第51話 闘技
翌日出来上がった武器を受け取りに武器屋に行った。
『おぉ、お前さん達か。ちゃんと武器に闘玉を仕込めたぞ。
ほら、とりあえず試し切りをしてみな。』
僕達は闘玉によって改造された武器を手に武器屋の裏庭に出て試し切りを行うことにした。
『親方気合い入っちゃって、あの後ずっと武器をいじってたんですよ。
お陰でこっちは眠いのなんのって。ふわぁ…』
店員さんはそう言うと寝てしまった。
闘気を込めて武器を振るうと以前よりも武器に集まる闘気が増加したような手触りを覚えた。
アリシアとバルトロ兄さんも同じことを感じたらしく、武器の強化は成功したらしい。
『おぉ、闘気の使いこなしは十分なようだな。ちゃんと闘玉で闘気が増幅されてる。
さて、これで終わらないのが闘玉のすごいところだ。
実は闘気使いの中には闘気に炎や雷を乗せることができるとんでもない奴らがいるんだが、闘玉と組み合わさった武器でも闘気に炎や雷を乗せることができるんだ。
ちょっと最初の関門が難しいんだが、まずは精霊に会って闘玉に力を込めてもらう。
それだけでしばらくの間、その精霊の力を闘気に乗せることができるようになるってわけだ。
まぁ、精霊なんてそうそう会えるもんじゃないが、もし大森林に行くなら運が良ければ会えるかもな。』
親方が言うには、この闘玉で強化された武器を使えば以前ヴォルナーさんが見せてくれた雷牙のように、闘気に雷などを乗せることができるらしい。
確かヴォルナーさんは雷の精霊に愛されていると言ってたから僕の場合は水や土を乗せることができると言うことだろうか。
あまり武器を用いた接近戦で使えるイメージがないけどものは試しでとりあえず呼んでみるとしよう。
フルーとナトゥを召喚してみた。
「ナンジャラホイ」「キョウハナニスル」
「実は2柱の力をこの闘玉に込めて欲しいんだけど、それってできるかな?」
「トウギョクカ、ワカッタ」「カンタンダヨ」
フルーとナトゥから発せられた青と黄の光が武器の闘玉の中へと注がれていく。
そして親方は驚愕の表情でその様子を眺めていた。
『親方、どうしたの?』
『精霊はそんなに珍しいものなのか?』
一連の流れの途中、アリシアとバルトロ兄さんが親方の相手をしてくれていた。
普通はエレメントの源泉以外で精霊と会えることはほとんどなく、とても貴重なことらしい。
親方も鉱山で土の精霊、ドワーフの国の炉で火の精霊に会ったことがあるがそれ以外では全くないと言っていいらしい。
精霊の力が込められた後、どのような技を使えるかを考えた時に真っ先に思い浮かんだのが、兄様と戦った時に使ってきた光り輝く衝撃波だった。
闘気を込めてフルーの水の力が飛んでいくことを思い描いてから振り下ろした。
すると水でできた刃が地面を抉りながら前方へ飛んでいき、目の前にあった木にぶつかると木を切り倒して水飛沫が飛び散った。
『『『おぉ〜!』』』
後ろから3人の歓声が聞こえた。
今度はナトゥの力を使ってみようと思い、土の力が地面を盛り上げることを思い描いてから薙ぎ払った。
すると放射上に土でできた槍が広がった。
これは複数の敵に囲まれた時に良いかもしれなそうだ。
『これはすごいですね!戦い方の幅が広がりそうです。』
『あぁ、精霊を呼び出せるなんて思ってもおらんかった。精霊の力は使い方次第で魔術よりも自由に使えるらしい。この技は闘技という。色々試して、自分なりの闘技を編み出してみると良いだろう。』
『私もやりたい!』
『俺にも頼む。』
アリシアとバルトロ兄さんも試してみたいということで、フルーとナトゥに力を込めてもらった。
しかしながらアリシアはどちらも使いこなせず、バルトロ兄さんはナトゥの土の力しか扱うことができなかった。
『これは相性だな。今うまく力が使えなかったとしても他の精霊の力を借りれば使えるかも知れない。自分と相性の良い精霊を見つけることだな。』
『よーし、絶対見つけてやるんだから!』
「アリシアハカゼカナ」「バルトロハテツガヨサソウ」
今回精霊の力を使うことができなかったアリシアは必ず自分と相性の良い精霊を見つけるんだと意気込んでいた。
フルーとナトゥが言うには、アリシアは風の精霊、バルトロ兄さんは鉄の精霊が相性が良いらしい。
金属の精霊がいるのかということがとても興味深く感じた。
『アルクス、さっきの技には名前は付けないの?』
『確かに、格好良い名前を付けると気合も入りそうだな。』
2人から技の名前と言われたが格好良い名前と言われても思い浮かばない。
少し考えてみたけど、こんなのはどうだろうか。
『うーん、名前か。水衝刃と地穿槍とかそんな感じはどうかな?』
『うん、アルクスらしい名前だと思う。』
『アクアウェイヴとかアースランサーとかそんな感じの方が格好良くないか?』
『名前を叫びながら戦うわけじゃないし、これでいいよ。』
バルトロ兄さんは格好良い名前にこだわりがあるらしい。
『親方、ありがとうございました。僕達はこれから大森林に向かうことにしました。』
『そうか、ならちょっと待ってろ。』
そう言うと親方は一通の手紙を書いて渡してきた。
『紹介状だ。大森林にいるエルフに渡せば便宜を図ってくれるはずだ。』
『親方、エルフと知り合いなんですか?ドワーフとエルフってあまり仲が良くないっていう話でしたが。』
『昔ちょっとな。仲が良くないと言うよりは文化が合わないと言うのが正しいな。お互い自分の領域にいれば問題はないさ。そうそう、俺の名前を伝えていなかったな。カリブルっていうんだ、覚えておいてくれよ。』
親方に礼を伝え、武器屋を後にした。
準備が整ったところで街の西側から出立した。
今回は特に馬車などもないのでのんびりとした徒歩の道程だ。
しばらく西へ進み、別れ道を北へと進む。
『ここを真っ直ぐ進んだら海に出るのかな?』
『ちょっと待って。地図を見る限りだとしばらく行けば海があるみたいだね。
でも結構距離があるかもね。あとこっちの方角は龍脈が通っていない気がする。』
『そっかぁ。海沿いの街なら商会の支店があるかなと思ったんだけどね。』
『龍王様に会えたら、その後に行ってみるのも良いかもね。』
地図だとパラディースはコムニオの北東か。連邦に来てから結構長い距離を移動した気がする。
今回は龍脈沿いの道だから、せっかくだからフルーとナトゥを召喚して技の練習をしながら進もうと思う。
転移の練習をする機会がないけど、どうしたものかな。
コムニオに楔を打っておいたから、いざとなったら戻れるけど。
その後、ゴツゴツとした岩に囲まれた道を進みながら、時折現れる魔獣を倒しながら進んで行った。
合間に自生している薬草などを採取して、傷薬や毒消しなどの薬を作った。
コムニオにいる間、空いている時間に探索者協会が主催する調合講座に参加したかいがあった気がする。
基本的な薬の作り方を学んだおかげで、少しの応用で簡単な薬は書物を読みながら作ることができた。
『アルクスはすぐに何でも学んですごいね。』
『ちょっと器用貧乏の気があるけどね。アリシアやバルトロ兄さんみたいに特別優れているところがないから、できることを増やしているだけだよ。』
『逆に色々なことが何でもできるのも才能だ。俺達はできることはそんなに多くはないからな。
この旅もアルクス、お前がいてこそだ。』
『そうかも知れないけど、やっぱり1つこれだという能力を見つけたいなって思うよ。』
『龍珠があって、龍術が使えるだけで十分すごいと思うよ?』
『うーん、それが特別って感じはあんまりしないんだけど。まだ使いこなせていないからかなぁ…』
そうして数日歩いたところ、小さい岩山と岩山との間にある大きな壁のような街にたどり着いた。
この国の国境の街テルミヌスだ。
ここから街を超えて一歩でも森へ入るとそこはもうエルフの国であるアルフグラーティらしい。
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