おとなりさん
小学校の校庭にある木陰で休んでいると、隣のクラスの女の子が近づいてきた
「ねぇ、おとなりさんって知ってる?」
「急に、何なの?」
「あっ、ごめん。隣に座ってもいい?」
彼女は、私の返事も聞かずに勝手に隣に座った。正直、1回も話したことが無い子なので気まずい
「知らないなら、教えてあげる」
「別に、あなたのお隣さんが誰だろうと興味ないんだけど……」
「発音が違うよ。お隣さんじゃなくて音鳴りさん。音に鳴るって書くんだと思うんだけど、そこまでは私も知らないや」
どっちにしろ興味は無かったのだけど、さすがにすぐに立ち去るのも感じが悪いと思うので、仕方なく聞くことにする
「聞いた事無いわ。それってなんなの?」
「じゃあ、私が知っている事を話すよ。昔、ある街で女の子が死亡しているのが発見されました。死因はイジメだとも言われているし、両親による虐待とも言われてるみたい。他には、轢き逃げにあったとか、通り魔殺人にあったとか。ただ、死亡したのが小学生の女の子ってところだけは確実みたい」
「なにそれ……」
思ったよりも暗そうな話に、私は引いたけれど、彼女は話を続ける。
「それでね、ある日、学校の帰り道、一人の女の子が不思議な音を聞いたらしいの。その子が聞いたのは鍵盤ハーモニカを適当に吹いたような音だったんだって」
「それが音鳴りさん?」
「まあ、そうなんだけど、話にはまだ続きがあるよ。その日は、どっかの誰かが鍵盤ハーモニカの練習でもしているんだろうって気にもしなかったみたいなんだけど、次の日も、その次の日もその音が聞こえてきたらしいの。それも、段々と音が大きくなって、まるで近づいてきている様だったって」
「単純に、誰かが練習してただけなんじゃ?」
「何も無ければそうだったのかもしれないんだけど、その女の子は川で遺体で見つかったんだって。その子は泳げないから、絶対に川でなんて遊ばないはずなのに」
「……単なる事故とかじゃなくて?」
「うん。遺体が見つかる前日に、その子は友達に鍵盤ハーモニカの音がするって話をしてたんだって。するとね、次の日からその友達の子が不思議な音を聞くようになったんだって。ただ、それは鍵盤ハーモニカじゃなくて防犯ブザーの音だったみたい」
「…………」
私にも、話の続きが分かってきた。だけど、私は何を言ったらいいか分からなくて黙っている事しかできなかった
「その子は、防犯ブザーの音が毎日聞こえるのは変だって、中学校のお姉ちゃんに話したらしいの。そしたら、その子には防犯ブザーの音がしなくなった代わりに、そのお姉ちゃんに携帯の着信音みたいな音が聞こえるようになったんだって」
「もしかして……連鎖するの?」
「うん、たぶん。だから……ねぇ! 助けてよ! あなた、霊が見えるんでしょ?!」
その子は、急に泣き顔になって私の肩を強く掴んできた。
「わ、私、そんなの見えないよ」
「嘘よ! 私、知ってるんだよ? バレてないと思ってるかもしれないけど、あなたが何も無い場所を急に避けたり、目で追ったりしてるのを」
私は、気を付けていたつもりだったけど、この子は私が霊を見る事が出来る事に気がついたみたいだ
「け、けど、みえるだけだよ。除霊とか、お祓いとかは無理。普通に、お寺とか行ったら?」
「ダメなのよ! 中学生以下の女の子にしか音鳴りさんの話が出来ないの! 大人に言っても、私がなんて言っているのかよく聞こえないっていうのよ!」
リーン、リーンと、急に鈴虫の鳴き声が聞こえてきた
「ひっ! 目覚ましの音がする! 嫌、やめて!」
彼女は、取り乱して辺りを見回す。そして、一点を見つめて固まった。視線の先には、複数の女の子をぐちゃぐちゃに潰して丸めたようなものがあった。あれが音鳴りさんなの?
「やめて! 来ないで!」
彼女は、立ち上がり、走り出した。そして、それを追う様に音鳴りさんは転がっていく。リーン、リーンとまた鈴虫の鳴く音がした
次の日、気になったので彼女の様子を見に隣のクラスへ行った。彼女は休んでいるらしい
リーン、リーンと鈴虫の鳴き声がする
これを読んだあなた、ごめんなさい。私が助かるためには、この話を誰かに伝える必要があったの
私が殺される前に誰かに移せていればいいんだけれど




