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黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-  作者: 八束ノ大和
第五章 中央編

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第91話 歓待

『この大陸には渦を描く様に山脈があります。山脈には数多くの竜種が生息しているため、あまりお勧めはできませんね…』


アルクス達は中央大陸のことを全く知らなかったため、ただ中央を目指せば良いものだと考えていた。

だが進み方によって難易度が変わるということがわかり、これからの対応を考える事にした。


『竜種だったらアーラもいるし、襲ってこないんじゃないかな?』

『スペルビアも確か威圧していたよね。』

『あぁ、だがアウレアンにいたあいつらとここにいる竜種が同じとは限らないからな。』

『どういうこと?』

『あそこにいた竜種は他世界から来た竜種の末裔で、わかっていると思うが程々の強さだ。だが、ここにいるのはおそらくこの世界の真正の竜種だろう。龍脈の力強さを鑑みるに相当の力を蓄えているだろう。御子様であればどうかわからないが、私の力はおそらく通用しないだろうな。』


スペルビアの発言により、山脈を越えていくのは厳しいだろうという見解が一同で一致した。


『時間はあるし、山脈を越えずに渦状に進んで行くことにしよう。』

『それはよかった。それであれば中央の都に辿り着くまでにある、8つの街の長の試練を受けられると良いでしょう。さすれば都に到達した時の待遇が違うはずです。』

『どういうことですか?中央大陸には8つ街が点在しているということでしょうか?』

『なに、昔からの古い慣習ですよ。各街の長に会って試練を乗り越えてから中央に辿り着くと試練を超えし者として特別な扱いを受けられます。あと街と言える規模のものは8つしかありませんがここみたいな村であれば数多く存在していますよ。』


アルクスがどうしようかと考えていると、皆乗り気な様子だった。


『なぁ、時間もあるし挑戦してみないか?自分たちの実力を測る良い機会になるしな。』

『全部の試練を乗り越えるくらいじゃないと龍騎士として未熟って言われるかも…』

『龍気を扱えなくても大丈夫かな…』

『強くなる機会だと捉えると良いのだろうな。』


『よし、じゃあ試練に挑戦して行こうと思います。』

『それは良かった、それではこれをお持ちください。』


村長は懐から龍らしき紋章が掘られた板を取り出した。


『試練の挑戦者の証です。これを街の領主館で見せていただければ試練に挑戦できますので。』


やけに準備が良く、何かしらの目的があって仕組まれていたのかとアルクスは感じたが顔には出さずに受け取った。


『ありがとうございます!』

『それでは良い旅を。長い旅となりますし食料も必要になるでしょう。パストルに用意させますので今日はうちに泊まっていって下さい。』


村長の家に泊まることになり、夜は宴が開かれアルクス達は村人達から歓待を受けることになった。

アルクス達だけでなく、召喚していた精霊達も村人達からすると敬意を示す対象らしく歓迎されていた。

今までの旅の話を聞かせると子ども達は目を輝かせて聞き入っていた。


『僕達も冒険するんだ!』

『そうだね、最低限の力とあとは一歩踏み出す勇気さえあればどうにでもなるさ。』

『そうだな、意外となんとかなるもんだ。』


子ども達は希望に溢れていたが、大人達は若干苦笑気味だった。


『どうしたんですか?』

『私達も小さい頃はあんなことを考えていたなと思い出しまして…』

『冒険はしなかったのですか?』

『いえ、山脈の方に出向いたり、子どもだけで街まで行ってみたりとしましたよ。

 大人達にはとても怒られましたが。ですが、私達にとっては大きな冒険でした。

 結局島の外に出ることはなかったですが、一度は出てみたかったなと思いますが…

 あ、でも都には行ったことがあるんですよ。』


アルクスは何故島の外に出ないのかを聞いてみたかったが、あまり聞ける雰囲気ではなかった。

その代わりに中央の都への道程や特産物などを聞いて、礼を言った。


翌日パストルが村長から依頼された大量の食料を持ってやってきた。


『村長ー、頼まれたもん持ってきただよー』

『あぁ、ありがとう。む、思ったよりも量が多いな。』


パストルは村長の家と同じくらいに積まれた果実やら野菜やらを持参していた。


『そりゃー、たくさん持ってきて欲しいって言われたから、頑張って集めてきただよー。

 だけど、こんなにいっぱいあってどうやって持っていくだー?』

『これは想っていたよりも多いな…アルクス君達は誰か空間術は使えるかい?』

『はい、僕が使えます。スペルビアは使えるかな?』

『いや、残念ながら私は使えないんだ…』


珍しくスペルビアが申し訳なさそうな顔をしていたため、バルトロが慰めていた。


『ちょっと多いけど、全部いけるかな…』


アルクスがパストルが持参した食料を龍珠の中へとしまうとパストルがたまげていた。


『すごいなー、今まであった食料はどこに行っただー?』

『これほどの収納量があるとは…相当な鍛錬を積んで来たのですな。』


パストルに龍珠の説明をすると村人達は皆龍気を扱うことができるが、龍珠を持っている人間はいないという。


『そういえば、スペルビアは龍珠は持っているの?』

『先程空間術を使えないと言ったのは龍珠を持っていないからというのもある。私達の種族は龍珠ではなく、竜珠という少し別の力が宿っている。そして、竜珠では空間術や召喚術などを扱うことができないのだ。

天空竜様はこの世界に来た時に龍珠を受け取ったと伺っているので、空間術や召喚術を扱うことができる。そういうわけでドラコ・レグルスには空間術の使い手はほとんどいない。』


アルクスは自身の内にある龍珠の重要性には気づいていたが、その希少性を改めて認識したのであった。


『食料ありがとうございました!これでしばらく補給に悩まずに進んでいけると思います。』

『ではお気をつけて。中央大陸を旅する上での注意点としては、夜は決して街や村の外に出ないようにして下さい。野宿はお勧めしません。必ずですよ!』


村長からの脅しの様な注意に対して、理由を尋ねたところ答えてもらえなかった。


『短い期間でしたが、おせわになりました!』


村の人々に礼を言ってアルクス達は旅立った。

珍しい客人達との別れを寂しそうにしていたが、村人達はアルクス達が見えなくなるまで手を振っていた。


『夜は外には出ていけないとのことだったし、次の村まで急ごう。』

『夜になると何が起きるんだろうな?』

『夜だけ魔獣が現れるとか?』

『山脈にいる竜が山を降りてくるとか。』

『わざわざ忠告してくれたんだ。それに従うのが良いだろう。』


スペルビアの言うことがもっともだと思い、皆足を早めた。

村を出てからは帝国の様に舗装された街道はなく、かろうじて人が通る場所が踏み固められているだけであった。

村への人の往来はあまりなく、たまに農作物を街へ持っていくくらいだとパストルが言っていた。


日が落ち始めた頃、ようやく次の村に辿り着くと最初の村と同様に歓待された。


『ありがたいことだな。』

『外からの人間なんて無視されたり冷たくされてもおかしくないのにね。』

『それだけ娯楽に飢えているんじゃない?私達の外の話で少しでも楽しんでもらえると良いけど。』


そうしてアルクス達は数日かけていくつかの村を超えて中央大陸で最初の街へと辿り着いた。

通って来た村とは違い、2階建て以上の建造物も複数建っていて、大陸の外の街並みと似ていた。


『外壁で囲われてはいないけど、割と普通の街並みだね。』

『アウレアンに少しだけ雰囲気が似ているかな。』

『そうだね、海に面しているって言うのも大きいのかも。』


特に街に入るために門番などもおらず、苦労することなく街中に入ることができた。

今までの村とは違い人の往来もある程度あるため、外から来たというだけで珍しがられることはなかった。

領主館を探したところ、すぐにそれとわかる大きな建物を街の中心に見つけることができた。


『さて、1つ目の試練はどんなものだろうか。皆気を引き締めて行こう!』

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