第53話 突破
一度宿に戻り、何が起きたのかを話し合った。
途中までは龍脈沿いに境界を越えて森の奥へと進んでいたが、途中で境界を越えた時に森の外へと出てしまっていた。
「多分設置型の転移術みたいなものだと思うんだけど、もしかしたら別に正しい道があったのかもしれない。」
「じゃあもう一回行ってみて、最後に外に出された時の場所で探してみる?」
「だが境界を超えて行った先に、本当に目的地に辿り着けるのだろうか?」
「確かにバルトロ兄さんの言う通りでもしかしたら森に侵入した者達に対する罠かもしれないね。」
「じゃあどうするの?」
「ちょっと試してみたいことがあるからもう一度森に行ってみようか。」
再度街を出て、森の奥へと進んで行った。
「この辺りでいいかな。アリシア、今どの辺りかわかる?」
「ちょっと待ってて、上の方から見てみる。」
そう言ってアリシアは脚に闘気を込めて跳躍し、大きな樹の上まで登っていった。
しばらくしてから降りてくると何かを見つけた様子だった。
「森の奥に来ているのは間違いなさそうだったよ。そういえば、あっちの方に1本すごく大きな樹が生えていたよ。」
現在地がどこなのかはよくわからないけど、アリシアが指さした方角はおそらくアルフグラーティの中心に生えていると言われるアエテルの大樹だろう。
「ありがとう、そこが目的地の方角だよ。とりあえず次の境界を探してみようか。」
そうして龍脈沿いに進み、途切れている場所を見つけた。
「ここが次の境界だけど、多分ここを越えるとまた森の外に出てしまうはずだよ。
よく見ると今までと違って何か別の力が働いているみたい。」
龍脈に手を置き、龍術の空間術で無理やり小さいながら新しい空間を作り出して、内側から力を込めると何かが割れたような音がするとともに作り出した空間は消え去った。
そして森に入ってから常に漂っていた濃霧が急に薄くなり始めた。
「これって上手くいったってこと?」
「まだこれが正しいかはわからないけど、とりあえず先には進めるようになったと思うよ。」
「罠を解除したってことか。これじゃあ普通の人間は奥に進めないな。」
霧が晴れた方向に向かって進むと急に一面の花畑が眼前に現れた。
「うわぁ、綺麗!こんなところがあったんだ。」
美しい光景にアリシアが夢中になっていると周囲に複数の何者かの気配があった。
「アリシア、気をつけて。周囲に何かいる。」
バルトロ兄さんは無言で盾を構えて前に出た。
『お前達は何者だ!エルフでも無いのに、なぜこの花畑にやってきた!』
姿を見せずに警戒している様子だが、おそらくエルフだろう。突然現れたエルフではないただの人間に戸惑っているのだろうか。
「とりあえず僕が対応するから2人はじっとしていて。」
そう言うと2人は警戒は解かないものの、静かに頷いた。
『私達は探索者です。この大森林の奥にあると言われている渓谷を目指して旅をしております。
エルフの皆様に害をなすつもりはありませんので、まずは姿をお見せいただけませんでしょうか?』
両手をあげて、戦う意思は無いことを伝えると理解してもらえたのか森の中から姿を現した。
どうやら10人以上のエルフに囲まれていたらしい。
『人族の探索者達よ、目的はわかったがどのようにして我らが森の迷いを抜け出したのだ?
歩みを進めても森の中を彷徨うか森の外に出るかしかなかったかと思うが。』
まだ警戒はされている様子だった。
おそらく大森林の中を探索者に荒らされたり、アルフグラーティに勝手に入ってこないようにするための防衛設備を突破されたようなものだし、警戒するのは当然か。
正直に話して反応を伺った方が良さそうかな。
『はい、おっしゃる通りで一度は森の中を彷徨った後、森の外に出されました。そのため、今回は森の外に追い出される地点の仕掛けを空間術で破壊したところ、この花畑へと繋がる道が開けたので進んできただけです。』
どうやって来たのかを伝えたところ、エルフ達は何だか話し込んでしまった。
『空間術を使えると言うのは本当だろうか?いや、迷わずにここまでこれたのだから真実なのであろう。お前達を通して良いかどうか我々では判断がつかないため、アルフグラーティまで来てもらおう。我々に害をなすことがなければ、我々も何もしない。』
エルフ達の申し出に了承し、ついていくことにした。
エルフ達は見たところ、統率も取れていて、軽装ながらも質の良い武具を装備しているところから、アルフグラーティの騎士団なのだろうか。
道中、獣や魔獣が現れることがあったが危うげなく対処を行なっていて、練度が高いこともうかがうことができた。
「なかなか強そうだな。だが、あまり守りは強くなさそうに見える。」
「連携もしっかり取れてるね。遠距離の戦い方が主だから参考になりそう。」
2人はエルフ達の戦い方を見て、自分達に取り込もうと考えている様子だった。今まで誰かに教わる修行は数をこなして来たけれど、他の人達の戦いから見て学ぶということはあまりなかったな。機会がなかったっていうのもあるけど、自分も人から技術を盗むことを覚えていかないと。
エルフ達の様子をよく観察しながら進んでいくと、樹木でできた家が並ぶ街へと辿り着いた。
そして街の奥には遠くに見えていたアエテルの大樹が聳え立っていた。
「すごい景色だね。」
「あぁ。」
「これが、アルフグラーティか。」
人間の住む街とは様相が違い、驚きのあまりに3人揃ってその偉大さに呆気に取られてしまった。
『ハハハ、アエテルの大樹の素晴らしさに言葉もないか。
アルフグラーティへようこそ。これからお前達は客人として扱われることになる。
その後どうなるかは長達の判断次第だ。』
とりあえずは受け入れてくれる様子だったが、街中のエルフ達は人族が珍しいのか遠巻きからの食い入るように見つめる視線が多くて気になった。
「やっぱり人間は珍しいのかな。」
「そうだろうな。他の街と違ってここにはエルフしか見当たらない。思ったよりも排他的な種族なのかもしれない。」
「長の人達に会ったら色々教えて貰えばいいよ。初めてみるものばかりで少し興奮してきたよ。」
目に入るもの全てが新しいものに見えて興奮してきた。
今まで通って来た連邦の街や村は人族以外が住んでいたとしても、やはり人族の暮らす場所だったんだなと実感する。自分達と違う種族が何を感じ、何を大事にして、どうやって生きていっているのかを知る機会だと思い、僕は「知りたい!」と思う知的好奇心が久しぶりに刺激されているのを感じた。
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