遷都となれば、必然的にその地を根拠とする者が幅を利かせてしまうことになりかねん。その点、洛陽は陛下以外の誰のものでもない。復興はおいおいしてゆけばよいのだ」
言葉が本当ならば、実に善良な男だ。そして、もしかすると曹操と路線で対立することにもなるかもしれない。
ただ、今はこの男を足掛かりするのが上策だ。
「張将軍の高いお志に感銘を禁じえません。必ずや陛下を洛陽までお連れ致しましょう。まずは洛陽近くに布陣している我が軍の兵を呼び、将軍が糧食を運ぶのを護衛いたしましょう」
「そうかそうか、いや心強い! ではその兵が到着次第出発だ。私も貴殿らと同行するのでよろしく頼む」
「かしこまりました」
郭嘉は拱手し、恭しく頭を垂れた。
十日後、到着した兵と共に、張楊の用意した輜重を守る形で一行は安邑へと出発した。
輜重の量はなかなかのもので、野王の様子からも、張楊がそれなりにうまく城市を治め、財を蓄えているのがわかる。乱世だからこそ、温厚な諸侯の下に人も集まるのかもしれない。
悪い人物ではないように思うが、肚の底まではわからない。仮に善人だとしてもこの先皇帝をめぐって対立する可能性もなくはない。とりあえずはいい顔をしておくにこしたことはないと愛想よくしていたものの、この十日間で郭嘉はすっかり疲れていた。
「しばらく、ゆっくりできますな」
出立の日。張楊が先行し、殿を預かる形で曹操軍が出発すると、曹仁が珍しく苦笑交じりに言った。
「ほんとに」
この十日間、やたらと張楊に饗応され、郭嘉は慣れない愛敬を振りまいて疲れはてていた。
「無理をしておられるなと思って見ておりました」
「無理しっぱなしで顔がひきつりそうですよ。ホントならこういうの、文若殿みたいな人当たりのいい人が向いてると思うんですけど。でもま、文若殿も忙しいですしね。俺に代わりに内政やれって言われても無理だし」
「それもあるでしょうが、やはり軍略のこととなれば郭軍師でなくては。これから陛下を奪いあう狸どもと干戈を交えることもありましょうから」
「俺としては早くそうなってほしいですよ。もう外交とかうんざり」
盛大にため息をつくと、曹仁がまたかすかに笑った。無表情だとばかり思っていたが、案外そうでもない。あるいは、少し慣れて気を許してくれるようになったということか。
異変が起こったのは、洛陽を過ぎ、安邑まであと一日ほどという場所まで来た頃だった。
十里先に敵がいるという。敵は旗こそ挙げていないが、きちんと隊を組み、そろいの装備を身に着けているという。
「皇帝の取り巻きですかね。どいつかはわからないですけど。こっちの輜重奪いに来たのか、それとも帝のとこに行かせたくないのか」
「厄介ですな。うかつに手を出すと後でもめる可能性も」
「いや、そんなことないでしょ」
「え?」
「旗挙げてないんだし、どこのどいつだかわかりませんでした~って言い訳してやっちゃいましょうか。皇帝の取り巻き連中には痛い目見てもらって、曹操軍をなめたらヤバいって骨身にしみてもらわないとね」
驚く曹仁を見上げ、にこりと笑う。曹仁は驚いたように目を丸くし、しばらくしてうなずいた。
「郭軍師が、そうおっしゃるのなら」
「ありがとうございます。じゃ、俺たちが前に出て、陣を組みましょうか」
久々の戦の気配に心が躍る。自然とまた頬は緩んでいた。
戦闘自体はあっという間に終わった。
戦闘というのもおこがましい、曹操軍にとっては小競り合いのようなものだ。廷臣側の兵たちはあまりに弱く、統率もろくにとれていなかった。相手にもならない。
張楊も多少のぶつかり合いくらいは想像していたはずだ。しかし、実際には想像以上だったのだろう。
「こ、こ、こんな……」
ぶつかり合いが終わるか終わらないかという頃に郭嘉のところへ走ってきて、真っ青な顔で張楊が言った。
「や、やりすぎだ!」
「え、どうしてですか? 陛下への献上物を奪おうっていう賊徒ですよ? しっかり懲らしめておかないと」
「し、しかしあれは仮にも朝廷の――」
「旗出してなかったし、ろくに統率もとれてない。その辺の賊徒でしょう。そろいの装備は着てましたけど、官軍から奪ったんじゃないですかね? いや、だっていくらなんでも官軍があんな弱いなんてありえないでしょう」
にっこり笑って郭嘉が返すと、張楊は真っ青のまま言葉を失い、立ちすくした。
長安での帝をめぐる争いがいかに程度の低いものだったのか想像に難くない。長安と洛陽を結ぶ狭い範囲で、ここが天下のすべてのように勘違いして相争っていた連中には、曹操軍の強さは相当なものに映っただろう。おそらく、交渉には有利に働く。
「じゃ、行きましょうか、安邑。もう賊徒の心配もないでしょうしね。この上立ち向かってくるような骨のあるやつ、いないでしょ?」
郭嘉が言うと、張楊はまだ青い顔をして、かろうじて一つ、小さくうなずいて見せた。




