雪山で
「山小屋はどこだ」
我々登山同好会は、初めての雪山登山に苦戦していた
そろそろ、山小屋が見えるはずだ
天候が急に変わり、さっき通った道も、すでに足跡は無い
「仕方がない、ここで何か遮蔽物を作って野宿する」
風よけの木と、雪による壁で、直接の風雪を防ぐ
「隊長!」
若い青年が、彼女の様子がおかしいと訴えてくる
女性の様子を見ると、震えが止まらないようだ。おそらく低体温症だろう
強い風に濡れた体が原因だろう
今動いても、遭難するだけだ
青年は、一人ででも背負って下山すると言っているが、不可能だ
彼女は、青年に大丈夫だからと声をかけ、息を引き取った
青年も泣きつかれて、いつの間にか眠ったようだ
私も意識が飛んでいたのだろうか、目を覚ますと、いつの間にか風雪は止んでいた
すると、ライトのようなものが前方に見えた
誘われるように近づくと、山小屋があった
こんな近くにあったのかと思うと同時に、彼女が死ぬ前にここにこれたならと後悔した
ライトを照らしてくれたお礼を言おうと、山小屋へ入ったが、無人だった
私は迷わないように自分の足跡を辿り、青年を呼んだ
青年は、夢で彼女がこっちだよと手招きしていたそうだ
ただ、その方向は、私がライトを見た方向の様だった
私たちは、なんとか彼女の遺体を山小屋へ運んだ
次の日は、前日が嘘のように晴れ、警察に電話するとヘリコプターで迎えに来てくれた
私たちは、今でも彼女の墓参りを欠かさず行っている




