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これは・・・ですが  作者: 斉藤一


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笑い声

今はつぶれた映画館


最後に上映されたのは何だったのか


建物を壊す前の下見に訪れた工事の責任者は、大きなスクリーンを前にタバコを吹かす


「昔はよく通ったもんだがなぁ……」


40代の工事の責任者は、昔はここへ通っていたらしい


それから数十年たち、老朽化のせいなのか時代の流れなのか、それともいまだに昔の映画ばかり流していたのが悪かったのか、こうして壊される事になった


彼は、昔よく座っていたお気に入りの場所へ移動する


そこは真ん中より少し上の段で、身長の低かった彼にとっては丁度いい場所だったのだ


タバコを携帯灰皿に押し込み、さて、仕事をするかと立ち上がろうとしたところ


ワハハハハ


と、誰かが笑った声がした


廊下ででも誰か談笑しているのか、そう思ったけれど入り口は閉まっている


防音性の高い映画館の中だ、どんなに大きな声を出してもここまで響いてくるとは思えない


「まさか、ここに誰かいるのか?」


一列一列、覗いてみるが誰も居ない


ワハハハハ


すると、さっきとは別の所から笑い声がした


慌ててそちらを振り向く


ワハハハハ


すると、また違うところから声がした。そして、そちらを向くと


ワハハハハ


それをあざ笑うかのように笑い声が


キャハハハハ、アハハハハ、ウフフフフ


声がどんどん増える


映画が上映されていれば、マナー違反ではあるが笑い声がするのもうなづけるが、今は映画どころか誰も居ない


周り中から笑い声がして、彼は慌てて入り口を飛び出す


すると、笑い声はピタリを止んだ


「なんだったんだ……」


不気味ではあったが、不思議と嫌な気はしなかった


結局、取り壊される前に別会社が買い取り、改装される事になった


そして、新しい映画館では、新しい映画も上映されるようになり、お客も結構入るようになった


笑う門には福来る、そういう事だったのだろうか

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