寝相
会社の先輩から電話が入った
「はい、〇〇株式会社です」
「ああ、その声はお前か。課長は出社しているか?」
「あ、先輩。課長はすでにミーティングに入っていて、いつ終わるか分かりませんよ」
「それじゃあ悪いけど、今日は遅刻するって伝えておいてくれるか? 病院の診察が終わったら、また連絡するから」
「病院って……怪我でもしたんですか?」
「いや、片耳が急に聞こえなくなってしまってな。だから、病院と言っても耳鼻科だ」
「分かりました。しっかりと伝えておきます」
「頼んだぞ」
そう言って電話が切れた。僕はメモを作成し、課長の机に置いておく
診察が終わったのか、先輩から電話があった
「どうでしたか?」
「ははは、特に問題は無かったから今から出社する」
先輩が課長に、何があったか説明しているのを横で聞いていたところによると、先輩は必ず、横を向いて寝ていたらしい。そこに、生来のめんどくさがりがたたって、寝ている間に部屋の埃が片耳にたまってきた。それが鼓膜に張り付いて音が聞こえなくなっていたらしい
「なんだ、それだけか」
心配して損した……そう思って先輩の耳を見ていたら、何か黒い虫みたいなものが耳の穴から顔を出していたように見えた




