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黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-  作者: 八束ノ大和
第六章 帝国編

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第115話 竜神? 

 アーラの力でなんとか王国内の小高い丘へとアリシア達は逃げ延びた。

そこで力を使い切ったのか、アーラは小さくなり眠ってしまった。


「早くアルクスを助けに行かないと!」

「俺があんな奴らを蹴散らしていればっ!!」

「こんなことなら私が囮になっていれば良かったのに…」


アルクスがいないことでアリシア達は思い思いのことを喋り、議論になることなくバラバラだった。

疲れきった頃、やっと皆で帝国を目指すことが決まった。


「でもどうやって帝国へ向かうんだ?」

「ちょっと待ってね。この辺りだと確か…ここに港町があるはず。こっちの方は来たことがないからあまり詳しくないけど。」


アリシアが王国の地図を広げて目的地を示した。


「今は国境の近くだからこの辺りよね。ここならそんなに時間は掛からなそうね。」


アルクスがいないことでまとまりを失っていた一行だったが、アルクスを助けるためにまずはすべき目的が決まった後は迅速に動き始めた。

港町へと向かう途中アリシアは空から近づいてくるものを見つけた。


「こっちに何か飛んでくるよ?」

「鳥じゃないか?」

「うーん、鳥よりは大きい気がするけど。もしかして、竜…?」


アリシアが飛来しているものが竜だとわかった時にはもう目の前に降りたっていた。


『久しぶりだな。元気にしていたか?アルクスの姿が見えない様だが、どうしたんだ?』


竜からスペルビアが降り立つとアリシア達は驚くも、アルクスが帝国に連れて行かれてしまったことを話した。


『アルクスが連れていかれてしまうとは…

 だが皆を守ってと言うなら納得できる。

 私だけならこのシンケルスと一緒に空を飛んで行くことができるが、全員となると難しいな。

 そうだ紹介しよう、ドラコ・レグルスで私と共に育った数少ない友と言えるシンケルスだ。』

『グァァ、よろしく。しゃべるのはあんまりとくいじゃないけど。』

『彼女と共に漆黒龍様の元で私も竜装を会得したんだ。竜装になるだけならすぐにできたんだが、力の制御が難しくてな。だが、竜装の最低限の扱い方は分かったから、役に立てるはずだ。

 さて、帝国へ向かうという話だったが竜に連なる者達に協力してもらい、海を渡ることならできるかもしれないな。』

『海を渡るって言うと、船に乗せてもらえるのかな?』

『とりあえず話だけでもしてみよう。ここに来る前に藍碧龍様から教えていただいた場所がここからそう遠くないはずだ。』


 スペルビアの案内でアリシア達は王国の外れの洞窟の中にあるという神殿を目指した。

洞窟の近くの漁村へと辿り着き村人に話を聞くと、近隣の村々では定期的に神殿へと供物を捧げることで竜神の怒りを静めているということだった。


「竜神様は大昔に怒りで暴れ回っておってなぁ。海が大荒れになって、漁ができなくて困っていたところ、お告げがあってその通りに供物を捧げたところ、竜神様も落ち着いて平和が戻って来たんじゃ。

 こんなところに他所から来るなんて珍しいが、竜神様の逆鱗に触れる様なことはするんじゃねぇぞ。」

『なんて言っているんだ? なるほど、そういうことか。それならば私達も竜族だと伝えれば安心するだろう』


スペルビアとシンケルスが姿を見せたところ、バルトロが訳して伝えた。


「こ、これは竜神様と同族の方でしたか。し、失礼なことを…申し訳ありませぬ…」


その後、供物に関しての詳細を聞き出し、それならばと村長の下へと案内された。

スペルビアとシンケルスの姿を見た村長は村人と同様に恐れ慄き、謙った態度で接してきた。


「これは竜族の方、よくぞいらして下さりました。供物の時期はまだかと思うのですが、何かございましたでしょうか…」

『本来竜族は他の種族から供物なんてものはもらわないはずだ。

  そいつはおそらく竜族ではなく、亜竜の可能性が高いな。

  先ほど話した目的としている竜に連なるものと一致する可能性が高い。

  私達が向かうから、お前達の言う竜神様に恐れる日は来なくなるはずだ。』


 バルトロがスペルビアからの言を伝えると、大変感謝された。

 万が一に備えてと若干の供物を受け取り、アリシア達は指定された洞窟にある神殿へと向かった。


『生き物の気配もあまりしないね。だからと言って神聖な感じがするわけでもないけど。』

『強い生き物がいると敏感な生き物は近づかなくなるからそういうことなんじゃないか?』

『どうやらあれが神殿みたいだな。あつらえた様に祭壇があるぞ。』


 神殿の祭壇へ供物を捧げると奥にあった地底湖から突然巨大な竜とも見間違える様な海蛇が現れた。


「いつもより早いではないか。それに今回の供物は人数が多いな。良い心がけだ。」

『やはりそうか。供物を捧げろと言って生け贄を求めていたのか。生け贄を求め、何をしていた!』

 

バルトロが訳した言葉を聞くとスペルビアが突然海蛇へと殴りかかり、海蛇は突然の想定外の暴力によりなす術もなく叩きのめされた。

 

『竜を騙り、人を生け贄にするとは何事だ!』


スペルビアが吼え、最初は威厳を出していた海蛇には怯えの色が見えていた。


『こ、これは竜人殿…こんなところにどの様な御用向きで…』

『しかも海蛇ごときが竜神を騙るとはどういうことだ、竜王様に直訴せねば』

『そ、それだけはお許しを...供物としてやってきた娘達も我が寝床におります故…』


道中、海蛇は人型へと変化し自身は海底王国の出身で空を飛ぶことはできないものの、海を自在に泳ぎ回りこの海域の安定を図る統治者であることを説明した。

 そして神殿の奥にある寝ぐらへと案内された。


「みなさん、大丈夫でしたか!」


 バルトロ達が水竜の寝床に入ると、そこには若い娘達がくつろいでいた。


「あら、お迎えが来たみたいよ、でももうしばらくここにいるから気にしないでって言っておいて、村に帰ったら贅沢できなくなっちゃうし~」

「最初は従順だったのですが、数が増える度にわがままを言い始め、次こそはと思っても何も変わらず...」

  

一同「・・・」

 

 村に戻り供物となった娘達の無事を伝え、もう供物は必要ない旨を伝えると村長を含め村人達にとても感謝されバルトロ達は村の英雄扱いをされた。

その後、海蛇に海を渡り帝国の大陸へと向かいたいという話をすると快諾され、船とそれを引く眷属達を預かった。


『彼らに任せておけば、帝国でしたらすぐに辿り着けますよ。ですが中央大陸の辺りにだけは近寄らないようにお願いします。あの海域は我々でもなかなか厳しいものがありまして…』

『あぁ、わかっている。船まで用意してもらい助かった。』

『いえ、良いのです。あ、あと竜王様にはこの件は…』

『仕方がない。娘達を大切にしてやるんだぞ。』


 船に乗り旅立つとほんの数日で帝国近海までたどり着いた。

そしてこの短い期間でアリシアに叩き込まれ、スペルビアも王国語を最低限扱える様になった。


「あれが帝国の大陸だね。久しぶりってほどでもないかな?」

「あぁ、水竜の眷属達のおかげで労せずに辿り着けたな。」

「早くアルクスを探さないと。」

「お前達、助かった。帰りは別の方法を探すから…のところへ戻るといい。海蛇に感謝を伝えておいてくれ。」


 眷属達によると帝国近海は別の統治者がいる海域らしく、足早に戻っていった。

  

「さて、急いで帝都へと向かうことにするか。アルクスが見つかるといいんだが…」

「アルクス、無事でいて…」





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