工場で
夜の工場、月の光も当たらないような作業部屋の隅に男が居た
男は、まるで少しでも動いたら死んでしまうと言わんばかりに音を立てないように固まっている
コツ、コツッと何かが地面を叩く音がする
男が音から逃げるように、これ以上ないくらいに壁際にくっついた
「頼む、やめてくれ」
誰も居ない部屋に男の声だけが小さく響く
コツ、コツッ
コツ、コツッ
その音は、段々と男に近づいてくる
「だめだ、やめろ!」
男はそう叫ぶと、部屋を飛び出した
真っ暗な廊下には、当然何も見えず、暗がりが続いている。男にはもう入口に向かうという判断しかできなかったのか、工場内に設置されている機械類にぶつかりながらも入り口へ向かう
気が付くと、コツ、コツという音が聞こえないことに気づいた。そう、気づいてしまった
男が、上を見ると、天井から骸骨がぶら下がっている
「ぎゃあ!」
男は、コツ、コツという音が、骨が廊下を歩いていた音だと気づいた瞬間、自分の犯した事の大きさに気が付いた
数日前、ある口論から、同僚を殴り殺してしまった
男は、工場にあった溶液で、男の死体を溶かすことにした
しかし、その溶液では肉体は溶けても骨が残ってしまう
男は、その骨を骨格標本として完成させたとたん、ロッカーに隠していたはずの骨格標本が無くなったのだ
「俺が悪かった! 許してくれ!」
カタカタと、何を許すんだ?と聞こえた気がした
男が立ち止まった場所は、男が死体を溶かした溶液の入ったプールだった
男は、もう死んでもいいかなと思ったが、娘の顔がちらつき、1歩を踏み出すことが出来なかった
すると、コツ、コツッと骸骨が歩いてくるのが見えた
男は、どうにでもなれと、かき混ぜるための棒を手に取ると、骨に殴りつけた
幽霊ではなかったようで、骨はバラバラに散らばった
次の日、工場で気絶している男と、バラバラに散らばった骨が見つかり、男は逮捕された
しかし、刑務所に行く途中に護送車が事故に巻き込まれ、炎上した車に取り残された男は骨となって見つかった




