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助けて
夜寝ていると
「たすけて」
そんな小さな声が聞こえた。隣を見ると、1歳になった娘がぐっすりと寝ているだけだ
「気のせいか」
そもそも、娘はまだそんなはっきりと話せる年齢じゃない。時計を見ると、まだ3時だったので寝なおす
「たすけて」
また聞こえた。時計を見ると5時だった。隣を見ると、娘はぐっすりと寝ている
「夢か?」
そう思って寝なおそうと思ったが、寝れない。娘の寝顔でも見るかと思って、じっくりと見ると、娘が何かを握っている
「人形?」
小さな人形を娘が握っていた。間違って口に入れたら大変だと思い、優しく指を広げて人形を取り出す。娘は、人形を取られて一瞬まゆげをへの字に曲げたが、そのまま再びぐっすりと寝た
人形をベビーベットから自分のベッドの上に置く。さて、寝るか。そう思って目をつぶる
「ありがとう」
寝落ちる寸前、そう聞こえた気がした
目が覚めたら、ベッドに置いたはずの人形は無かった
「夢だったのか?」
娘に聞いても、当然返事なんて無かった




