アスファルト
何年も警備会社に勤めているため、特に真夜中が怖いという事は無いのだが、あれ以来、夜中の道路が怖くなった
ある日の深夜時、契約者の緊急通報が入った
緊急通報は、契約した家に設置してあるボタンを押すことで、警備会社の事務所のランプが光る
そこには、契約者番号が表示されるので、どの家かがすぐわかる
以前、心臓発作で声すら出せなかった老人が、緊急通報してきたこともあり、すぐに家に向かった
その家は、最近契約したばかりの家だった。そして、通報は寝ぼけた小学生の子供が、間違って押しただけだという事が分かり安心した
両親に怒られて泣く子供を見て可哀そうにと思いながら事務所に帰る
「あれ、小雨だ」
急に降ってきた雨で見通しが悪くなった
そのためか、曲がるべき道を間違えて通り過ぎてしまった
「ありゃ、まあいいか。どこかでもう一度曲がれば」
雨はすぐにやみ、道路はうっすらと濡れただけで水たまりすら出来ていない状態だ
知らない道をしばらく行くと、綺麗なアスファルト舗装がされた道に続いていた
「おかしいぞ……」
その道は、もう2分も真っすぐ続いていた。2分もあれば、1~2キロは進んでいるはずだ
怖くなり、車を停めてカーナビで案内してもらうことにする
カーナビは、契約者の家に行くために、全社用車に搭載されている
しかし、カーナビにはここに道は無い事になっていた。綺麗なアスファルトのため、新しい道なのかもしれない
それなら、自分のスマホで調べるかと思い、グーグルの地図でこの場所を確認する
すると、この場所は墓地になっていた
嫌な予感がして、ふと前を見ると、濡れたアスファルトが老人の苦悶の表情に見えた
すぐに車に乗り、狭い道を脱輪しないように転換させる。あの苦悶の表情の上を通り過ぎる気にはならなかったからだ
しかし、転換して元の道に戻る道のアスファルトも、次々に苦悶の表情に変わっていった
避けようがないので、車でその上を通り過ぎる。すると、「うぅぅぅぅ」というような呻き声が聞こえてきた
アクセルを全開にし、来た道を戻る。ほんの1,2分のはずなのに、ものすごく長い時間だった気がした
それ以来、雨のあとの濡れたアスファルトを見るのが怖い




