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第129話 元神

 聖獣達から授かった証が光り輝き扉に吸い込まれると自然と扉が開いた。扉の中にはどこか魔王の城を思わせる雰囲気があり、しかし同時に清浄な空気が漂っていた。

 アルクス達は城内に足を踏み入れ、聖獣からの指示通りに王座の間へと向かった。そこには中身が空洞になっている人型の何かが座していた。


「こんなところに人が来るとは、一体いつ以来だろうか。魔王の坊や以来か。待っておったぞ。」


 その声は、どこか懐かしさを感じさせるものだった。アルクスは、ヌシたちに認められてここに来たことを告げた。


「貴方は一体… そして待っていたということは僕達のことをご存知なのでしょうか?」

「ふむ、あの子達と楽しそうに遊んでいるのをここから見ておったよ。私はこの世界の元神とでも呼べばよいかな。今、神々と呼ばれている者達の前にこの世界を育ててきた者だよ。」


 元神は語り始めた。より上位の神々から世界を創り、適切に破壊と再生を繰り返して維持、そして成長させよと命じられ、真面目に務めていたという。しかし、ある時部下とも言える若い神候補達が、元神の力を奪いこの島に封印してしまったのだという。


「この島はだね、この世界で初めてできた原初の島なのだ。龍脈から力が吹き出ているのもそういう風に創ったからだね。」

「元神様とのことですが、創造龍様達とのご関係はどの様なご関係なのでしょうか。」


 アルクスは、自分たちが今まで出会って来た龍達のことを元神に語った。


「そうか、お主も世界の楔なのか。私の油断により犠牲となった魔王の坊やには悪いことをしたな。」


 元神の言葉に、アルクスは神に戻らないのかと尋ねた。しかし、元神は難色を示した。


「あの若造たちも力を増している様子だし、私は最早戦うことはできない。今の私には、この島の環境を操作する程度の力しか残っていないのだ。」


 アルクスたちは何かできることはないかと協力を申し出たが、元神は話を続けた。


「あやつらが真の神かというと怪しいが、神性を持つ者を倒すには、特別な武具が必要となる。神殺しの武具だ。あれは神々が持つ不死性に逆らい、その本質に直接叩きつけることができる。」

「神殺しの武具、そんな物があるのですか…」


 アルクスたちは、この重大な情報に息を呑んだ。神を倒すということは、世界の秩序を根本から覆すことを意味する。彼らは互いの顔を見合わせ、深刻な表情を浮かべた。


「神殺しだなんて、そんな恐れ多いことを…」


ティオが不安そうに呟いた。


「あの若造達が管理している今のこの世界が悪いとは言い切れない。お主達は割を食っているかもしれないが、それでも幸せに生きている人々も数多くいるからの。管理された世界を望むもの達も多いはずだ。」


アルクスも元神の言に同意した。

アルクス達は元神と長い時間をかけて議論した。世界の現状、今の神々の統治、そして彼ら自身の理想について。そして最終的に、アルクスが決断を下した。


「僕達は、力を与えられなかった者たちが幸せに生きられる世界を作る。そのためには、今の神々が管理している世界を変える必要がある。元神様、僕達に今できることを教えて下さい。」


 元神はしばし黙し、やがて頷いた。


「わかった。だが、お主達だけでは力不足だ。魔王の力も必要となろう。」


 するとクレードが突然空中に扉を作り出した。扉が開くと向こう側には魔王の姿が見える。


「貴方から連絡があるとは珍しい。一体何のご用ですか。こちらは神殺しの準備で忙しい。」


 元神は事情を説明し、神殺しを共に行うことを提案した。魔王は少し迷ったものの、最終的に同意した。


「今更貴方が動くというのか。しかも何もできない状況で。もっと早く動いてくれていれば…しかしあいつらよりはましか。まぁ、良いでしょう。条件については話し合う必要があるが、とりあえず手を組むとしましょう。」


元神と魔王が手を組み、神殺しへの道が開けた。

アルクス達は自分達の望んだ世界を作るために考え抜いたとは言え、神殺しというこの世界では誰も考えたことのなかったであろう領域に足を踏み込んでしまったことへの重圧を感じていくことになる。

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