窓が
ある私立高校の教室
1年前に3年生の教室であったが、今年は一年生が使う事になった
その教室は、3年生の男子生徒が同級生と隠れん坊をしていて、カーテンに隠れていた所、後ろに体重をかけたときに窓が外れ、転落死した事故があった
卒業したその教室の3年生が、たびたびその男子生徒が落ちた場所のカーテンが風もないのに揺れていたとか、誰かが隠れているかのように膨らんでいるが、足がなかったとか、逆に足だけ見えたとか、そういう目撃情報が多々あった
その事故を知っている今の2年生と3年生は、その教室を使いたがらなかったので仕方なく1年生の教室として使う事になったのだ
そして、入学式から数か月たっても、事故を知らない1年生が何かを見たという事は無かった
しかしある日の放課後、誰も居ないその教室の前を一人の1年生男子生徒が通りかかった時の事だ
「あれ? なんだろ」
男子生徒は、誰も居ない教室でカーテンが揺れた様な気がした。もし、窓が開いているなら閉めよう、その程度の認識でその教室へ入った
「ダメっ! そこに近づいちゃ!」
たまたまそれを見ていた3年生の女子生徒が、男子生徒の手を掴んで引き留める。女子生徒にしてみたら、男子生徒が何かに誘われるように教室へ入っていくように見えたのだ
「行かないと……」
男子生徒は、手を掴まれたまま進む
「ダメだってば!」
女子生徒は、尚もすがりつく
「うるさい!」
男子生徒は、女子生徒の手を振り払った。女子生徒は倒れ、そして、男子生徒はその勢いのまま窓に体当たりして窓を突き破り、下へと落ちて行った
「ああ……」
女子生徒は、落ちていく男子生徒を呆然と見送る事しかできなかった
女子生徒は、のろのろと立ち上がり、はずれた窓から下を見る
その日、学校はその窓の下を立ち入り禁止にし、万が一何かがあった時の為に落下対策としてネットが張られていた。そのおかげで、男子生徒は無事助かっていた
ただ、窓ガラスが散乱して危ないので、後日、その窓は強化ガラスではめ殺しになった。それ以来、落下事故が起きることは無かった
ただ、カーテンはたまに風もないのに揺れることはあるらしい




