誰?
昔の話をしよう
俺は昔、チャラ男だった。そんで、当時は3人の女性と付き合っていた。いわゆる3股だ
仮に女性を佳子、美香、幸子とする
ある日、道を歩いていたら知らないおっさんが声をかけてきた
「おい、君。まちたまえ」
「何すか?」
「佳子と付き合いたいなら、他の子とは付き合わないでほしい」
その一言で、この人は佳子の父親だと思った。そして、俺が他の子とも遊んでいるのを知っている様子
「は、はい。分かりました!」
「よろしく頼むよ」
それだけ言うと、その人は去っていった
それから十日ほど経って、そんな事を約束したのを忘れて美香とのデートの待ち合わせ場所へ向かっていた
美香はまだついていないみたいだ。なら、携帯でもいじって待とうかと、なにげなく辺りを見回した
すると、見た事のある人が
(やべっ、佳子の父親だ。あー、そういや約束したっけ。見つかるとまずいな)
俺は急遽美香にドタキャンの連絡を入れると、逃げるように帰った
それから、約束を忘れて幸子とデートしようとしたり、美香に会おうとしたり、そのたびに佳子の父親が視界に入るようになった
そして、佳子意外と遊べなくなると、真剣に佳子と付き合うようになった
そして、佳子と結婚したいと思うようになり、佳子の家へ挨拶へ行くことになった
(まあ、向こうの父親は俺の事知ってるんだけどな、母親は会ったことないけど)
そして、居間で待っていると、佳子の両親が現れた
「え?」
しかし、二人とも俺の知らない人だった
「えっと、佳子のお父さんとお母さん?」
「そうよ。お父さん、お母さん、こちらがゆう君だよ」
佳子は両親に紹介しているが、俺の頭の中は「?」でいっぱいだった。だって、佳子の父親だと思っていた人が、全然違う人だったのだから
それでも、挨拶をして一緒に話していると、気が楽になった
「今日は一緒に食事でもどうかね?」
「喜んでご一緒させてください」
居間から移動した時、仏間が目に入った。そして、そこに飾られていたのは、年齢が違うが確かに俺が見た佳子の父親だと思った人だった
「あの写真は?」
「私のおじいちゃん。私、おじいちゃんっこだったの」
それで納得した。佳子の祖父が、遊び歩く俺にくぎを刺しに来たんだろう
「いいじいちゃんだったんだな」
「ええ」
俺には、一瞬しゃしんがにやりと笑った気がした
そして「佳子を頼むぞ」 そう言われた気がした。俺は心の中で
(ええ。当然ですよ)
と返しておいた




