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事件は日記で起こっていた  作者: 山目 広介
5/12

05.容疑者たち

 ◇ ◆ ◇



 容疑者が二人もいた。


 私を殺そうと考えていた人物、という意味の容疑者だ。警察などはまだこの日記の日付時点では関与していないようだ。



 一方は母の従弟という男。そして他方は父の愛人だった。愛人は女性だ。衆道には手を染めていないようだ。性癖が感染したのかとか思ったのだろう。



 母――養母が正しいのだろうか――はこの家を相続していた。父は婿養子だった。でも子供が出来なかったため、私を引き取ったようだ。


 母の従弟というのが私を殺して離婚させた上で母と再婚を狙っている、と書かれている。


 私がいるから離婚をしない、と両親は言っているのだろう。父には愛人がいるようなのだから。


 離婚したからといって、なぜ母の従弟と再婚できると思ったのかが分からない。



 そして父の愛人は私を殺してから母も殺すことを計画していたらしい。順番によって遺産の分配が変わるからだろう。父に相続させてから、父と再婚する予定だったみたいだ。





 つまりは両方ともお金目的だということだ。


 金銭トラブルで殺されそうになっていたとは……。私が生きてるので、この続きはスリルがちょっと足りないかもしれない。


 いやでも、その影響で記憶を失った可能性もある。まだ事件が終わっていないことも考えられる。続きを読もう。





 母の従弟だという男は母から借金をしているらしい。


 再婚して借金を帳消しにしてもらおうという魂胆だったみたい。


 借用書、ではなく、念書として送ってきたようだ。詳しい違いが分からない。


 それを母が持っている。しかも訂正印で最初の金額が増額させられているようだ。期日や利率、果てはこれを破った際の罰則規定などが書かれていない。期日も利率もないんだから破りようがないとも言える。この内容から考えて、とてもまともに返す気がないのだろうことが窺える。


 よくこんな念書で母はお金を貸したものだ。



 母がこれで貸した推論が書かれている。


 期日――つまりは期限が書かれていないことをそのままな理由は、後からいつでも書き加えることで支払いをいつの時点でも請求するためだという。法的に請求期限を逃げ切ってから油断したところで期日があるからと請求するつもりだという。上げて落とす。



 本来であれば、勝手に追加は無理だろう。書き加えることが可能な理由は、あちらは写しを――送ってきているために――取っていないことが明らかだからだ。後から手を加えたと訴えることが出来ない。仮にこちらの署名がない状態の写しがあったとしても、それの意味はないのだろう。



 さらに利率は後から書き込むことで裏切った際に自由に増やせるという考えだろう、としてある。ちゃんと返すのなら元金だけでも良いというお人好しの一面の表れだとしていた。


 ついでに訂正印の金額が「金――円」から上の空きに「○○円」となっていて最初に「金」が書かれていないために訂正した左側に「一億」とでも追加で書き込める、と恐ろしい推論が述べられている。



 当然、罰則も追加できる。それだけの空白があるってことだ。


 賢い。そして恐ろしい。


 こんなダメな人物がどうやって再婚まで持っていけるのだろうか。逆に母に嵌められたのか。





 次。


 父の愛人の方は、母に負い目があるとのこと。


 何のことだろう、と先を読む。


 子供を産むことが出来なかったことが母の負い目で、だから父の愛人を容認しているようだ。


 なんでも父は自分の子供が欲しかったらしいので、それを叶えられなかった母は強く言えないそうだ。


 私が入院して病院に迎えに来たとき、夫婦仲があんなに良さそうだったのに、負い目だとかそんなものがあるとは人間関係というのは奥が深い。


 でも負い目なんて感じる必要がないように思う。気にしすぎじゃないだろうか。


 そもそも、それで殺されてやるつもりはないのだが。前の私はどうだか知らないけども。



 この愛人の方も借金があるみたいだ。親が入院していて常にお金が出ていくものだから支えきれないので、父にすり寄って入院費を負担してもらっているらしい。だが以前の借金の負担は丸々残っているものだから、それをこの家を乗っ取って返済に充てるつもりだろう。



 情状酌量の余地というものがあるのかもしれないけれども、こちとら殺されてやるつもりは毛頭ない。


 あ、自己破産してるから更なる借金が出来ず、親の入院費が払えないんだ。どうしようもないな。


 親を諦める? 鬼畜の所業か。でももっと独身の金持ちに行けばいいのに。出会いがないのだろうか。


 まあ、私も百合(?)だったわけだし、男の探し方なんて知らないからアドバイスも出来ない。


 量子ちゃんとは女性同士だから結婚も出来ないんだよ。あ、遺伝子的には男なんだから同性婚認めている場所まで行かなくても、もしかしたら結婚できるのではないだろうか。でも、量子ちゃんと何故別れたのか謎だからなぁ。よりを戻すことも出来ない。





 そもそもどうやって殺されかけたんだろうか。詳細がないのが悔しい。書いた本人は思い出せるから要らないのかもしれないけども、知らない人が見たら欲しい情報がないので歯痒い思いをすると前の自分に言い聞かせたい。



 仕方がないので日記を読み進める。


 検査の詳細が分かったらしい。遺伝子的に男だったというものの検査だ。


 実は男、というわけでもないようだった。





明日次回06.半陰陽

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