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黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-  作者: 八束ノ大和
第五章 中央編

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第98話 秘薬

 老師の下で龍陣を習得したアルクス達は老師に感謝の意を伝えて、次の街へと向かった。


『思ったよりも長居したな。』

『そうだね、でもそのお陰で強くなれた。特にクリオのラピスから精霊が孵化するとは驚いたよ!』

『えぇ、まさかラピスから精霊が生まれるなんて…

 でもこれで一歩ハイエルフへの目標に近づいたわ!』

『僕のラピスにも壊れる前には精霊がいたのかな…』

『フルーとナトゥがそうなんじゃないの?』

『二柱の精霊が宿っていることってあるのかな?今度聞いてみようか。』


ラピスから精霊が生まれることを知り、フルーとナトゥが自分のラピスに宿っていたのか、それともまた別の精霊が宿っていたのか、アルクスは気になったが、今フルーとナトゥ達と契約できているという事実に感謝した。


街へ向かう道程で時たま竜種が闊歩しているところに出くわすものの、挨拶なのか愛想良く一声鳴くだけで特に襲ってくることはなかった。


『あいつらよく見ているな。前はただ興味なさそうにしていたが、私達が龍陣を会得してからはちゃんとこちらの力量を見た上で挨拶をしている。』

『竜達の処世術みたいなものかな。』

『野生で生きていくためには相手の力を正しく測れないといけないからな。』


そして、黒衣の騎士が再度現れることなく次の街へと辿り着いた。

領主館へ向かうと歓迎された。


『やぁやぁ、君達。よくぞここまで辿り着いた!

 私はこの街の領主のクィントゥス。

 八竜震天の挑戦者が前の街を出たという連絡があってから、待てど暮らせど全くその様な者達

が来ないから竜に喰われて死んだかと思っていたぞ!

 試練も良いが、まずはゆっくりと休んで今までの話を聞かせて欲しい!』


着いて早々に歓迎の宴が催された。

クィントゥスはこの大陸の情報には聡かったが外の国々のことに興味があるらしく、今までの旅の話や旅をしてきた国々の文化や技術など様々なことを質問された。

聞き出して使えそうな情報はまとめて従者らしき者に渡していた。


『あぁ、これかい?これでも私はこの街の領主だから、街の発展に繋がる情報には目がなくてね。

この大陸の情報なら大体わかるけど、外の国々のことは全然わからないからね。

こうやって使えそうな情報を整理して、出来ることはすぐに始めたいのさ。』


そうしてアルクス達は宴の間にクィントゥスから様々な質問攻めにあったのであった。


翌日、今までの旅の疲れも取れいざ八竜震天の試練に臨むというところでアルクス達はクィントゥスから呼び出された。


『やぁ、アルクス昨日は色んなことを教えてくれてありがとう。とても有意義な時間だったよ。

さて、君達は八竜震天の試練を受けている最中だったね。

今までの試練で聞いていると思うが、ここからは今までの地竜の試練とは違い天竜の試練と呼ばれている。

地竜の試練と天竜の試練で何が違うかと言うと、一番わかりやすいのは試練を乗り越えるための難易度だ。

単純な力押しでは乗り越えられず、ここで挫折してきた者達も数多くいるんだよ。』


八竜震天の話を始めたクィントゥスは昨日とは打って変わった真剣な表情で話していた。

そしてその眼光には何かを楽しんでいる様にも見えた。


『この街の試練は、知の試練だ。

だがもちろん知っている知識を答えるだけの試練ではない。


試練は単純だ。「竜の秘薬」をここに持ってくるだけだ。

それが何かはわからなければ調べてみると良い。』


クィントゥスは細かいことは言わず、ただ「竜の秘薬」を持ってここに戻って来れば八竜震天の試練に合格だと話していた。


『今回の八竜震天の試練は戦ったりはしないんだな。』

『そうだね、実力を示せ!って言われた方がわかりやすかったかもね。』

『竜の秘薬かぁ、まずはそれが何かを調べないとだね。』

『私が知っている「竜の秘薬」は万能の回復薬のことを指しているが…』

『とりあえずこの街の図書館を探してみようか。なければ聞き込みか、前の街に戻ることも考えないといけないかもね。』


アルクスの提案により、一同は図書館を探すことにした。

街中で聞くと図書館の場所はすぐに見つかり、足を運んだ。


『でかいな…』

『領主館よりも大きいね…』

『知の試練をやるくらいだし、この大陸の「知」がここに集まっているのかもね。』

『本か。ドラコ・レグルスには自由に読める本はあまりなかったから図書館なんてなかったな。』

『アルフグラーティにもあまり本はなかったわ。試練のことはアルクスに任せてたまには読書でもしましょうか。』

『それも良いな。』


スペルビアとクリオは中へ入るとあとは任せたと言って自分達の興味の赴く場所へと行ってしまった。


『もう、あの2人もアルクスのことを手伝えばいいのに。』

『確かに俺達ができることはアルクスを手伝うくらいだしな。』

『まぁ、とりあえず「竜の秘薬」の情報を調べようか。スペルビアが言うには回復薬の類みたいだったけど。』


薬に関連した書物を探したところ、膨大な量の本が並んでいた。


『これを探すとなるとなかなか厳しいんじゃないか?』

『探すのも試練のうちの1つなんじゃない?』

『無闇に探しても時間がかかるだけだし、司書の人に聞いてみよう。』


アルクスが司書に「竜の秘薬」に関する書籍について質問したところ、1冊の本を案内された。


『竜の秘薬に関しての書籍はこの本のみになります。他に必要な書籍がございましたらまたお尋ね下さい。それでは試練頑張ってくださいね。』


司書の人から本を案内されると最後に笑顔で見送られた。


『これだけの本の中から1冊だけ見つけられるなんて、司書ってすごいんだね。』

『どうやら俺達が八竜震天の試練を受けてるっていうこともわかっていたみたいだな。』

『簡単にできる仕事ではないからね。さて、「竜の秘薬」がどういうものか調べてみようか。

 一通り読んでみるから少し待ってて。』


アルクスは案内された本に一通り目を通すとほっとした顔をしていた。


『これならどうやら僕でも作れそうだよ。』

『どんな薬なの?』

『龍気の取り込みが上手になって溜め込める量も増やせる薬かな。スペルビアが言っていたのとは多分別の薬だと思う。』

『じゃあ、次は材料集めか。何が必要なんだ?』

『あ、材料なら揃っているよ。老師のところで竜達の鱗とか爪とか不要だけど薬の材料になるものを色々もらっていたからね。多分本来なら材料集めも試練のうちだと思うけど、老師に感謝するしかないね。

特別な器具とかは必要なさそうだから、宿をとってそこで作ることにするよ。アリシア達はどうする?』

『たまには本でも読んでみようかな。今まで旅して来たところで商会で使えそうなものがないか調べてみる。』

『俺はスペルビアのところにでも行くかな。』

『じゃあ出来たらまた戻ってくるよ。』


アルクスは2人と別れ、図書館を出て街中で宿をとった。

そして龍珠の中から素材を取り出し、フルー達を召喚した。

アーラも龍珠から出て興味深そうにアルクスを眺めている。


『さて、これから「竜の秘薬」と呼ばれる薬を作るよ。

 とは言っても難しい薬では無さそうだからささっと作るよ。

 フルー、ここに綺麗な水を入れてもらえるかな?』

『ワカッタ』

『ナトゥはこれを乾燥させて、砕いてくれるかな?』

『コレデイイ?』

『あぁ、完璧だよ!』

『ボクハナニシタライイ?』

『ヘルバは、この葉を出してもらえるかな?』


アルクスはヘルバに必要な薬草の絵が書かれた紙を見せた。


『デキルヨ!』

『うん、ありがとう。あとはこれを混ぜて…トニー、ここに雷撃をお願いできるかな?』

『アオン!』


混ぜ合わせた材料を加熱して、あとは冷まして完成となった。


『どうやら出来たみたいだね。みんなありがとう!』


皆、目的の「竜の秘薬」が出来たことを喜んでくれた。


『さて、図書館に戻るとするかな。

 そういえばこの前クリオのラピスからニンブスが生まれたと思うけど、フルーとナトゥは僕のラピスに宿っていたの?孵化出来たわけではないけど、そうだったら嬉しいなって思って。』

『ウーン、ナントイッタライイノカ』

『スコシフクザツ』


アルクスはフルーとナトゥに聞きたかったことを質問したが、どうやら簡単なことではなかったらしく2柱の精霊は考え込んでしまった。


『もし説明できる時が来たら教えてね!』

『ワカッタ』

『カクニンシテオク』


その後図書館に戻った後、本に集中していた皆を呼び戻して領主館に向かった。


『ところで皆何の本を読んでいたの?』

『私は貿易とか流通の本。どうやらこの大陸の外側とも少しだけ交流があるみたいだったから、いつかそこからうちの商会も入り込めるかも!』

『俺は鍛錬方法がまとまっている本を読んでいた。肉体を鍛えるためには体を鍛えるだけじゃなくて、食事内容にも気をつけた方が良いらしい。』

『私は魔術の本を読んでいたわ。ラピスが孵化した後の精霊の力を借りる方法とかとても勉強になったわ!』

『私は...』

『スペルビアは料理の本を読んでたよね。ちょっと意外だった。』


クリオに読んでいた本をバラされたスペルビアは少し焦った様な表情をしていた。


『スペルビア、料理に興味があるの?今度一緒に作ろうか。』

『アルクスの作る料理は美味しいからアルクスに教われば間違いないよ!』

『そうね、アルクスの作るものは皆美味しいわ!』

『そうか、なら今度お願いしようか。』


スペルビアがアルクスに料理を習う流れになり、バルトロは横でうんうんと頷いていた。


『兄さんどうしたの?』

『いや、いつかスペルビアの作った料理が食べてみたいなと思っただけだ。』


そんな会話をしていたらすぐに領主館へと辿り着いた。


『やぁ、アルクス。今朝試練の内容を伝えたばかりだけど、どうしたんだい?

 まさかもう「竜の秘薬」を手に入れたなんて言わないよね。

 この街の中では入手はできないはずだよ。』

『はい、作ってきました!』


アルクスはそう言ってクィントゥスの目の前に作成した「竜の秘薬」を置いた。


『まさか!いや、こんなに早くできるはずは…

 ちょっと見せてもらうよ。中身を少しもらうね。』


クィントゥスはそう言うとアルクスが取り出した「竜の秘薬」を眺めたり、従者が持ってきた紙に数滴垂らしたりして、最後には自ら飲んでいた。


『どうやら間違いなく「竜の秘薬」みたいだね…

 私が出す知の試練はこれで合格だよ。

 ところで、どうやってこんなに早く「竜の秘薬」を持ってくることができたのかな?』


アルクスは図書館で調べて、手持ちの材料で足りたのですぐに作った旨を伝えた。


『なるほどね。まさか「竜の秘薬」の材料を持っていたとは…

 本来であれば材料を集めるためにこの大陸中を駆け巡らないといけないのだけど、まさか全部持っていたとはね。

 すぐに次の街へ向かうのかい?

 もしまだここに滞在するなら色々話を聞かせてもらいたいけれど。』


アルクスはまだ図書館の本を全然読めていなかったため、しばらく滞在した旨を相談すると皆も久しぶりの街ということで賛成した。


『おぉ、それは良かった。この街に滞在している間のことは任せて欲しい!』


そうしてアルクス達はクィントゥスに世話になりつつ、しばらく図書館通いの日々が続いた。





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