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黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-  作者: 八束ノ大和
第五章 中央編

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第89話 解放

 巨大な黒龍と化してたしまったアーラに闘気解放を応用した新しい技、龍気解放を使ったアルクス。

アーラから黒い靄を弾き出し、元の姿へと戻すことができた。

だが、アルクスは極度の消耗により、倒れてしまった。


『アルクス!』

『御子様!』


倒れたアルクスのもとへと駆け寄るアリシアとクリオ。

そして同じように倒れたアーラにはスペルビアが駆け寄った。


『アルクスは闘気解放はかなり疲れると言っていたからな。それを自分の中にあった龍気で試してみたんだから、しばらくは起きないかもな。強力な技には反動がある場合もあるしな。』

『大丈夫かな…』


アリシアとクリオは心配そうにアルクスの様子を眺めていた。


『御子様も大丈夫だろうか?』

『あぁ、アーラならしばらくすれば起きるだろう。黒い靄から解き放たれるとしばらくすれば起きるはずだ。俺もそうだったらしいし、クリオもそうだった。』


アリシア達は倒れたアルクスとアーラを看病することにした。


『…ピ、ピィ?』


しばらくしてアーラが目を覚ました。


『御子様!』

『おぉ、アーラ起きたか。大丈夫か?

 巨大な黒龍になっていたお前をアルクスが全力で助けてくれたんだぞ、起きたら礼でも言っておきな。』


バルトロがアーラに何が起きていたかを話すと、アーラも申し訳なさそうにアルクスを見守っていた。

しばらくした後、アルクスも目を覚ました。


『う、いてててて….また、倒れちゃったかな…』

『アルクス!大丈夫?』

『うん、もう大丈夫だよ。アーラは…どうやら無事みたいだね、良かった。』


アルクスはアーラの無事を確認し、ほっと一息ついた。

アーラもアルクスが目を覚まし、嬉しそうに鳴いて感謝の意を表し、アルクスの周りを飛び交うものの疲れが出たのかへたりこんでしまったため、アルクスの龍珠の中で休むことにした。

極度の疲労によって歩くのも大変だったアルクスはバルトロに背負われて進むことになった。


洞窟の中を進みながら、スペルビアは皆が来るまでに何があったのかを語った。


−−私が黒い靄を振り払っていると突然師匠のドクが現れた。

師匠がこんなところにいるのは明らかにおかしいとわかっていたため、目の前の師匠が本物と違いどれだけの力を持っているかが気になり、先手必勝と殴りかかったんだ。

すると避けることも守ることもしなかった師匠は殴った部分からすぐに黒い靄に変わっていき、あっさりと消えてしまった。

肩透かしをくらった感じだったな。

その後は黒い靄が現れなくなり、何事もなく歩き続けていた。

しばらく進むとこれ幸いに御子様を見つけることができた。

御子様は私に気づかずに次々と現れる黒い靄をムシャムシャと食べていたためとても驚いた。

特に問題なさそうに食べ続けていたため、「さすがは御子様だ」と感心していたのだが、そこで突然限界がきたのか体の内側から黒い靄が溢れ出して御子様を覆ってしまった。

そして黒い靄が増えるにしたがって御子様の体が巨大化していき先程の黒龍へと変わってしまったんだ。

暴れる御子様を止めようとしたんだが、動くものを視界に捉えると攻撃してくるため、倒すこともできずただ逃げ回ることしかできなかった。

そこへアルクス達がやってきて、あとはお前達の知る通りだな。−−


『バルトロ兄さんとクリオは黒い靄に取り憑かれたみたいだけど、アーラは体の中に取り込んだから他の2人とは違ったのかな。』

『黒い靄を食べるだなんて…』

『まぁ、皆無事で良かったな。』

『あれは見たものが思い描く人に変化する魔獣のようなものなのだろうか?』


誰も答えを出すことはできなかったが、この先へと進めば答えがあるかもしれないということは感じていた。

スペルビアの話を聞き終わり少し歩くと今までの洞窟とは急に景色が変わり、大きな広間へとたどりついた。


『ここは洞窟じゃないね。もしかして転移する前の場所…?』

『装飾とかちょっと違うけど…あ、見て!あそこに何かいるよ!』


アリシアが指し示した場所を見ると、転移直前に見た守護像が小さくなったかのような像が鎮座していた。

アルクス達が近づくとこちらに反応したのか守護像の目元に光が灯り、徐に立ち上がってこちらを向いて話しかけてきた。


『ようこそいらっしゃいました。ここへ人が来るなんて一体いつ以来でしょうか…

 黒い靄による歓迎は楽しんでいただけましたでしょうか?あれは心の中を映し出す鏡みたいなものです。

 まぁ、少し歪んでいたかもしれませんがね?』


守護像はとても愉快そうに歪んだ笑顔を見せてきた。


『さて、貴方方はここに一体何を求めていらっしゃったのですか?』

『その前に教えて欲しいのですが、ここは一体どこなんでしょうか?』

『あれ、知らないでいらっしゃったのですか?ここはこの世界の中央大陸へと繋がる空間ですよ。』

『やっぱり…であればそこを通してもらい、中央大陸へ行くのが僕らの目的だ!』


守護像はニヤニヤとして笑みを浮かべたかと思うと、急に獰猛な笑顔へと変わった。


『ならばその資格があるか、力を見せてください!』


守護像が吼えた、そうアルクスが感じ取ると守護像は以前見たことがある様な巨大な姿へと巨大化した。


『俺が前にでる!』

『巨大化して勝てると思っているなら、その甘い考えが間違っていたと示してみよう!』


バルトロが盾を構えて前に出て、スペルビアが上手く敵の攻撃を避けながら両手の爪で切り裂いた。

だが守護像も硬く、あまりダメージを与えられた様には見えなかった。


『なかなかやるな、だがこれはどうかな?』


巨大化したことで守護像の口調も変わっていた。

そして、守護像が片手を上げると広間の壁中に窓が開いたかと思うと、その中から筒の様なものが現れた。


『この広間全てが私の一部だ。全て受け切れるかな?』


守護像が手を下ろすと筒の中から魔術や矢や鉄の弾など多種多様な攻撃が四方八方から飛び交った。


『皆、俺の後ろに下がってくれ!』


バルトロがアルクスから龍気を引き出して周囲に障壁を展開して、飛び交う攻撃を受けていた。


『バルトロ兄さん、大丈夫?』

『アルクスの龍気があるうちは大丈夫だが、さっき龍気解放で結構使っただろ?

 あと全方位に障壁を張るのは結構しんどいから長時間は厳しいな…』

『全方位は必要ないかな、とりあえず後方のあの筒を壊せばなんとかならないかな…』

『それなら私に任せて!』


クリオが集中し、魔術を発動した。


『荒れ狂う疾風よ、刃となりて敵を切り裂け!』


バルトロの後方の筒に対して複数の風の刃を放ち、筒を切り落とした。

切り落とした筒の攻撃は止み、アルクス達は余裕ができたため後方から横に向かって敵の攻撃設備を破壊していった。


『これを乗り越えるとはな。良いだろう、私の力を見せてやろう!』


守護像がバルトロに向かっていく間に、アルクスは姿を隠し他の仲間達が守護像へと攻撃へ向かった。

バルトロも意図を理解したのか、守護像を挑発した。


『デカブツが俺の守りを貫けると思うなよ!』

『ふん、試せばわかることよ!』


バルトロが守護像の猛攻を受けている間に、アリシアが様々な投擲攻撃を試みるもあまり効果がなかった。


『か、硬い…』

『吹き荒れる風よ、彼の者を押し返せ!』


クリオが魔術で動きを止めようとするも、以前の遺跡の守護像達とは違い足止めはできなかった。


『この程度の風で私を止められるものか!』

『ならばこれでどうだ!』


スペルビアが渾身の一撃を正面から叩きつけるも、少しだけ傷をつけただけでやはり効果はなかった。


『くっ…』

『わかったか、お前達の力では私には勝てないということ…ガッ!何が起きた!?』


その時、守護像の左腕がズシンと地面に落ちる音がした。


『よし、関節を狙えばいけるみたいだ!』


背後から飛びかかったアルクスは闘気解放後の渾身の一撃で守護像の関節目掛けて斬りかかったところ、上手いこと切り離すことができた。


『わ、私の腕が…』


守護像が怒りに震え、振動が伝わってきたためアルクス達はより一層激しい攻撃に備えて気を引き締め治した。


『私の負けだ…』

『え…!?』


守護像は負けを認めると最初の様に小さくなり、敵意がないことを示した。

アルクスは今回は闘気解放の疲労に耐えて、ギリギリ立っていることができた。


『貴方達の力は見せてもらいました。

 黒い靄を切り抜ける心の力と怒涛の攻撃を抜けて強固な守りを持つ私を倒す武の力。

 良いでしょう、中央大陸への道を開きます。』


守護像が地面へ腕を差し込むと広間の中心に門の様なものが現れた。

門の中は歪んでいて何があるのかはアルクス達は見てもわからなかった。


『皆さんこれをお持ちください。

 これは中央大陸に正しい手順で来たことを示す通行証みたいなものです。

 この門はこれを持たないとどこへ飛ばされるかわかりませんのでしっかりと持っていてください。』


守護像から全員に魔石の様な光る石のついた首飾りを渡された。


『私の腕が落とされるなんて一体いつぶりでしょうか…

 久しぶりに骨のある方にお会いできて私も嬉しいです。それでは龍王様によろしくお伝えて下さい…』


守護像はそういうと元いた位置に戻ると目の光が消えて動かなくなった。


『ふぅ、危なかったな。』

『兄さんとクリオが大活躍だったね!』

『魔術の訓練をした成果が出たかな!』

『私もまだまだだな、もっと強くならないと…』

『よし、じゃあこの門を超えれば中央大陸のはずだ。

 何があるかわからないから気をつけて行こう。』


門の中へ足を進めると空間が歪み上下の感覚がなくなった。


『皆大丈夫!?』

『なんとか…』


もがきながらも前へ前へと進んでいくと周囲の景色が回転して、落ちる感覚に囚われた瞬間に再び大地を踏みしめる感触が現れた。

目の前が明るくなると小さな神殿の様な祠の前に皆で立っていた。


『ここは…中央大陸についたのかな?』

『ここが中央の大陸?』

『なんだか静かで穏やかな場所だね。』

『気持ちの良い風が吹いているな。』


門を通ってきた出口であろう祠の中を見てみたがそこには人の気配はなかった。

そして祠の裏側は断崖絶壁になっていて、一面に広がる海が見えた。


『この周りの海流は激流って感じはしないな。確か中央大陸の周囲は渦が巻いているって話じゃなかったか?ここであっているのか?』

『わからないから、とりあえずどこか近くの街を探して進んでみるしかないんじゃない?』

『そうだね、どんな魔獣がいるかもわからないし気を引き締めていこう。』



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