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軍師の心情 ~曹操の軍師たち~  作者: 西本夏
3.兗州平定
39/64

39:<郭嘉編>天命の在り処

帝を戴き、天下を獲れと荀彧は言った。曹操からその話を聞いた郭嘉は、曹操の想像だにしなかった言葉を口にする。

 翌朝から、呂布を欺くための芝居をしつつ、出陣の準備を行うことになった。郭嘉と荀彧が曹操にかじりつくようにして度々徐州侵攻はやめるべきだと言い募っているので、兵たちもすっかり徐州に進攻するものと思い込んでしまっている。

 本来ある程度の将には本当のことが知らされてもいいはずだったが、曹操が夏侯淵は口が軽い、と言ったので、結局武官たちにも、そして彼の部下たちにも事実は知らされなかった。ただ、彼らは次の侵攻のために備えろ、と伝えられただけだ。

 ――敵を欺くにはまず味方から、ってもなぁ。

 夕方、ようやく室に曹操と二人きりになったところで、郭嘉は苦笑しながら言った。

「大丈夫ですか、殿? 疲れたんじゃありません? 演技とはいえ、俺たちに散々うだうだ言われて」

「心配するな」

 言った曹操は淡く微笑んでいた。ひとまずは大丈夫そうだが、ずっと曹操を責めたてるのは郭嘉もあまり気が進まない。

「文若殿の話では、麦はあと数日もすれば熟すだろうという話です。徐州に攻めると見せかけるにしても、麦は収穫してからかな。この際多少麦が若くてもしようがないんじゃないかと思うんですけど」

「麦を刈り入れたら、俺が軍を率い、徐州へ向かうと見せかけて東緡を落とす。残った妙才と子孝でここを守り、呂布を討つ。お前の作戦に漏れはないが」

 地図を見ながら曹操がひげをさすったので、郭嘉は首をかしげた。

「が、なにか、あります?」

 郭嘉が問うても、曹操はまだひげをさすっていた。しばらくたった後、彼はゆっくりと首を振った。

「いや、理で考えれば何もない。ただこれは、俺の嫌な予感のようなものだ」

 曹操は地図に置いた敵味方の駒の上に指を動かし、それを最後に東緡に置いた。

「普通なら、お前の言うように、呂布は徐州を攻める軍をやり過ごしてから、乗氏を討つだろう。だが、陳宮の立場から見ればどうだ? やはりそうするか?」

 郭嘉は少し考え、うなずいた。

「色々、ありうる可能性は考えました。一番ありそうなのが、今俺たちがやろうとしてる策そのものです。呂布だけでなく、陳宮の立場から見ても、やはり連中は兗州に拠点を持ち続けたいと思ってるはず。それなら、怒りに任せて殿が徐州を攻めた隙にもう一度兗州を乗っ取るのが上策と考えると思います。次善の策は、いっそ東緡を捨てて徐州へ向かうという策」

 郭嘉は地図上の駒を動かし、東緡にあった呂布たちの駒を徐州へと置いた。

「兗州をあきらめるなら、徐州ですね。頭が入れ替わったばかりで、支配は盤石とはいかないでしょう。劉備がどのくらいやるのか俺は知りませんが、普通に考えればそう簡単に軍を把握できるとも思えない。だから東緡を捨て、徐州へ行って劉備から徐州を奪うというのも作戦としてはありです。ただ、今の呂布軍にはそこまでの兵も糧食もないと見ます。だから、やっぱり目下一番の目標は穀の確保。いくら殿が徐州へ侵攻したって、当然乗氏にいくらか穀を残していくと思ってるでしょうから、それを狙ってくると思うんですけど」

 ふむ、と曹操がひげをさする。やめろと言わないので、郭嘉はその先を口にした。

「うまく呂布が徐州に逃げたらしばらく待つのが上策です。糧食のない状況で劉備と戦うのは不可能でしょうから、多分劉備に泣きつくんじゃないかな。劉備が呂布を受け入れるかどうかはわかりませんけど、劉備としても、軍をろくに把握してない状況で戦は避けたいはず。多分、一時的に劉備と呂布が手を組むでしょうが、きっと呂布が隙をついて劉備を討とうとするんじゃないかな。陳宮の性格的に、徐州牧の劉備に呂布共々仕える、なんてことはないはずですから。放っておけば徐州はしばらく内輪もめで、こっちに攻め寄せる余裕なんてなくなると思います」

 うむ、と曹操がうなずき、顔を上げた。

 炎の瞳にじっと見つめられ、どきりと心臓が跳ねた。相変わらず曹操の眼差しは時々心臓に悪い。

「では聞こう。その後、徐州の呂布をどう攻める?」

「それは、文若殿も言ってた通りです。先に兗州・予州を平定して攻めたてるしか」

「文若の話だと、揚州の勢力と結ぶ、と申しておったろう。現状、揚州に手を伸ばしておるのは袁術だぞ。奴は、俺とはそうそう結ばぬと思うがな」

「そうなんですよね。そこが……。だからもう、あきらめて袁術から討つとか、あるいは、袁術配下の孫策が袁術から独立するように仕向けるとか、そのくらいしか」

 さすがにそんな先までは考え込んでいない。これじゃ曹操は納得しないだろう。そう思って曹操を見ると、彼は手早く地図の上の駒を動かしていった。

「実は昨夜、文若がその先を言ってきてな。文若の献策はこうだ。ひとまず徐州は置く。我らは来年中に兗州・予州を平定、拠点を許へ移す」

「許へ?」

 曹操が手早く駒を動かしていく。本陣を許に置いた後、曹操は新しい駒を出してそれを長安に置いた。

「一方、今帝は長安にいるが、洛陽に戻りたがっているらしい。おそらく、遠からず帝は洛陽近くまで来る。しかし、その周りを固めるのはわずかな廷臣と、権力欲に取り付かれた外戚たち。その権力争いに明け暮れる連中はどれも横並びだ。そこに我らが都の近くに拠点を定めたとなると、どこかの陣営が救援を求め、接触を図ってくる。我らはそれを利用して、朝廷を牛耳り、帝を許へ迎え入れる」

「え?」

「となれば、我らは帝の代わりに天下平定を為す大義の軍、ということになり、どこも文句は言えなくなる。当然、徐州の民も我らを悪と断じることは難しい、と」

「ああ、その手が」

 帝を使うなんて、郭嘉は考えたこともなかった。荀彧はさすがに広い視点を持っている。感心していると、曹操がじっと見つめていることに気づいた。

「殿?」

「奉孝、お前はこの策、どう思う?」

「んー、まあ、いいと思います。確かに帝を意のままにできれば大義にはなりますよね。正直漢王朝なんかどーでもいいけど、それでも朽ち果てかけてる大樹も旗印くらいにはなるでしょ。最後に少しくらいは役に立ってもらってもいいですよね」

 郭嘉としては何気なく言ったつもりだった。が、曹操からの反応がない。

 不思議に思って曹操を見ると、彼は愕然と目をみはって凍り付いていた。こんな顔の曹操を見るのは初めてで、逆に戸惑う。

「え、あの、殿?」

「お前……」

 二の句が継げない、とばかりにつぶやいて、それでもまだしばらく言葉を探してから、曹操は言った。

「さらりととんでもないことを言うな。今何と言った」

「何って、殿が聞いたんじゃないですか。俺は単に、文若殿の策はさすがだと思って」

「文若の言ったこととお前の言ったことは一致せんぞ」

「え? だから帝を利用して天下を獲ろうって話でしょ?」

「文若は『帝を戴け』と」

「あー」

 そういえば、曹操と漢王朝がどうのという話はしたことがなかった。眼前には敵が迫っていたし、曹操の主眼は常に天下を安んじることにあった。帝位がどうの、朝廷がどうのというのは、郭嘉と曹操の間では話題にも上らないことだった。

 一心に天下を安んじることを願う曹操を、郭嘉は好感を持って見ていた。ともすれば自分が天下をほしいままにしたいとか、帝位に就きたいとかいう野心ばかりの連中の方が多いだろうに、曹操から口を突いて出るのはいつもどうすれば戦乱が収まるか、だけだったからだ。

 その根底が、漢王朝を崇拝する思想にあるということを、郭嘉は考えたこともなかった。帝の話もまた、曹操はほとんどしなかったからだ。

「えーと、不敬なこと言うな、っていうこと、ですか?」

 訂正する気はないが、まずは曹操の立ち位置から確かめて話をするべきだろう。そう思って問うと、曹操は眉をひそめ、小さく嘆息した。

「そうではないが……。奉孝、お前、漢室を滅ぼす心づもりか」

「滅ぼすっていうか、もうとっくに滅んでると思ってますよ、俺は。董卓が洛陽を焼いたあの時からもう、漢王朝の権威なんてないに等しいでしょう。ここから漢王朝の再興なんてありえないですよ。それこそ、今の帝が光武帝のように軍を率いて諸侯を打ち負かして天下統一でもしない限りは。でも、ここ数年の動きを見てると、帝にそんな才覚があるとは思えませんね。長安は権力争いでひどいことになってるんでしょ? 臣下すら抑えられない奴が、天下なんて獲れるわけない」

 皇帝はまだ十四歳かそこらだったはずだ。董卓に帝に祭り上げられ、都を焼かれた時は十歳程度。もちろん彼が子供だったということもあるだろう。それでも周りにいる廷臣たちがしっかりしていれば、ある程度のことはできたはずだ。幼帝でもその名を利用して兵を集めることくらいはできたはずなのに、実際そんな話はとんと聞かない。聞こえてくるのは長安が政権争いで乱れているらしい、ということだけだ。

「今の帝にとって、『天下』はせいぜい長安周辺、よくて洛陽までくらいのもんでしょう。そんな狭い視野しかもっていない、ただ帝の血を引くだけの子供を、ありがたがってこの国の主と認めるってのは、俺はぴんときません。そもそもこんなめちゃくちゃな世の中になったのは、光武帝以降、漢王朝にまともな皇帝がほとんどいなかったからだ。大体みんな子供で帝位に就いて、子供の頃は外戚が、大人になれば宦官が実権を握って政をほしいままにする。それで、この国はめちゃくちゃになった。だったら――」

 まだ半ば驚いた様子で見つめてくる曹操を見つめ、郭嘉は彼にぐっと拳を握って見せた。

「力のある、優れた人間が新たな皇帝になって国を治めればいい。それでこの国が落ち着くなら、別にそれが劉姓である必要なんてない。俺は、そう思ってますけど」

 曹操はしばらく愕然と目を丸くしてから、探るように郭嘉を見つめてきた。

「それは、俺に帝になれ、と言っているのか?」

 今度、言葉に困ったのは郭嘉の方だった。

 天下統一なんて遠い世界で、正直そこまでつきつめて考えたことはなかった。ただ、今のところ曹操は欠けたところの少ない、実に有能な人物だと思える。順調にいけば天下も狙えるだろうし、きっと彼ならいい天下を導いてくれるだろう、という予感はある。

 ただ、これは強要できるようなものではない。

「俺は、それでもいいと思いますけど。もちろん、殿が生涯漢王朝の功臣でありたいというのなら、それはそれで構いません。でも、殿は天下を安んじることを目指しておられる。すなわち、天下を武で治めることを目指しておられるということだ。となれば、天下を獲った後は絶対にそういう話は出てきますよ。ただ玉座に座って何もしてない皇帝と、その臣下として各地を転戦して乱を治めた男。皆がどちらをありがたがるかなんて、火を見るより明らかです」

 そして、往々にしてそういう状況になっても将軍側が帝位に就かなければ、皇帝は人気の高い将軍を目の敵にして殺そうとする。これも、歴史上よくある話だ。曹操とて、それは気づかないでもないだろうに。

 どこまで説明すべきだろう。

 迷って曹操を見ると、彼は視線を揺らし、腕を組んで嘆息した。

「……韓信だな」

「それに近いですよね。ていうか、天下獲ったらそれ以上でしょ」

 漢王朝成立に多大な功のあった韓信は、結局天下統一の後、(あるじ)だった高祖によって殺された。しかしそんなことまでいちいち曹操に言うのも失礼というものだろう。曹操も相当な学識の持ち主だ。

「殿?」

 黙って腕を組んだままの曹操に問うと、彼は小首をかしげ、苦笑して見せた。

「それは不可能だな」

「不可能? そんなことないでしょ。このままいけば韓信も真っ青の」

「違う。俺が帝位に就く、ということがだ」

「そうですか? 天下を平定したら、絶対狙えると思うけどな」

「文若が許すまい。あれは、漢王朝を滅ぼすなど夢にも考えたことはあるまい」

「ああ……」

 確かに、荀彧は漢王朝への尊崇の念が強そうだ。曹操が帝位を狙っていると思ったら、彼はどうするだろう。おそらく反対するだろう。下手をすれば、曹操から離れることさえありうるかもしれない。

「それでなくとも、漢王朝という『当たり前』を覆すことがどれほど難しいことか。始皇帝が全土を統一して後、始皇帝の死と共に再び全土は乱れ、高祖がまた統一し、そこからまがりなりとはいえ四百年もの長きにわたって平和が保たれた。これは大きいぞ。漢王朝がいかに腐っていようと、それでも四百年、民に平和を与え続けた存在なのだ。それを打倒し、新たな王朝を築くということが可能かどうか。人々は、漢王朝が滅びればどうなると考えると思う? 以前の世が乱れていたように、また戦乱の世に戻るとおののくのではないか。故に、漢王朝を打ち倒すには相当な抵抗を覚悟せねばならん。それこそ、天下を平定しても、またひと騒動あるくらいの覚悟がいるだろう。それならば、帝を戴き、全土を安んじる方が手っ取り早いし、犠牲も少なくて済む」

 それはどうだろう、と郭嘉は思った。

 天下の平定を成し遂げるにも、軽くあと十年はかかるだろう。その間に仮に曹操が帝を戴いて徐々に権勢を高めて行けば、おのずと状況は変わってくるはずだ。そして、曹操自身の心も。

「まあ、そういうのはまだまだ先の話ですよね。帝になるならないは置いといて、帝を利用するのは上策です。差し当たってやるべきは呂布を殺して、定陶、陳留を落として潁川を獲る。うん、明確になりましたね」

 脳裏に新しい図が広がっていく。自然と頬が緩んでいたらしい。それを見た曹操が興味深げに目を細めた。

「お前は面白い奴だな、奉孝」

「はい?」

「お前が微笑んでいるのを見ていると、すべてうまくいく。そんな気になる」

「と、殿までそんなこと言わないでくださいよ」

 苦笑を返し、誤魔化すように郭嘉は曹操から目をそらした。

「じゃあまずは呂布からですね。麦の刈り入れが終わって、あと何日かで徐州に攻めると見せかけて殿が出陣、その後、ここで呂布を迎え撃つ」

 郭嘉の言葉に一つうなずいて、曹操は考えるように片肘をついた。

「呂布が、狙い通り来ればいいがな」

「殿は、来ないと思うんですか?」

「いや、そういうわけではないが……」

 まだ思案げにひげをさすってから、曹操は急ににやりと笑った。

「まあ、お前が夜通し考えてそう判断したのだ。外れはすまいな」

「は?」

「濮陽を出てからこっち、ずっと深更まで地図とにらみ合っておったのだろう?」

「なっ、だ、誰に聞いたんですか、それ!」

「お前の従者だ。こないだ倒れた時に言っていた。お前はいつも夜中まで地図の前で考え込んでは、寝落ちしていたと」

 からかうようなまなざしに、かっと頬が熱くなる。曹操にだけは知られたくなかったのに。

「あいつ……ッ!!」

 頭を抱えて曹操に背を向けると、背中から笑い声が聞こえてきた。

「お前も存外かわいいところのある男だな。言うこと言うことすべて当たるから、お前の慧眼はとんでもないと思っていたが、それが不断の努力に裏打ちされたものだったとは」

「も、もう遅いしいいですよねっ。失礼します!」

 ――だから、知られたくなかったのに!

 胸の中だけで叫んで、郭嘉は逃げるように曹操の前を辞した。




 曹操の前を辞したその足で、郭嘉は城内に与えられた自室に向かった。珍しくいらだちもあらわに回廊を渡ったせいか、すれ違った者たちが一様に驚いて道を開ける。しかし郭嘉はそれにも、まったく気を払わなかった。

 与えられた室の前にたどり着くと、乱暴に扉を開け、中で郭嘉を待っていた静の襟をつかむ。

「静! お前っ! なんで殿に言ったんだよ!!」

 強引に引き寄せて鼻先で怒鳴っても、静はわずかに眉をひそめただけだった。

「なんの話でしょうか?」

「俺がっ、毎晩夜更かしして作戦考えてるとか、殿に言っただろ!」

 ああ、と気のない様子で静がうなずく。

「言いましたね」

「言いましたね、じゃないだろ! なんでそういうこと殿に言っちゃうんだよ!!」

「駄目でしたか? 若が倒れた原因に思い当たる節はあるかと聞かれたので、おそらく夜更かしして寝不足だからとだけ――」

「そこはお前、『体が弱くて』とか『疲れてたから』とか適当に濁せばいいだろ!?」

「そうですか? でも主のために夜通し知恵を絞っていたというのは、曹操様にしてみれば若が必死になって働いているということでしょう。好感を持ちこそすれ、怒られるようなことでは」

「んな、必死に夜も考え込んでたとか言ってたら、一生懸命天才のふりしてた俺の努力が無駄になるだろうがっ!!」

 怒鳴りつけた瞬間、静が目を丸くして固まった。めったに見ることのない表情に、きまりが悪くなる。郭嘉は掴んでいた襟から手を放し、ふいと静から目をそむけた。

「……なんという、無駄な努力を」

「どこが無駄だよ! お前な、殿とか文若殿みたいな頭いい人ばっかに囲まれて仕事してる俺がどんな気持ちか」

「いえ、それはわかりますけど、不要な努力でしょう、それは。現実に若は結果を出して、軍略の天才と周囲にも認められ始めています」

「だから、それが必死の努力のおかげだってばれちゃったら意味ないだろ!?」

「そうでしょうか? 努力のたまものであろうが、天才のひらめきであろうが、あなたが曹操様が恃みにする才を持つ人間だということは変わらないと思いますけど。もちろん、結果が出ている以上、周囲の評価も変わりはしないでしょうし」

 呆れ半分で言われ、郭嘉は言い返せなかった。静の言いたいことは、わからないでもない。結果が伴っているのだから、さして影響はないかもしれない。

 しかし、それにしたって格好悪い。

「と、とにかく! もう絶対余計なこと言うなよ、いいな!? 絶対だぞ!」

 困ったなとばかり苦笑して見つめられるのが心底きまりが悪い。ごまかすように怒鳴りつけると、静はその微妙な笑顔のままうなずいた。

「わかりました。といっても、私が曹操様に何かを申し述べる機会など、そうそうありませんけど」

「万が一あったらだよ」

「ええ、そうですね。次からは、私も若が天才の体でうまく話を取り繕いましょう」

「おまっ!」

「大丈夫ですよ、私以外の皆は、本当にあなたが笑っていれば必ず勝つと思っていますから」

 苦笑交じりで返され、郭嘉は腹いせに静の脚を蹴った。

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