第73話 談話
アウレアンの街に戻り、ドクトリアおすすめの「海猫のとまり木亭」に入り、奥の個室へ向かうとそこにはヴォルナー達「雷吼狼牙」が既に待っていた。
『ヴォルナーさん!?』
『久しぶりだな、アルクス。元気にしていたか?』
突然のヴォルナーとの出会いに戸惑うアルクスとそれを知っていて黙っていたバルトロ。
戸惑いつつもアリシアとバルトロと共にドクトリアからの依頼を受けていたという話を聞いて納得の表情を浮かべた。
『ところでヴォルナーさん、あそこで皆さんが転移した後はどこにいたのでしょうか?』
『あぁ、シュヴァルトとヴァイガーを追いかけて行くと急に視界が変わったと思ったらアウレアンの街が見渡せる丘の上にいたよ。2人とも急に転移したことで驚いて警戒していたが、我々が合流してからは街の近くということですぐに街に入り、ここで待っていたんだ。君達が無事であればここに来てくれるということがわかったいたからな。』
『そうだったのですね。何はともあれ皆さん無事で良かったです。一旦ここで依頼は完了にしたいと思いますので、お約束の謝礼をお渡しします。』
ドクトリアはそう言うとテーブルの上に金貨の入った袋を2つ置いた。
『こんなにもらって良いんですか?』
想定していた以上に重そうな金貨の音にアリシアが反応した。
『えぇ、竜のいる領域に繋がっているとはとてつもない発見でしたし、無事連れ帰っていただけたという意味も込めてます。これ以上の調査を行うにはドラゴンスレイヤーとも呼ばれる竜殺しの実績のある探索者の方を雇った方が良いでしょうし、竜にまつわる文献の調査なども必要なのでしばらくは準備に時間がかかりそうです。本当は空振りに終わるかもしれないと思っていたので、とても感謝してます!
では私は色々と調べることがありますので失礼します。』
ドクトリアはこれからやることがあって忙しいというと感謝の気持ちを示して早々に店を出ていってしまった。
『短時間で稼げる割の良い仕事だったな!』
『思った以上に危険でしたけど、竜と戦うことにならなくて本当に良かったですね…』
シュヴァルトは楽して稼げて良かったと言い、ファルートは本当に危なかったと同じチームでもそれぞれ違う感想が出ているのがチームの色を表していた。
『よし、依頼の話はこれで終わりとしよう。まずは飯でも食べながらアルクス達の今までの話でも聞こうじゃないか。』
そしてアルクスは辺境でヴォルナー達と別れた後にブラッドタイガーを倒して探索者になることを認めてもらったこと、一度王都に戻って旧友や兄と戦ったこと、龍と出会い力を授かったこと、連邦の各地を冒険したこと、航海で海に投げ出された後近くの島でちょっとした冒険をしたことなど今までの旅のあらましを伝えた。
ヴォルナー達「雷吼狼牙」の面々は関心しつつ、クリオも聞いたことがない話が多かったからか興味深そうにのめり込んで聞き入っていた。
『なるほど、思った以上に様々な冒険をして来たんだな。出会った頃とは見違えたわけだ。
ところで竜から力を授かったということだったが、先程遭遇した竜達とはコミュニケーションを取れるものなのだろうか?』
アルクスの話の中で龍から力を授かったという話に対して、ヴォルナー達は竜としか出会ったことがなかったため理解できないでいた。
『あー、それはですね。アルクスの話に出た龍と俺達が先程遭遇した竜とはおそらく全然別物なのではないかと思います。』
『さっきの竜達は強そうだったけど龍王様達と違って神々しい感じはなかったよね。
言葉にしづらいけど、纏ってる空気って言えば良いのかな?』
竜と龍の両方を見たことがあるアリシアとバルトロが説明しようとするもいまいち伝わらない様子だった。
『アリシアやヴォルナーさん達が会った竜のことは僕は現物を見たことがないのでなんとも言えないですけど、僕達に力を授けてくれた龍の子どもでしたらすぐ会えますよ。
アーラ、出て来てくれるかな?』
アルクスがそう言って龍珠からアーラを呼び出した。
アーラは少し眠そうにしていたが、「雷吼狼牙」の面々を見ると「ぴぃ」と挨拶するように軽く鳴き、目の前にあった食事を食べ始めた。
『この子はアーラと言います。少し前に生まれたばかりですが、成長が早いのかもう色々できるんですよ。普段は僕の龍珠という空間の中で過ごしています。』
ヴォルナー達「雷吼狼牙」の面々は呆気に取られつつ、初めて見た龍の姿に夢中になっていた。
『これが龍か。先程見た竜とは似ている様な気もするが、発している気からは全然違う種族に見えるな。』
『そうですね。今まで竜に関する情報は文献などで有名どころは押さえておいたつもりでしたが、どの種族とも違いそうですね。』
『これ、食べるかな?』
『小さい…』
皆に見つめられて照れたのか、アーラは早々に食事を終えて龍珠の中へと引っ込んでいってしまった。
『恥ずかしかったみたいですね。まぁこんな感じでなんとか旅しています。』
『いや、驚かされるばかりだ。探索者生活も長くなってきて割と世界のことを知った気になっていたが、まだまだ我々の知らないことは多そうだな。』
『そうですね、アウレアンに来て良かったと思いますよ。アルフグラーティに行くのも初めてですし、きっといろんな驚きがありそうですね。』
未知との出会いを楽しもうとしている「雷吼狼牙」の表情を見て、アルクス達はこれが本当の探索者なんだなと先輩達への尊敬の念を持っていた。
『アルフグラーティに行くんですか?クリオ、何か迷わない方法ってあるかな。』
『えぇ、もちろんよ。普通に行ったら絶対辿り着けないからね。テルミヌス経由で行くのであれば、宿屋の主人にこの手紙を渡してもらえますか?』
クリオは手早く手紙を認めるとファルートへと渡した。
『アルフグラーティのある大森林は迷いの森とも呼ばれていて訪れる人を惑わせますが、この手紙を見せれば迷わずにアルフグラーティへ行く方法を教えてもらえるはずです。』
『それはありがとうございます。普通に行けるものだと思っていたので、そのまま行ってたら迷っていたでしょうね。』
『あぁ、思ったよりも難易度の高い依頼だったのかもしれないな。ただ荷物を持っていくだけの割に報酬が良いと思っていたんだ。
さて、話は変わるがアルクス達はこの後どうするんだ?』
『僕達はアウレアンにもう少し滞在してから帝国に向かおうと思っています。
先程龍王様から力を授かった話をしましたが、帝国にいる龍王様に会わないといけなくて。』
『龍王か、今まで帝国でそんな話は聞いたことはないな。場所の目処はついているのか?』
ヴォルナーの質問に対して、アルクスは地図を広げてこの山の辺りだということを伝えた。
『こ、ここは…』
『アルクス、悪いことは言わねぇ。命が惜しかったらここに行くのはやめとけ。』
ヴォルナー達が絶句し、いつも軽い口調のシュヴァルトが真顔になっていることからどれだけ危険な場所であるかを察することができた。
『危険な場所なんですね…でも僕達はこれでも龍王様に認められた龍騎士です。
まだ実力は足りないかもしれないですが、力をつけて向かうことにしますよ。』
ヴォルナー達はやはりそうなるだろうなという様な表情をして諦めた様子だった。
『そうだよな、言ってやめるようであれば真の探索者とは言えないか。
無謀とも言われる挑戦を成し遂げてこその探索者人生か。だが蛮勇にはならないように、しっかりと準備をして臨むんだぞ。』
その後、帝国に渡ってからどの様な経路をとれば一番安全に辿り着けるか、現地では何を気をつけるべきかということを細かく教わった。
『生きていればまた会えるだろう。もし連絡を取りたい時が来れば探索者協会で「雷吼狼牙」宛の伝言を頼む。その際「雷牙」と文中に入れておいてくれ。信頼できるものからのメッセージだとわかるからな。
あとお前達に連絡を取りたい時のためにパーティ名を教えて欲しいのだが。』
パーティ名と聞かれて4人は顔を見合わせた。
今まで必要になったことがなかったため、考えたこともなかったのだ。
『龍騎士が集まってるから龍騎士団とか?』
『それはちょっと安直じゃないか?龍と絡めて龍の翼とか。』
『アーラ様の色をとって碧龍団なんてどうかしら?」
3人の意見を元にアルクスは
『じゃあ「碧龍の翼」で!いつか龍騎士の仲間が増えたら碧龍騎士団って名乗りたいね。』
『「碧龍の翼」か、良い名だ。では何かあれば「碧龍の翼」宛に探索者協会で伝言をすることにする。文中に「龍騎士」と入っていれば我々からの連絡だと認識してくれ。』
パーティ名も決まり、その日は「雷吼狼牙」と「碧龍の翼」は夜明けまで語り明かした。
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