第96話 龍穴
アルクス達は龍陣を会得するため、中央大陸内陸部の山中にて出会った元領主という老師の世話になることになった。
竜達が近くで転がっている中、老師から龍陣のいろはを教わることとなった。
『さて、改めてになるが龍陣とは何かを説明するとするかのぉ。
理屈で理解するのも感覚で理解するのも個人の自由じゃが、自分にあったやり方を見つけると良いじゃろう。
龍陣とは龍脈の力の流れをどれだけ自分のものにできるかという能力じゃ。
龍脈には常に力が流れ続け、今まではその力を取り込み、溜め込んたりして使っていたじゃろう?
今度は取り込むだけではなく自分の周囲の力まで制御するというのが龍陣じゃ。
儂は大体大まかに3段階程度で区切っておる。
第1段階は自分の周囲、手の届く範囲だけを制御する。
最低限ではあるものの、これができれば相手の龍陣によって力を吸われてしまうということは減るじゃろう。
第2段階は大体この小屋が入る程度の領域の制御じゃ。
近接戦闘での距離として少し広いくらいの範囲じゃな。お前さん達がやられたのはこの段階じゃろう。
第3段階はより大きくなり、街が入る規模と考えておる。
じゃが先日会ったであろう黒衣の騎士も儂も第2段階がいいところじゃ。
龍王様などは別じゃろうが、第3段階に人が至るには生半可な努力では無理じゃろうな。
そこの御子殿は将来的には第3段階に至るであろう。
とりあえずここにいる間に最低限第1段階だけでも習得しておかないとまた同じ目にあうじゃろうから頑張ると良いのぉ。』
龍陣に関してのざっくりとした説明を受けたところで、クリオが質問があると訊ねた。
『あの、私は龍脈の力を扱えないのですが、この前は皆と同じ様に力を吸われて倒れてしまいました。
龍陣は龍脈の力関係なく制御できるということでしょうか?』
『龍脈の力とは全ての力の源じゃ。ウィスもエレメントも元は龍脈を流れている力の一部に過ぎぬ。
じゃから龍陣の第2段階を会得すれば、生半可な力の持ち主が相手であれば一方的な戦いができるじゃろう。
龍陣以外にも身を守る方法はあるが、そのような使い手にはそう出会うものでもないじゃろう。
ちなみに昔は各街の領主になるためには最低限第1段階の龍陣が使える必要があったんじゃ。
今はどうだかわからんがのぉ。』
龍陣の説明を受けた後、老師はアルクス達を山中にある小屋の更に山奥にある洞窟へと案内した。
『あの、ここは一体?』
『龍陣を体で覚えるために良い場所じゃ。ほれ、この先はな龍穴と呼ばれておる。』
洞窟の中に力の奔流が溢れ出る場所があり、目には見えないもののその圧力に皆圧倒された。
『皆感じ取れたかと思うが、ここは龍脈の出口の1つじゃ。
エレメントの源泉ならば知っておるかと思うが、それのよりすごいやつじゃと思っておくと良いじゃろう。
龍陣の第1段階は自分の周りの力を占有できる様にすることじゃ。
普通は第1段階を体得してもより強い龍陣に力には負けてしまう。
そこで圧倒的な力の奔流に対して自分の力を保つことができる様にする、それがこの修行の狙いじゃ!』
老師が語気を強めに話していたことから、重要なことなのだろうと皆頷いていた。
『修行方法は簡単じゃ。ここで瞑想を行い龍脈の力を直に肌で感じ取る。
そして、感じ取った力を自分の周囲に維持できる様になったら修行完了じゃ。』
『なんだ、そんなことで良いのか。これでいいのか?...うわっ!』
スペルビアは老師の修行内容が簡単過ぎると思い、すぐに実践したところ急に見えない力に吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
『大丈夫か!?』
バルトロが近寄り介抱すると、老師はガハハと笑っていた。
『どうじゃ、この力の奔流の中で自らの力を維持することは難しいじゃろう?
激しい川の流れの中で流れに抗うのと同じようなものじゃからの。
じゃが、ここで耐えられる様になれば、龍王様以外の龍陣に負ける様なことはないだろうと儂は思っておる。』
スペルビアも身を以て体験したため、その重要性は理解したのか大人しく瞑想を始めた。
『少しずつじゃからな。いきなり力を込めるとさっきの様に吹き飛ばされるからの。
さて、クリオのお嬢ちゃんは別の特訓をすることにしようかの。』
『はい、よろしくお願いします!』
アルクス達はしばらく瞑想に励むことになった。
老師はクリオを連れて龍穴を出ると近くにある泉へと向かった。
そこでは竜達がのんびりと水浴びをしていた。
『素敵な場所…』
『ほっほっほ、儂と竜達のお気に入りの場所じゃよ。
さて、お主は水と風と…おそらく光あたりの魔術が得意じゃな?』
突然得意な魔術を当てられてクリオは驚き、頷くことしかできなかった。
『何故わかったと思う?
実は簡単なことでラピスを見ればわかるんじゃよ。』
『ラピスを見る、ですか?』
『あぁ、見るとは言っても実物を見るのではなく、ラピスが放つ力の色とでも良いのかのぉ。
お主のラピスはそろそろ孵化も近いし、色がよく見えるわい。』
『あの何度も質問して申し訳ないのですが、ラピスから何か生まれるのでしょうか?』
今度は老師が驚きの表情を浮かべていたが、何かを納得したらしく再び説明を開始した。
『そうじゃな。それを知らなかったとは…
ラピスとはな、簡単に言うと精霊の卵じゃな。
覚醒を行い魔力を与えるとその力を生み出し始める。
そして孵化すると精霊となり、共に生きる相棒として力を貸してくれる様になる。
契約とは違い、より強い絆で結ばれた関係となる。
孵化した直後はラピスがなくなることで魔術が少し弱くなるが、精霊の力を使えば気にはならないじゃろうな。』
クリオはアルクスを見て、いつかは自分も精霊と契約をしたいと思っていたが自分の中に精霊が眠っていたと知り不思議な気持ちになっていた。
『さて、孵化のためにもラピスを成長させないとのぉ。ところで、合成魔術は使えるかの?』
『はい、使えます!とは言っても先日使える様になったばかりですが…』
『いや、十分じゃよ。合成魔術を使える者はそうはおらん。後程見せてもらうとして、先に魔力を用いた陣の展開を教えておこう。』
『魔力の陣とは龍陣の様なものでしょうか?』
『そうじゃな。皆にわかりやすくするために龍脈の力を用いていたが、闘気を用いてウィスの流れを制御したり、魔力を用いてエレメントの流れを制御することも可能じゃ。其方はまずは自分の周囲の魔力を制御することから始めることとしよう。
魔術を使わずに魔力を放出することはできるかの?』
クリオは様々な動きをして魔力だけを放出できないかを試したが上手くいかなかった。
『難しいなぁ…闘気なら簡単にできるのに…』
『む、其方闘気を扱える魔術師だったのか?珍しいのぉ。それならば簡単じゃ。
闘気を練ることができるのであれば、それを魔力のみでやれば良いだけじゃ。』
『やってみます…あ、できた。』
『なかなか、見込みがあるのぉ。これなら孵化も早そうじゃ。』
そうしてアルクス達は龍陣の訓練、クリオはラピスの孵化としばらく老師の下で世話になることになった。
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