消えた遺体
俺と悪友、そして昔の友人の3人は、同窓会で集まっていた
3人だけで飲むことにし、場所を変えた
居酒屋で、3人ともいい感じで酒が入っていたのだが、悪友の酒癖が悪かった
昔の友人とささいな事から、口論になった
店に迷惑になると思い、俺は悪友と昔の友人の背中を押して店を出た
そして、支払いのための俺は再び店内へ戻ったのだが、目を離したのが悪かったのか、すぐに2人の元へ戻ったのだが、昔の友人が地面に倒れていた
「おい、何があったんだ?」
俺はすぐに倒れている昔の友人を起こそうとする
「ちょっと小突いただけだって。こいつの演技が大げさなんだよ」
それが本当かどうかは分からないが、昔の友人はぴくりとも動かない
変に思い、口に手を当てるが呼吸をしている様子は無い
「し、死んでる……?」
俺はすぐに救急車を呼ぼうと電話を取り出す
「やめろ!」
悪友に手を掴まれ、電話をする事が出来ない
「……おい、運ぶぞ」
「え?」
「死体を運ぶんだ」
俺は反対したが、もしこの事がバレるようなら俺も殺すと脅され、隠ぺいに協力するしかなくなった
俺と悪友は、とりあえず死体が人目につかない場所まで運ぶ
そして、比較的酔いの浅かった俺は、車を取りに自宅へ向かった
十数分後に戻ったが、やはり昔の友人は死んだようで、倒れたままだった
昔の友人を大きなゴミ袋に入れ、トランクへ入れ、悪友を車に乗せる
「これから、どうするんだ?」
「とりあえず山へ行け」
俺は車を山へ向かって走らせる。途中で崖の横を通りかかった時、悪友が車を止めろと言った
「ここに捨てる」
「……本当に、やるのか? 今ならまだ、殺人にならないかもしれないぞ」
「いいからやれ!」
傷害致死罪か暴行罪か分からないが、殺人よりは罪が軽いはずだ。なのに、悪友はどうしてもこの件が発覚されたくないようだ
ゴミ袋越しに、2人で昔の友人の足と頭を持ち、崖から投げ捨てた
それから、いつ死体が見つかるかビクビクする日が続く
昔の友人の家族から、息子を知らないかと連絡が入ったが、知らないと答えるしか無かった
しかし、1週間ほどで罪悪感に耐えられなくなった
俺は意を決して死体を確認しに行く事にした
車を走らせ、崖へと向かう
ロープをガードレールに結び付けて、慎重に降りる
十メートルほどのがけ下に着いたが、ゴミ袋が見当たらない
「まさか、動物が持っていったのか?」
しかし、残骸も何も無い。崖付近に生えている木の小枝が折れているので、このあたりに落ちた事は確実なはずなのに
「それとも、実は生きていて自分で歩いて行ったのか?」
だが、それもあり得ない。もし居酒屋の時点では気絶だったとしても、十メートルも無防備に落ちたなら無傷では済まないだろう
それになにより、生きているならすぐに警察なりに電話して、俺や悪友は捕まっているはずだ
結局死体は見つからず、家に帰った
そういえば、あれから悪友とも連絡を取っていない
悪友に電話するも繋がらない。家にも行ったが、いつからか帰ってきていないようだ
それから10年が経ったが、2人の安否は不明のままだ




