腹中話
拒否する。なんでこんなのと話しながら飯など食わねばならんのだ。
「なにを言っている。君は下等な存在なんだ。本来であれば君は感動に咽び泣くのが普通なんだよ。さあ、今からでも遅くは無い。いや、本来であれば遅すぎるんだがね。君は私に手をついて懺悔するべきだ」
なぜコイツは此方が一人で考えているときに割り込んでくるのか。思考能力でも吸いとってやるべきだったか。
まぁいい。とりあえず俺は飯屋に入った。席に座ると、店員がメニュー(これは紙ではないな。コルクのような柔らかいなにかだ)を渡してくる。だが俺はメニューを読むのが嫌いだ。
「右から三番目と四番目と五番目をいただく」
とりあえず頭にふと浮かんだ言葉を口にして見たが、なんの台詞だったか。
店員は笑顔で対応し、メニューを下げつつ確認している。
なかなかにできた店員ではないか。
私達は、ついさっきまで山賊として普段通りの生活をしていた。本来であれば今頃盗品の換金をしているはずである。
しかし実際には、こうしてよくわからない男に捕まっている。なにも見えないし感じないが、不思議と恐怖感はない。いつもであれば私達はキレて暴れまわっていただろう。
だが、なぜか憎しみや敵対心といった感情が今は一切わいてこない。吸い込まれた時に、なにかされたのかもしれない。
まぁいいや。盗賊稼業もそろそろ疲れているんだ。少しくらい休んだっていいだろう。
暫くすると、料理が運ばれてきた。よくわからない(説明のしづらい見た目をしている。強いて言うならビーフシチューだろうか)メインと、サラダである。なかなかに旨そうではないか。
腹の空いていた俺はすぐに平らげた。掃除機の排気穴に手をおくと、小銭のようなものが出てくる。適当に払って店を出る。
さて、腹も不苦れたことだし、一つこの街を見て回ることにしようか。そのときだった。
(1.魔物 2.謎の男 3.貴族と騎士)
遅れが