景色の良い病院
俺は末期の癌だ
治る見込みが無く、死を待つばかりの毎日だった
するとある日、医者から病院を紹介すると言われた
「どういう病院なんですか?」
「患者にとってすごく都合の良い病院なんだよ。ただ、入るにはいろいろと条件があってね、君はその条件を満たしてそうだから」
「条件とは何ですか?」
「家族、親戚が居ないだとか色々あるけど、まあ、気にしないで」
気にはなったが、入院費が安くなるというので受ける事にした
「ここがその病院か」
見た目は普通の病院
実際に入院しても、対応は前の病院と遜色ない
けれど、1週間ほど経って異変に気付く
「面会が全くないし、誰も来ない・・・。何よりも、毎日の様に死亡者がいる」
死亡者が居るのは仕方がない。重傷者や重症者が普通の病院よりもかなり多い
「だとしても、おかしい」
普段は個室で本を読みながら過ごしているため、まだ病院内を見ていない事に気が付いた
そして、実際に見てみると色々とずさんな場所が多い事が分かった
「屋上へは簡単に行けるのに、屋上の手すりが低い場所がある。あれじゃあ、簡単に乗り越えられる」
窓も一部低い位置にあるし、屋上へはエレベーターですらいける
しばらくしてから、俺の症状が一気に悪くなる
「痛い、苦しい、生きるのがつらい・・・」
何かが起こるには必ず、動機があり、実行可能であり、環境がある
殺人をしたいと思っても、周りに誰も居なければ不可能だし、銃を持っているのと持っていないのでは行動までのハードルが変わる
「なるほど、そう言う事か・・・」
俺は痛む体を起こし、屋上へと向かう
今になって気が付いたが、屋上まで行く道には手すりまで完備されていた
そして、手すりの低い場所へ向かう
「ああ、下の低い窓でもよかったのか。まあ、俺はここでいい」
俺は、良い景色を見ながら手すりを乗り越えた




