改札
あれ、何してたんだっけ
気が付くと、駅のホームに立っていた。辺りは暗いが、ちょうど目の前を電車が通ったので終電ではないようだ
周りを見回すと、人は少ない。そうだ、時計をしてたんだった。なんでこんなにもボーッとしてたんだろう
そういや、のんびり過ぎるこの性格のせいで、会社でもいじめられている。仕事が遅いとか、ぼーっとするなとか、カメとかなんとか
時計を見ると、20時をまわったところだった。って、よく見ると秒針が動いていない。いつの間に電池が切れたのだろうか。これじゃあ結局時間が分からないじゃないか
すいません、今何時ですか?
電車を待っていて暇そうなサラリーマンに声をかける。会社の帰りなのだろうか、疲れた顔をしていて返事をしてくれない。それどころか、思い出したかのように売店へ向かっていく
そんなわざとらしく避けなくてもいいのに
会社での嫌な事を思い出して、尚更気が落ち込む
さあ、帰ろう
こういうときは、さっさと帰るに限る。改札に定期を当てても改札が開かない
あの、開かないんですけど
今にも居眠りしそうな駅員に声をかけるが、気づいていないのかこちらを向かない
仕方なく、駅員に定期を見せて通ろう。そう思って駅員の前に立つ
これ、定期です。通っていいですか
わざとらしく目の前に突き付けてやるが、反応が無い
じゃあ、通りますからね
その瞬間、俺の体を通り抜けて男性が走っていった
そうだ。俺は電車に身を投げたんだった……




