タクシーの相乗りで
その日、急な事故で電車が止まりました
「ちょっと、どうしてこんな日に限って……」
今日は娘の誕生部。ケーキを買って帰ってくる私をいまかいまかと待っているはずだ
「仕方ない、出費はかさむけどタクシーで帰ろうかな」
しかし、考えることはみんな一緒の様で、すでにタクシー待ちに長い列が出来ていた
20分経っても数人しか減らない。時間が経つにつれてだんだんと焦りが出てきた。これは、お金よりも時間を取るべきだ
次のタクシーが近づいてきた。そして、私の前には男性が一人だけ
「あの! タクシーの順番を譲って貰えませんか? お礼ならしますので」
「僕も用事があって譲るわけには行かないかな。ちなみに、どちらの方角ですか?」
聞くと、ちょうど私が向かうケーキ屋の近くを通るみたいなので、相乗りという形で了承してくれた
ちなみに、全額私が払うと言ったけれど
「いくらかかるかわからないし、どうせ僕のは会社の経費だから」
と、そこまでの距離分のお金を払うだけでいいと言ってくれた
「ありがとうございます」
男性は、私に気を使ってくれたのか、助手席に乗り込んだ
そして、私が乗り込むと
「私も乗ります! すぐにいかなければいけないので!」
と、女子高生が無理やり後ろの席――私の横――に乗り込んできた
さすがに強情すぎると思ったけれど、私も人の事を言えるような立場じゃ無い気がして、少し腹が立ったけれど、奥へと詰めた
私の目的地であるケーキ屋の場所を告げる。女子高生はどこへ行くつもりなのだろうか?
「ちなみに、どこまで行くの?」
「ああ、〇〇の会社の方にね」
男性は、自分が聞かれたと思って返事をした。そして、そのまま運転手に「ケーキ屋の次はそこで」と伝えた
運転手は、それを聞くとスッと車を走らせた
女子高生は行き先をいつ告げるのだろうか。まあ、そのうち自分で伝えるだろうと興味を失ってそとの風景を見ていた
そして、そのまま考え事をしていたら
「そろそろつきますよ」
と運転手に言われた。じゃあ、降りる準備――横の女子高生に先に降りてもらわなければ――と思って横を見ると、女子高生は居なかった
「あれ? あの子、どこかで降ろしたんですか? いつの間に?」
考え事をしている間に、降ろしたのかと思ってそう言ったのだけど
「え?」
と、男性に変な顔をされた
「誰の事ですか?」
「私のあとに乗ってきた女子高生ですけど……」
「あなたのあとには誰も乗ってませんよ?」
そう言っているうちに目的地に着いてしまった。もっと話を聞きたかったけれど、時間が無いのも事実なので、私はそのままお金を払って降りた
次の日、電車事故は女子高生の自殺だと分かった。ただ、それが私のあとに乗ってきた女子高生と関係があるかどうかはわからない




