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鬼と鬼子  作者: らゐる
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3

外に出ると、黒塗りの車が待っていた。あたりは木々が生い茂っていて、人工物はキリルさんの研究所くらいしか見当たらなかった。空は赤と青が入り混じっていて、夕方であることを感じた。

女の子に案内されるがまま、僕は黒塗りの車の後部座席に入った。

僕と女の子が乗り込むと車が発進した。窓からは何も見えず、前方の座席との間に仕切りのようなものがあってあたりがどうなってるのかはわからなかった。上にライトがついていて、僕と女の子を暗く照らす。

まるで護送車だな。

「そういえば自己紹介がまだだったね」

女の子が話しかけてきた。

「私の名前はジャクリーヌ。ジャッキーって呼ばれてるから、ジャッキーって呼んでね。あなたの名前は?」

僕の名前。

「……フェルディ…」

そう、フェルディ。一回だけ、誰かに呼ばれた気がした。

『フェルディ、ここがこれからのお前の家だ』

…………………

「フェルディか!よろしく!フェルディ!」

そういうとジャッキーは僕の手を急につかんだと思ったらぶんぶん振り出した。握手のつもりだろうか。

彼女はにこにこしたまま話を続ける。

「君の元いた村がつぶされたのはキリルさんから聞いた?」

問いに対してうなずく。

「…………そっか。」

その言葉を最後に、しばらく沈黙が続く。

しばらく黙っていると、またジャッキーから話しかけてきた。

「……誰がやったのかは聞いた?」

「うん。エラムがやったんでしょ?」

「まあ……そうなんだけど」

ジャッキーは気まずそうにしている。

「あのね……君が働くところは君の村を潰した組織なの」

「僕がエラムの職員になるってこと?」

尋ねると、一呼吸おいて返事が来る。

「まあそんな感じかな」

「わかった」

返答をすると、彼女は驚いた顔を僕に向けた。それほど驚くことだろうか。

僕には帰る場所がない。村にも思い入れがあるわけでもない。村を潰されたことに怒りや負の感情を持っていればそうだろうが、あいにく僕はそのような感情をもてるほど大事に扱われたことはないのだから。

「うん、ありがとう。じゃあ着いたらさっそくボスのところに会いに行こう」

彼女は困ったような、なんとも微妙そうな笑みでそう答えた。

その会話を最後に、僕らは黙ったまま車が目的地に着くのを待った。

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