第127話 森の聖獣
聖獣が去った後、アルクスたちは今後どの様にするかを話しあった。分かれてそれぞれが聖獣に会うことも考えたが、平原の聖獣から渡された羽は1本しかなかったため、明日から一箇所ずつ順番に回っていくことにした。
その夕暮れ時アルクスは一人、島の高台に立っていた。目の前には海の遥か彼方には微かに今まで旅してきた大陸が見えていた。そして後方にはこれから切り開いていく未来が広がっている。
「ルーナ、ウィル兄さん、父さん…みんな元気にしているかな。」
アルクスは空を見上げながら呟いた。海の湿気を含んだ風が彼の頬をなでる。いつか遠い地にいる大切な人たちに、自らの決意が結実した証を自信を持って見せられる様にと改めて自分の思いを再確認した。
そして、アルクスは仲間たちの待つキャンプへと戻っていった。明日からの聖獣達との出会いへの期待と不安が、夜空に輝く星々のように、彼らの心の中でまたたいていた。
翌日アルクス達が森林へ向かい、聖獣の羽を掲げると森の奥から続々と大小の熊型の魔獣が現れた。
襲いかかってくるでもなく、手招きして力を見せろという仕草をしている。
バルトロが『俺に任せろ!』というと魔獣とがっぷり四つに組みあった。
押しも押されぬ攻防を繰り広げると、最後にバルトロは魔獣を投げ飛ばした。
投げ飛ばされた魔獣は素直に負けを認めて果物などの森の恵をバルトロへ渡すと魔獣達の後方へと下がった。
その後、次は俺がと変わるがわる魔獣達が力比べを挑み、バルトロとアルクス、パルにイルシオと男性陣が交互に相手をしていった。
魔獣達は力比べを挑んでくるものの、特に無理やり傷つけ様とすることもなかった。
アリシアや力比べに参加しない魔獣達はそれぞれアルクス達の応援にかかりきりになり、それぞれ白熱していた。
ティオは傷ついた獣がいたら癒し、ティオはこの森の樹々に語りかけ時に力を分け与えるなど皆重い思いの時を過ごしていた。
『スペルビアがいたら、積極的に参加したかも。』
『バルトロ兄さんも良いところを見せられたのにね。』
そうして一通りの魔獣達が力比べを終えると、森の奥から聖獣と思しき一際巨大な熊型の獣が現れた。
『貴方がこの森の聖獣か。』
アルクスの問いに対して、聖獣らしき獣が一言、『力を示せ。』とだけ呟いた。
『ここは僕が。』と言ってアルクスが前に出ようとしたところをバルトロが止めて前に出た。
『たまには俺も格好良いところを見せないとな!』
そういって聖獣と組み合ったバルトロは青筋を浮かべながら全身の力を振り絞った。
『やるな、人間よ。』
『頑張ってる弟分の前で無様な姿は見せられないからな!』
聖獣が上から押し潰そうとするも、バルトロは蹴り上げて投げ飛ばした。
お互い上下になり転がりつつも決めてに欠けていた。
『埒が明かないな。どうだ、我が渾身の一撃を耐えれば終わりとしようではないか。』
『そうだな。力比べも楽しかったが、終わりは必要だ。だが、俺も守りには自負がある。ちゃんと全力で来いよ!』
聖獣とバルトロが共に吼えると力の奔流により、周囲の面々からは赤く燃えているかの様に見えていた。
『ふんっ!』
聖獣が振り下ろした前腕をバルトロが受け止めるとあまりの衝撃により全身が吹き飛ばされそうになるも、両の足でしっかりと堪える。
少しずつ足が地面を抉っていく様な力だったが、バルトロも負けじと耐え切る。
『これを耐えるか… そなたの心意気感じ取った。』
聖獣は腰をつくと、目を細めて唸った。
『さて、本来であれば森の皆との調和を望む試練でも与え様かと思っておったが、言うまでもなく皆を癒し、樹々にも活力を与えてくれた様子だな。』
聖獣は満足気に頷いた。
『よかろう。力も心も申し分ない。この爪を受け取るがよい。』
聖獣は光り輝く爪をアルクスへと渡した。
『落ち着いたらまたここへ来てくれると嬉しい。皆君達のことが気に入った様だ。』
アルクス達は聖獣達に感謝を告げて、次に湖へと向かうことにした。
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