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これは・・・ですが  作者: 斉藤一


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鉄の味

私は、シャワーで顔を洗っている時に不安になる


大学時代、研究室の実験で学校に泊まったことがある


そんなに忙しいというわけではないけど、1時間に1度、データを取らなければならないので帰るに帰れないのだ


さすがに休憩なしと言うわけには行かないので、2人で交代でやっている


そして、その時の私は夜の番だった。夜中の0時から8時までである


そして、朝の5時、ウトウトしていた私は、誤ってビーカーを落としてしまった


「あちゃー、やっちゃった」


腐食性のある液体だったので、すぐに液体のついたズボンを脱ぎ、慌てて雑巾で飛び散った液体をふき取る


誰も居ないからいいものの、パンツ姿で研究室にいると言うのは結構恥ずかしい


何とかふき取り、まだ時間もあると思うので念のためシャワーで洗い流すことにした


学校には、こういう時のためなのか、単純に水泳部のためなのか、シャワー室が備え付けてある


ただ、場所が男子と女子で別れている


男子シャワー室はすぐ近くだけど、女子シャワー室は防犯のためなのか何なのか、プールの近くにあり、ここからは遠い


「どうせ誰も居ないし、なんか皮膚がひりひりしてきた気がするから……いいよね」


誰に言うともなく、男子シャワー室を使う事にする。一応、中を確認して誰も居ない事が分かった。そして、きちんとカーテンで遮られていて、外からは誰が使っているか全くわからないと思う


ただ、私は液体が付いたと思われるズボンと上着はそのまま洗面所に置いて、下着は棚に置いておく


ついでだからと、髪の毛も洗う事にした。夏だし、汗もかいていた


そして、頭を洗っていたら、入り口から誰かが入ってくる足音がした


足音は、洗面所を通り過ぎ、私が使っているシャワー室の前まで来て止まる


(え、まかさ開けられたりしないよね? こんな時間になんで)


パニックになりかけたけど、しばらくしても何も起きない。カーテンが開けられることは無いけれど、話しかけられる事も無い


どうしたのかと思ったけれど、こっちから話しかけて女子だとバレたら襲われるかもしれないという不安があったため、そのままシャワーを流しつつ息を殺す


しばらくして、足音は去っていった。聞き耳を立ててしばらくまったけれど、戻ってくる様子はない


さっさと頭を流して出ようと思い、シャワーを頭からかぶったとき


「ぺっぺっ、何、この味」


口に入ったお湯が、さびた鉄のような味がした。さっきまで何ともなかったのに


水の見た目は変わりなく透明だったけれど、何となく血をイメージしてしまったので急いでシャワー室から出る


「ひっ、」


下着をはいたときに、パンツが濡れていることに気が付いた。しかし、変えも無いので仕方なくこのまま履く。そして、ズボンを見たときに、もう絶対このシャワー室を使わないことを決めた


ズボンに、血のような赤い液体で手形のようなものがついていたのだ


私は、ズボンを掴んで涙目になりつつ、研究室に走って戻った。上だけ着て下はパンツという恥ずかしい姿だったけれど、それどころじゃない


でも、研究室で改めて確認したズボンには、手形が無くなっていた



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