表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは・・・ですが  作者: 斉藤一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

766/854

帰りが遅い

夫は真面目な人だ


お酒もあまり飲まず、ギャンブルもしない。煙草も吸わない。当然、風俗なんか行ったことがない


しかし、ある日を境に家に帰ってくるのが遅い日が増えた


「最近、遅くなる日があるけどどうしたの?」


「ああ。会社の付き合いがな」


「そう。それなら、遅くなる日は連絡してほしいかな。ご飯の用意もあるし」


「わかった」


それから、遅くなる日は連絡をくれるようになった。けれども、なぜ遅くなるのかが分からない


ある時、夫の会社の忘年会があったので迎えに行った時、夫の同僚が一緒に居たので聞いてみた。夫は、酔って車に乗るなり寝てしまっていた


「最近、仕事が忙しいのですか?」


「いや、そんな事無いと思うよ。夫くんもたまに残業するくらいで、いつもどおり帰っているだろ?」


「いえ、残業する日が多くなってきたように思っていたので……」


まさか、夫に限って浮気なんて……そう思ったものの、一度変に考えると、悪循環でどんどん悪い方へと考えてしまう


だから、会社の近くで夫を待ち伏せした。遅くなると連絡が無ければそのまま帰るつもりだった


「今日は遅くなる」


夫からメールが来た。しばらくして、夫が会社の玄関から出てきた


「遅くなるっていったのに……」


私はバレないように夫を尾行する。夫は、尾行されているとはまったく思っていない様で、普通に歩いて行く


しばらくして、一軒のお店に入っていった


「あれ? ここって……」


どうみても、無人にしか見えない。けれども、戸が開いているという事は古いだけでやっているのだろうか?


単なる寄り道なら、それほど気にしなくていいかなと思いつつ、もうしばらく待つ


辺りが暗くなってきたけど、お店に電気が点く様子は無い


さすがに、普通なら絶対に電気をつけるくらい暗くなってきた辺りでお店に入る事にした


そっと戸を開ける。中は真っ暗に近かった。店内を見渡すと、店のソファーに夫が座っている


「こんなところで何をしているの?」


自分の事は棚に上げて夫に尋ねる。夫は、意思を感じない表情でこちらにむき


「べつに」


とだけ答えて、再び誰も居ないソファーの前を見ている


「帰るわよ」


「うるさい!」


腕を引っ張って連れ帰ろうとすると、急に怒鳴って手を振りほどかれた


「もう、知らないわよ!」


腹が立って家に帰った


だが、いつまでたっても夫が帰ってこない


「まさか、腹を立てて今日は帰ってこないつもりなのかしら」


すると、夜中の2時に玄関の開く音がして目を覚ました


「どうしたの、遅かったじゃない」


「ああ、仕事が忙しくてな」


夫は何を言っているのだろう。さっき、誰も居ない店で私とあったのに、そんなウソをつくなんて


「何で忙しかったの?」


「ん? あれ、なんで忙しかったんだっけ」


夫は、何も覚えていなかった。ただ、仕事が忙しかったとだけ感じていたようだ


次の日が休みだったので、夫を連れて昨日居た店まで見に行った


「あれ、閉鎖されてる……」


昨日来たときは開いていたのに、今日は玄関付近には有刺鉄線で完全に入れないように塞がれていた。それも、今日つけたばかりの新品ではなく、さびているので長い事封鎖されている様に感じる


「ここがどうかしたのか? ずいぶん昔に潰れたような店じゃないか」


夫はやはり何も覚えていなかった


気になったので、図書館で新聞を調べると、10年ほど前に会社のストレスでその店で自殺したサラリーマンがいたと載っていた


もしかしたら、そのサラリーマンは夫と同じで、真面目で、酒やギャンブルでストレスを発散できずにストレスを抱え込んだのかもしれない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ