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お野菜大好き大作戦

作者: 彩葉

この作品は野菜嫌いを参考には、なりません。

それでもよろしければ、お読みください。

ここは三角県にあるまんまる町です。

この町の人々は食べることが大好きで、いつも広場に立ち並んだ屋台の料理を、美味しそうに食べていました。

その中で一番大きなお腹をしているのが、町長さんです。

町長さんはまんまるお腹にズボン吊りが付いた白いズボンを、はいていつもニコニコと楽しそうに笑っていました。

「町長!大変です。町の子供たちが野菜を食べません。」

「何だって!それは困った。しかし……」

町長さんは困りました。

  実は町長さんも野菜が大の苦手。

煮込んだ野菜なら食べられるものの生野菜は、どうしても食べることが出来ないのからです。

「どうしよう。これは、町長に就任してから□□年。かなりの危機。」

「そこで町長、提案なのですが、お野菜大好き大作戦を始めませんか?」

「お野菜大好き大作戦?」

 お野菜大好き大作戦はどんな作戦かというと、大人たちが野菜を美味しく食べ、子供達に食べてもらおうと言う作戦です。。

 結果はと言うと、食べてくれる子は食べてくれるのです。けど食べてくれない子は全然ダメ。

 それどころかもう大人は信用できない!と一部の子達がお肉大好き肉肉団を結成して、秘密基地に立てこもってしまったのです。

 子供達が立てこもる秘密基地の周りには、人だかりができています。

『君たち立てこもってないで出ておいで!一緒に野菜料理を楽しもうじゃないか!!』

とおまわりさんが拡声器を持って叫びます。

「嫌だ。野菜なんて大嫌いだ!」

「と、こう言うわけなんでありますよ。」

「そうですか。」

「子供たちは交渉相手に町長を指名しています。」

「そうですか。分かりました。」

 おまわりさんから拡声器を受け取った町長さんは、子供達に向かってしゃべり始めましました。

『えー私皆様の街の町長。お菓子大好き樫山菓子郎であります。未来をになう子供諸君。野菜を食べないと大きくなれないぞ!!こんな事をして、恥ずかしくないのかね。』

「嫌だ!!野菜を食べなくても大きくなれる!大人達は嘘つきだ!!自分達が嫌いな野菜を無理やり僕たちに食べさせようとするなんてひどすぎる!!」

『何だって無理やり食べさせようとした大人なんているわけが……』

町長さんは、町民達の方を見ました。すると一部の町民が明後日の方を向きます。

「成る程大人たちの中にも野菜嫌いがいたわけだ。」

『君たちの要求は何だね?』

「野菜大好き大作戦をやめること。後、野菜を無理やり食べさせないこと。」

『それは私の決めることではない。良いかい?今すぐにお野菜大好き大作戦をやめることは出来るが、大人達が君たちに野菜を食べさせようとするのは、君たちを思っているからなんだよ。」

「それなら、町長さん!!あなたが美味しそうに食べる野菜なら食べてみてもいいよ。」

『何だって!!』

「それは良い!!」

「町長さんが野菜を美味しそうに食べてくれるだけで、」

「子供達が帰ってくるなら、」

「今すぐに食べてください。」

 様子をうかがっていた大人達も口々に言います。

『ではこうしよう。煮込んだ野菜料理。うーんと。カレーライスとか?』

「いえいえ。せっかくですから採れたてのきゅうりでも。」

『それじゃあそれじゃあ、ん?この香りは?』

 町長さんは鼻をヒクヒク香りのする方に向かっていくと、人だかりの奥にいつの間にかテントが張られ、屋台の人たちが忙しそうに働いていました。

テーブルに置かれているガス台の上に乗った寸胴鍋からは美味しそうな香りがします。

「ぐぉぉぉぉー」

突然大きな怪獣の声みたいな大きな音が鳴り響きました。町長さんのお腹の音です。

 すると、町長さんのお腹のなる音につられるように、あちらこちらからお腹のなる音が聞こえてきました。

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

おまけに秘密基地に立てこもっている子供達からもお腹のなる音がします。

「ぐー」

「ぐー」

「ぐー」

 お腹のなる音の大合唱は、数分間続き最後は、

『わっははーー』

みんなは顔を見合わせ大笑い。

 食べることが大好きなまんまる町の町民達は、さっきまで野菜を食べる食べないなんて争っていたことも忘れてお腹を抱え笑いました。

 町長さんは、拡声器を構えると町民達に向かってこんなことを言い始めます。

「皆さん。お腹も空いてきましたね。

どうです?ここらへんでみんなで食事会でもしませんか?』

「それは良い。」

「もう腹が減って減って。」

「ですが、子供達はどうでしょう?納得するでしょうか?」

「うむ。そうだな。」

町長さんは、再び秘密基地の方に向き直りました。

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

「ぐーーーー」

 秘密基地の方から可愛らしいお腹の鳴る音がします。

「もう大丈夫でしょう。」

 そしてお腹が鳴る音とともに肉肉団は、解散したのです。

 立てこもっていた子供たちとその親たちは、お互いに謝りました。

「ごめんね。もう無理に野菜を食べさせようとはしないから。」

「僕たちこそごめんなさい。」

それから数分後町長さんを囲んで一つの大きな輪になった町民たちは、大人も子供もさっきまであった事も忘れて屋台の人たちが、作ってくれた料理を食べ始めました。

「美味しいね。でもやっぱりこの野菜苦手だな。」

「いつか食べれるようになるわよ。」

「もしも大人になっても食べれなかったら?」

「その時は、諦めて他の物を食べなさい。何でもいいわ。野菜ジュースでもなんでもだけど、お菓子だけは駄目よ。バランスよくね。」

町長さんは微笑ましく親子の様子を眺めていました。

すると町長さんの前にきゅうりが差し出されます。

「うっこれは……」

「さっき農家の方に頂きました。採れたてのきゅうりはいかがですか?」

「採れたてのきゅうり!?採れたてのきゅうりはちょっと……」

「まあまあ、町長ご遠慮なさらず。」

「遠慮も何も全然遠慮してない。」

 とうとう町長さんは、逃げ出してしまいました。

「えっほえっほ。」

「待ってくださいよ。町長。」

まんまるお腹にズボン吊りが付いた白いズボンをはいた町長さんは、町中を走り回ります。

「はあはあ、はあはあ絶対、絶対、生野菜は食べないぞ。」

 その様子を見ていた野菜嫌いの子はお母さんに一言、「ママ。僕大人になったら走らなきゃダメ?」っと、聞きました。


お読みいただきありがとうございます。

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