検死
ある日、検視をしてほしいと死体が持ち込まれた
見た所、20代の女性に見える。目立った外傷は無く、死因が不明らしい
死体が見つかった場所は、都内のマンションの屋上で、聞き込み調査の結果はこのマンションの住人では無い事が分かっただけだった
近くの防犯カメラを調べたところ、一人でマンションに来ていたことも分かった
身元が分かる持ち物は無く、なぜマンションに来たのかも分からなかった
発見したのは、ご飯を食べようと思って屋上に来た夫婦で、来たときにはすでに倒れていたそうだ
すぐに救急車が呼ばれたが、すでに心肺停止状態だったらしい。持病のあるなしが分からないので、調べてほしいとのことだった
「20代ならそうそう急死するような腫瘍があるとも思えないが……」
頭を開いてみるが、異変は無く。胸の開いて内臓を見ても、特に異常は見つからなかった
血管の詰まりでも無く、窒息死や中毒でもない。本当に、なぜ死んだのか分からない状態だった
傷を縫合し、引き取り手が居なければ火葬される事になるだろう
検視結果になんて書こうか。そう考えていると、死体が起き上がった
「ここは……どこですか?」
「……ここは、検死室だが……」
女性は裸を特にはずかしがるでもなく、淡々としていた
服を持ってこさせて話を聞くと、女性は幽体離脱をしていたという
屋上に出て、青い空を見上げていたら、ふっと何かに引っ張られる感じがして、しばらく付近を飛んでいたが、気が付くと体が無くなっていた
絶望していたが、何かにまた引かれるような感じがして、意識が戻るとここに居たという
女性は自殺を考えていたが、今は生きようと思っていると言う
後に、カウンセリングで女性の精神は男性だと分かった




