第50話 閑話
1週間程の順調な道程で依頼を受けたパリエスへと戻った。
「なんだか思ったよりも時間がかかったね。」
「色々あった気がするよね。」
探索者協会へ顔を出し、調査した結果を報告した。
『全然戻って来ないから、魔獣にやられたか、不授だから楽園に取り込まれたと思っていました。』
軽口を叩かれたものの、報告内容はちゃんとまとめられていた。
伝説上の組織と同じ名前であるメテンプスの名前は少し気になったらしい。
『最近連邦内の各地でおかしな出来事が起きたり、魔獣が急に増えたなどといった報告が挙がっているんですよ。何かしら共通の原因があるのではないかという説もあって、調査をしていたんですよ。その組織が暗躍しているとなると、色々説明がつきそうなんですよね。
でも伝説のメテンプスと同じ名前を名乗っているというのがちょっと気になりますね。
まさか同じ組織ということはないでしょうし…』
何でもこれから連邦内の協会に対してメテンプスの情報が展開されるらしい。
「とりあえずこれで依頼も達成できたし、路銀も稼げたし一度龍脈沿いの道に戻ろうか。」
「不授の街パラディースも龍脈が通っていたけど、パラディースに戻るってこと?」
「いや、ドワーフの親方に会って武器の手入れをしてもらいたいから、コムニオまで戻ろう。
あの街の辺りは何本か龍脈が走っていたから今後の計画を立てるにも良いかと思って。」
2人を納得させ、早々に街を移動した。
パリエスにも龍脈が通っていたら転移術で戻れていたかもしれないけど、急ぐ旅でもないし、まぁ仕方がない。
パリエスではのんびりとしつつ、今後の計画や不授の街で感じたことを振り返ることにした。
「不授の街のパラディースとか不授の村に行って思ったけど、いつか本当に不授の人間が皆幸せに暮らせる楽園のようなところができたら良いよね。」
「前にも話したけど、きっとアルクスなら作ってくれるって思ってるよ!」
「あぁ、俺達が手伝えることがあれば何でも言ってくれ。」
前は1つの目標として考えていたけど、本当の不授の楽園を作るというのを人生の最初の目標にしようかな。2人も手伝ってくれるって言ってるし、旅が終わるまでに各地に人脈作りとか、土地探しとか楽園を作るための準備を意識して行動していかないと。
「2人ともありがとう!
そう言えば話は変わるけど、アリシアは何でこの前の実験台にされた魔獣の言っていることがわかったのかな?」
アリシアは考える様子を見せた後、何かを思いついた様子だった。
「そう言えば小さい頃に頭をうって大きな怪我をしたことがあって、その後から何だかあの獣はあっちに行きそうとか何となく獣がとりそうな行動がわかるようになったんだよね。
でもあそこまで具体的に何を言ってるかがわかるってことは今までなかったけど…」
バルトロ兄さんも隣でウンウンと頷いていた。
「もしかしてアリシアに眠っていた力が龍気を扱えるようになったことで目覚めたとか?」
「不授の私にそんな特別な力なんてあるのかな?」
「龍気を使えるようになっただけでも特別なことなんだ。他に2,3個特別な力があったところで変わらないだろう。」
バルトロ兄さんは細かいことを気にしない人だが、こういう時は余裕があってすごいと思う。
「魔獣と話ができるなら、もしかしたら魔獣と仲良くなって仲間にしたりすることができるかもね。そういえば、この前フルーとナトゥが言っていた半精霊っていうのもいたね。これから色んな仲間が増えたら楽しいだろうなぁ。」
「仲間か…、確かにしばらく3人でやって来て特に困ることもなかったが、これから不授の楽園を作るなら、仲間を増やしていかないといけないな。」
「兄さん、何かあてがあるの?」
バルトロ兄さんは黙ったかと思ったら、
「ない!」
と大きな声で一言だけ答えた。
「まぁ、そうよね。ここは私達の住んでた王国とは違う異邦の地だもんね。」
「仲間にするならどんな人が良いかな。」
今まで新たに仲間を加えようと考える暇もなかったけど、そういうことを考えておくのも良いかもしれない。
「魔術を使いこなせる人が1人いると良いな。生活で使う魔術ならアルクスが使えるけど、いつか魔術しか効かない魔獣とかが出てきたら困りそうだし。」
「エルフやドワーフなどの様々な人種の仲間がいると良いな。お互いを理解するのに時間がかかるかもしれないが、真の楽園は不授に限らず誰もが幸せな場所だと思う。」
アリシアのいうことも、バルトロ兄さんのいうことも正しい気がする。
「そう言えば僕らにはもう新しい仲間がいるじゃないか。まだ卵から産まれていないけれど。」
久しぶりに真龍の卵を取り出してみた。
前よりは動いているような気がする。
フルーかナトゥに聞いたらまだまだだって言われそうだけど。
「そうね。とりあえず最初の仲間はその子になるのかな。」
「卵から孵る日が楽しみだな。」
「さて、じゃあこれからの話をしようか。
連邦にいる間の目的の1つ目である不授の楽園に行くという目的はパラディースに行ったことで達成したね。
2つ目の目的であるメテンプスを潰すっていうのはパラディースで拠点を1つ潰したから現在進行形で進んでいるね。次いつ進むかはわからないけど、探索者協会でも情報が展開されているみたいだから、僕達じゃなくて他の人が潰してしまうかもしれない。特に無理して自分達で倒さなければいけないというわけではないから旅先で見つけたら倒せばいいと思う。
だから最後の3つ目の目的である連邦にいる龍王様、蒼翠龍様に会うことをそろそろ目指そうかと思う。」
「賛成!」
「やっとだな。忘れているのかと思ってたよ。」
「色々あったからできなかっただけで、忘れてたわけじゃないよ?
確か龍王様、藍碧龍様はこう言ってたよね。
―蒼翠龍は深い森の奥の渓谷にいる―
この大陸で深い森って言うとどこにある森だろう。」
3人で考え込んだものの、今まで通って来た道や街で聞いた話を合わせてもそれという情報は思い当たらなかった。
とりあえず翌日街中で情報収集をすることにしてその日は寝ることにした。
そろそろ武器の手入れもしないといけないと思い、親方の武器屋に行って武器の手入れを依頼した。ついでにこの大陸にある森に関して聞いてみた。
『森か。俺達ドワーフは森には行かないからな。あそこはエルフ達の領域だ。
連邦の中で深い森と行ったら俺が知ってるのは3つだな。
まず1つ目は大陸の南端にある、強大な魔獣の巣舞う大樹海だ。
魔獣や植物から採れる魅力的な素材や果物があるが、生きて帰ってくるだけでも至難の業と言われてるくらいで、あそこから生還した探索者はそれだけで箔が付くって言われてるらしい。
次に2つ目はここから北西の中央地帯にある大森林だ。そこがさっき話したエルフ達の領域だな。連邦に加盟しているエルフの国もそこにある。
エルフ達の魔術のせいか入ったと思ったらすぐに元の場所に戻ったり、同じ場所を数日ぐるぐると回って弱りきった頃にやっと出ることができたりして、迷いの森なんて名前で呼ばれたりもしている。
最後の3つ目が大陸の北端にある、氷の森だ。寒くて人の住む場所じゃないが、氷が木みたいに地面から生えているらしい。
もちろんそんな場所に住んでる魔獣は化け物ばかりだ。
行くんなら一番まともな大森林にしておきな。
迷うかもしれないが、死ぬことはあまりないらしいからなっと。
よし、出来たぞ。前よりは扱いが良くなったんじゃないか?』
『ありがとうございます!この前の親方の指摘のお陰で少しは良くなりました。
あとこれ、この前とある村でもらったんですけど闘玉ですよね?』
実は不授の村を出る時に、感謝の証だと言って村長から闘玉を数個程貰ったのだった。
どうやって手に入れたかはわからなかったけど、断るのも悪いと思って素直に受け取った。
『おぉ、確かにそれが闘玉だ。それだけあれば3人の武器を改造できるぞ!1日待っとれ。』
そういうやいなや親方は僕達の武器を取り上げ鍛冶場へと篭ってしまった。
『あーなった親方はもう出て来ませんので、また明日お越しくださいませ。』
店員さんからそう言われて、今日のところは帰ることにした。
その後3人で話合って、おそらく北西にあるエルフの国がある大森林が正解だろうと結論付けた。いつか大樹海や氷の森も行ってみたいねという話になったが、余裕ができたらまたいずれということで落ち着いた。
次の目的地も決まったので急ぎ旅支度を整えて、親方の武器が出来上がるのを楽しみに待つことにした。
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