第81話 商都
港町を出発したアルクス達一行。
街道沿いは魔獣など全然現れずに安全。
結構商人らしき移動が頻繁にあった。
『すごい人の移動量だね。王国だとこんなに人がいるのは王都の付近くらいじゃないかな。』
『それだけ帝国が国として栄えているってことか。』
『こんな国の端まで街道が整備されているんだもん。そりゃあね。』
『確かに王国は辺境の辺りだとあまり整備されていなかったな…』
『人族は飛べないから、綺麗な道を作るんだな。ドラコ・レグルスではこんな道はなかった。』
『そういえばそうだね。その辺りは国というよりは種族の違いが大きそうだね。』
1日程歩いて次の街へたどり着くと、街は王国の王都以外ではみたことがない様な立派な壁で囲われていた。
道中では魔獣が出ることもなく、安全な道程だった。
『これはすごいな。』
『魔獣が全然出ないのにこんな壁があるということは、この国は戦争でもしてるのか?』
『いや、今の帝国の統治は安定していると聞いているよ。多分、昔の名残じゃないかな。』
街の入り口で簡単な検問を通過して、街中で情報収集を行うことにした。
帝国の各街の運営方法は各種族の王が皇帝から任命された領主として1つの国の様に街々を治めていた。
この街はどうやら犬系統の獣人が治めている様であった。
昔は種族間で小さないざこざが多く小規模な戦争が多発していたが、数代前の皇帝に変わった頃からは武力での押さえ込みに成功し、種族間の戦争はなくなったらしい。
だが闘争の場は軍の派閥争いに移行しただけで部隊ごとに種族が固まっていて、他の部隊に負けまいと成果を競っていた。
それによって一層帝国軍の武力は増強され、その強化された軍で王国に攻め込もうという声が大きくなっている様子だった。
『帝国が王国に戦争を仕掛けるって話を聞いたけど、大丈夫かな…』
『小競り合いなら昔から良くやってるし、大丈夫じゃないかな?
それに騎士団には兄様もいるし、そろそろ次の蒼天十二将に選ばれていてもおかしくないんじゃないかな。』
『へぇ、アルクスにはお兄さんがいるんだ。どんな方なの?』
クリオはアルクスに兄がいると聞いて興味がありそうだった。
『強くて賢くて優しくてとても素晴らしい人だよ!』
『確かにウィル兄さんを形容するとそうとしか言いようがないな。』
『アルクスだって強くて賢くて優しいよ?』
『アルクスのお兄さんがとても素敵な方だって言うのは分かったわ。一度お会いしてみたいわね。』
『私も一度手合わせしてみたいものだ。』
ウィルトゥースの話になり、それぞれの思いは違うものの皆会ってみたいという気持ちになっていた。
『そうだ、ルーナに手紙を書かないと。たまに書いてはいるけど、ちゃんと届いているのかな…』
『届いてなかったらルーナちゃん寂しがるだろうね。』
『探索者協会に依頼すれば届けてくれるだろうが、国を越えると紛失も多いと言うからな。』
『全部届くとは思っていないし、こまめに書くことにするよ。』
『手紙かぁ、書いたことがないけど私もアルフグラーティに出した方が良いのかな…』
『テルミヌス宛なら届きそうだけど、大森林の中には届かないんじゃないかな?』
『確かにそうね。今度戻ったら連絡方法とか相談しておいた方が良さそうね。』
『手紙か…ドラコ・レグルスでは皆いつでも顔を合わせて話していたから、そういった文化はなかったな。生息域が広くて、移動が困難だとその様に交流を図るのか。なるほど。』
クリオとスペルビアは手紙を書いたことがない様子であった。
大森林や天空の島という閉じた世界に住んでいると必要のないことなのかもしれないが、遠くに住んでいる家族や知人に自身の近況を伝える手段があるのは良いものだとアルクスはクリオとスペルビアに説明した。
スペルビアは旅の道中はドラコ・レグルスへの連絡方法はないが、天空竜は他の龍王との連絡手段がある様子らしかったため、龍王に会うことで無事を伝えることができるだろうと言っていた。
『あれ、教会じゃない?帝国の宗教ってなんだっけ?種族によって違うのかな。』
『帝国の宗教はデストールだね。デストールは破壊神様を崇めているけど、帝国の各種族は以前はそれぞれに伝わる神を崇めていたんだ。』
『神様ってそんなに種類がいるのか?』
『おそらくアルフグラーティのハイエルフみたいなもので、各種族の英雄的な存在じゃないかしら?』
『そうだね、クリオの認識で間違いないよ。偉大なご先祖様を崇めているというのが近いんじゃないかな。』
『なるほどねー。ねぇ、スペルビア。そういえばドラコ・レグルスには宗教ってあるの?』
アリシアは宗教の話が始まった途端静かになったスペルビアの様子が気になっていた。
だが質問をした途端、スペルビアの表情は憤怒の色に包まれていた。
『神など!私達の一族は神がいなくなりさえしなければ、苦労することはなかったのだ。
天空竜様もお優しいから何も言わないが、世界のことよりも自分達のことばかり考えて…』
『なるほど、竜人はそういう風に考えているんだな。だがスペルビアはこの世界で生まれたはずだ。
ドラコ・レグルスの人達から教わったのか?』
神に対する怨嗟の声を上げ始めたスペルビアをバルトロが止めて、話を変えようとした。
『あぁ、そうだ。以前この世界に逃れてきた方々は未だに我が種族がどういった歴史を歩んできたのかを教えてくれるんだ。』
『そりゃあ大変だっただろうな。国を色々移動するだけでも大変なのに、世界を跨ぐなんて考えられないぜ。だが、スペルビア。君が神から被害を受けたわけじゃないなら悪くいうのはやめておいた方がいいんじゃないか?神だって世界によって違うだろう。』
バルトロが諭すことでスペルビアは少し話を聞こうという姿勢になっていた。
『あぁ、確かにそうかもしれないな。老人達には知識や知恵があったが、自分達が体験した恨みなども蓄積されているからな。その恨みは私達、若い竜人には関係はあるが必要のないものだな。』
『まぁ、俺達も不授に生まれたことで神様を恨むことはあったけどな。
でも逆にそのお陰でアルクス達と一緒に旅をして龍王様に会って、龍騎士なんて大層なものになってと何があるかわからないもんだ。
過去を嘆いても何もならないし、前を向いて楽しんだ方がいいぞ!』
『ふっ、お前の言う通りかもな。ちゃんと自分の目で見てから判断することにしよう。』
バルトロは言いたいことがスペルビアに伝わって嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべていた。
『兄さんってスペルビアに対して話す時だけ、賢くなる気がする。』
『考えて会話を楽しんでいるんだったら、良いんじゃないかな。』
『楽しいなら何よりじゃない。』
『そうそう、帝国ではデストールの考え方が浸透しているんだけど、割と力こそ全てな考え方だから不授だから差別されたりとかはないみたいだよ。自らの与えられたものを最大限に活かしている人ほど評価されるみたいだ。だから才能に胡座をかいて努力していない場合は不授で才能を発揮している人よりも扱いは悪いみたいだよ。獣人の人達は身体能力に恵まれている種族も多いしね。』
『それなら不授の人にも住みやすいのかな?』
『いや、最初から帝国で生まれ育ったならともかく、力が無いと思って育って来た人が途中で生き方を変えるのもなかなか難しいからね…』
『確かに私達もアルクスが連れ出してくれなかったら、あそこから出ることはなかったかも…』
アルクスは道すがら帝国の文化や文明など知っている範囲での知識を皆に共有し、帝国での常識から外れた行動を取らないようにと念を押した。
その後、いくつかの街を経て帝国第二の都市である商都メルクーリへとたどり着いた。
帝国では帝都が政治・軍事の中心であるのに対して、経済の中心は商都メルクーリであり、この都市が帝国の流通の肝となっていた。
『この街は色んな種族がいるんだね。』
『商売の中心地ってことは人が集まるんだろうな。』
『うちの支店もいつかここに…』
『王都よりも全然人が多いね。』
『なんでこんなに人がいっぱいいるんだ。狭いと思わないのか?』
『そうよね、もっと街を広げれば良いのに。』
商都の人の多さに皆、思い思いの感想を浮かべた。
商都に着いてから情報を集めていると、やはり帝都の方では軍備が進められているらしかった。
商都でも兵站のための食糧が集められていて影響がないわけではないとのことだった。
『まぁ帝都はここから結構離れているからな。ここが戦場になることはないだろう。
だが物資をどれだけ早く用意できるかが勝負だ。今まさに俺達商人にとっての戦争中と言っても過言じゃないかもな。』
気の良い商店の親父さんが忙しそうにしつつも色々と教えてくれた。
情報料の代わりに大量に商品を買うことでお互い気持ちの良い取引ができた。
『やっぱり王国と帝国で戦争が始まるんだね。』
『今の俺達には関係ない話だろ。』
『同じ種族同士で争っているというのは人族というのは不思議だな。』
『帝国側には獣人が多いみたいだけどね。確かにエルフ同士で戦争なんて考えたこともないわ。』
『この街に数日間滞在して海底洞窟までの準備をするよ。数日で短いけど楽しんで。
特にスペルビアは色々見て回るといいと思うよ。』
商都メルクーリに数日間滞在することになり、皆思い思いの日々を過ごすことになった。
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